5話 優しい世界
「はい、お料理できましたよ、姫様」
「ん。ありがと……ってすご! 全部美味しそうじゃない!」
食卓に並んでいるのはどれもこれも私の好きなご馳走ばっかり。
「えへへ……姫様のためにお料理を振る舞えると思ったら張り切っちゃいました」
「んー! ありがとアスセナ!」
ぎゅっと抱き寄せて頭をヨシヨシしてあげる。このモコモコ具合、たまらなく気持ちいいわぁ〜。
「ひ、姫様!? うへへ……」
アスセナもまんざらではない様子。さてと、せっかく作ってくれた料理が冷めないうちに食べましょうか。
「じゃあアスセナ、いただきます」
「はい! 召し上がれ♡」
まず1番手前に置いてあるオムライスからパクリ。うん! 絶妙な加減でふわとろになった卵がたまらない! それにこれ……ケチャップも自作した!?
「すごい手間をかけてくれたのね……もう一度えいっ!」
「キャ! 姫様ったら……もう」
まったく! 最高の付き人が来たものだわ!
ご飯を食べ終わってお風呂も済ませたらアスセナが真剣な表情でちゃぶ台に座っていた。
「姫様、お話があります」
「ん?。何かしら?」
なんだろ……もしかしてもう裏切ったことがバレた!?
「明日から学校では実習が始まると思います。その場で魔王軍の魔法を使うことはお控えください。もしもの場合は例外ですが、もし魔王軍の魔法を学校で使ってしまったら……」
その先をアスセナは言わない。もし魔王軍の魔法を私が使って、魔王軍の手先とバレたら教師たちが血相を変えて飛び出してくる。そしておそらく私は……。
「わかってるわよ。大丈夫、人間の使う魔法だってたくさん覚えてるしね。新入生の中ではトップなんじゃない? 私」
「そ、それはもちろんですよ! 姫様の右に出るものなどおりません!」
「もう! アスセナったら!」
またまたアスセナに抱きついてなでなでする。
「ひ、姫様〜! 恥ずかしいです!」
「いいじゃない。久しぶりの再会なんだもの」
「うへ……うへへ……」
なんか変な声が出始めた……一応もうやめておこ。
「さて、明日は早いしもう寝ようかな」
布団を敷いて準備完了! さてさて明日はどんなユーシャの顔が見れるかなぁ♡。学校に楽しみができたのはすごくいいことよね〜。
「姫様、おやすみなさい」
「えぇ。おやすみ。アスセナ」
答えるとすぐにアスセナは小さな寝息をたてて眠ってしまった。まったく……私に会うのにどれだけ張り切ってたの? 嬉しいけど。
「姫様ー? 姫様! 朝ですよー」
「……ん」
朝ぁ? ついさっき寝たばっかりのつもりだったのに……。
「今日から授業開始ですよね。はい! お弁当です!」
「えぇ! いいの? ありがとう、アスセナ!」
嬉しいわ……こんなに良くしてもらって。
「いえいえ。ではお帰りをお待ちしていますね。行ってらっしゃいませ♪」
「えぇ。行ってきます」
あんなにいい付き人がいると良い気分で学校に向かえる〜!。普通なら面倒に感じるんだろうけど。そ、れ、に、ユーシャに会う楽しみもあるし♡
「リリー! おっはよー!」
パンッ! と背中を叩かれた! ……と思ったらユーシャじゃない!
「お、おはよう。ユーシャ」
「んー? 朝は苦手? ちょっと元気ないように見えるよ?」
「ユーシャが元気すぎるだけだよ……」
でもそこも尊い♡
「リリーはこの辺に住んでるの?」
「うん。アパートにね。ユーシャも?」
「うん! 学校近くで家を借りてるんだ〜」
そうなんだ……意外なところに共通点があるのね。
「そうだ! どうせ同じパーティになったんだしさ、これから朝一緒に登校しようよ!」
「えっ! い、いいの?」
ユーシャからそんな嬉しい提案をもらえるなんて! 今日私死ぬの!?
「もちろん! リリーが良ければね!」
「じゃ、じゃあ……これからよろしく。ユーシャ」
「うん。今日の授業、楽しみだね」
なんか……学校生活って楽しい!