55話 仲良し作戦②
春の陽気が正門に差し込むお昼。私は1人、みんなを待っていた。
時刻は12:30。約束の時間まで30分もあるけど何でこんなに早くいるかって? もちろんアルチャルが早くきた場合に、ユーシャか私以外の子と待っていたら喧嘩が起こる可能性があるから。それでお出かけで仲良くなろう作戦が失敗したら悔やみきれないものね。
今日着てきたのは白のブラウス。そう、この前みんなで[ブレイブデパート]に行った時に買った服よ。あんまり着る機会がないな〜と思っていたけどようやく出番が来たわね。
しばらく待っていると1番に到着したのはアルチャルだった。良かった〜先に来ておいて。私不在のまま次にシルディが来ていたら終わっていたわね。
「こんにちは。リリー様」
「……様はいいから。こんにちは、アルチャル」
いつのまに様なんて付けるようになったのかしら。私を見ている時に目がハートになっているし。なんだか怖い……。
「おっす〜。お、アタシが3番か」
危なかった〜! 私がいなかったら終わりだったじゃない! シルディがアルチャルと目があって嫌そうな顔をしているし。
「何か?」
「別に」
いやこれ間に立つ役割も軽く地獄ね……。助けてアスセナ……。本当はアスセナも連れて行きたかったけどアルチャルがどんな反応をするか怖かったし、今日は控えてもらうことにした。
次にユーシャとヒラが同時に到着。みんな5分前には集まってくれたわね。
「よし、じゃあ行きましょうか。ユーシャ、案内お願い」
「うん! まっかせて!」
胸を張って案内役を買って出てくれたユーシャ。可愛い……一生ついて行くわ。
っていけないいけない! こんな煩悩を晒している場合じゃなかった! そう、今やらないといけないのは何とかアルチャルとシルディ、それからヒラに仲良くなってもらうこと。今のまま実習が始まったら連携なんて取れるわけがない。ランキング戦優勝パーティと準優勝パーティのエースが組んだ正式パーティがボロボロになるなんて許されないわよ!
どうやって仲良くさせようか考えていたらいつの間にか[ブレイブストリート]に到着していた。結局思いつかなかった……でも遊んでいるうちに自然と仲良く……は無理かしらね?
「じゃあ服を見ていこうか!」
「えぇ。どのお店がいい? できればリーズナブルなところがいいんだけど」
「ならあそこかな〜」
ユーシャは遊び慣れているのね。すぐに私たちを案内してくれるわ。服……そうだ!
「ねぇみんな、せっかくアルチャルがパーティに加わったことだし、アルチャルに服を選んであげましょう?」
「あ、いいね! それ!」
よし……ユーシャがノってくれたらシルディとヒラも断りにくいでしょ。ナイスよ、ユーシャ。
「……んじゃやるか」
「は、はい」
「いや……私は……!」
くっ……アルチャルが乗り気じゃない! ここはゴリ押すしかないわね!
「いいじゃないアルチャル、別に強制的に買わせるわけじゃないし。それに今私たちが来ているのも前にみんなで買った服なのよ。自分だけ無いのは寂しく無い?」
「うっ……」
よく見たら本当にみんな前回買った服を着ていた。みんなセンスはいいはず。ならアルチャルに似合うものを選べば仲良くなれるんじゃない?
「じゃあ……お願いします」
「よし、じゃあみんなでアルチャルに似合う服を探してあげるわよ!」
「「「おー!!!」」」
ここまでは順調ね。あとはみんながアルチャルが気にいる服を選んでくれれば作戦成功は目の前よ!
えっと今のアルチャルの服装は……白Tシャツとジーンズか。美人だからこそ映える服装よね……。一周回って攻めてるわよそれ。
じゃあ何かいい感じに合うものと、もうワンポイント追加しましょう。あれ……なんか私が楽しくなってる。目的見失いそうだけど……まぁいっか!




