6話 学校始動!
ゆらゆら揺れるユーシャの桃色ツーサイドアップの髪を眺めながら登校すること約10分。勇者学校が見えてきた。
「んー! 今日から頑張ろうね、リリー!」
「うん! ユーシャも」
ちょっといい雰囲気になりながら教室へ。あれ? このままいけばユーシャと付き合えそう……いやいや、焦るな私。恋愛に疎い私が焦ったところでいいことはないぞ。
教室につくともうすでにシルディとヒラは着席していた。私の仮組みのパーティ。今日の午後にある実習が楽しみね。
「おはよう! シルディ、ヒラちゃん!」
「おう。おはよ」
「お、おはようございます!」
ダルそうなシルディと、緊張しすぎなヒラ。何か対照的な2人ね。
「朝から座学かぁ……ずっと実習してたいんだけど」
「シルディ、お勉強は大事だよ!」
ドヤ顔で正論を吐くユーシャ。ツーサイドアップから得意げにアホ毛が一本立っている。可愛い……。
「ユーシャは勉強も得意だからなぁ……。ヒラ、リリー、あんたらは?」
「苦手意識はないかな」
「あ、あんまり得意じゃない……です」
「2対2か。ちょうどいいや! テスト前になったら勉強会でもしようぜ?」
「あ、それ楽しそー! やるやる!」
乗っかる気満々のシルディと乗り気なユーシャ。私はどっちでもいいけど……まぁユーシャが参加するなら。
そんな話をしていたら座学の先生が教室に入ってきた。授業開始ということ?
「では座学①歴史の授業を始めます。早速ですが今の救世軍と魔王軍の戦いの歴史から見ていきましょう」
救世軍……人間たちは人間軍のことをそう呼んでいるのね。世界を救う軍隊……かなりの大望を託されているじゃない。
「古くは500年前から戦いが始まり、今代まで続くその戦いは……」
先生の話はもうすでに頭に入っている。自慢じゃないけど魔王の娘として英才教育を受けた私にはこの程度の基礎レベルなら楽勝かな。
ユーシャは……真面目に聞いてメモを取ってる。真面目なのね。
ヒラは……ユーシャと同じく真面目に受けているけどあたふたしているわね。
シルディは……開始5分なのにもう寝たの!? はなっから勉強なんて諦めているのね……。
こんなバラバラなパーティで大丈夫なのかな……。不安になってきた。
午前中の座学を終えてお昼ご飯の時間に。魔界で習っていなかったのは人間の使う魔法学だけだったかな。あれは今後の身の振り方で参考になるものだったわ。
「お昼ご飯一緒に食べよ!」
ユーシャから嬉しいお誘いが。
「えぇ。もちろん。パーティで食べましょ」
「うん! ほらシルディ起きて! ヒラちゃんはもっと近づいて! ほらほら!」
「う〜〜ん……」
「お、お邪魔します……」
なんかユーシャがお母さんみたい。ユーシャのお陰でパーティとして成り立ちそうな雰囲気がすでに出てる……。
もし私、シルディ、ヒラの3人パーティだったら……考えただけでゾッとする。
「あー! リリーのお弁当可愛い!」
「ありがとう。私もこれ、お気に入りよ。ユーシャのも可愛いじゃない。自作?」
「うん! 自信作だよ!」
女の子らしいお弁当。私のは……なんというか気合いの入ったお弁当ね。手間がかかっているのは何となくわかる。ありがとう、アスセナ。
ヒラも似たような可愛らしいお弁当。シルディはまさかの特大おにぎり3つというストロングスタイルで攻めてきた。なんか性格が現れている?
「ほら、いつまで食べてるの! もうすぐ実習が始まるわよ!」
お喋りしながら食べていたらいつのまにか実習の時間に!
「実習室に集合! 遅刻したらグラウンド10周よ!」
「うへぇ……みんな、駆け込むよ!」
「「「おー!」」」
罰ゲームが嫌だという共通認識のお陰で初めてみんなの意思が揃った気がする。さて……実習、要注意だけど楽しみね。みんなどれくらいできるのかしら……。