44話 決勝前
その後……私たちは順調に勝ち進めていった。ベスト8の試合では誰一人としてHPが削られることなく、準決勝ではシルディが少しダメージを負ったものの、危なげなく勝利。そしてついに……決勝の日がやってきた! 相手は予想通り、あのアーチャー率いるパーティ。
「うぅ……緊張します……」
当然決勝は1試合しかないため、午前中は全部座学の時間になる。ヒラはもちろんのこと、ユーシャやシルディからも緊張しているのが伝わってくる。そしてそれはおそらく、私も例外ではない。
それと決勝に進んだからか、クラスメイトたちの反応も変わってきた。今までロクに会話したことが無かったような子たちも「頑張ってね!」と応援してくれるようになった。特にあのアーチャーのパーティに負けた子達からはすごく熱烈に応援してもらった。
流石の私でも今日の座学はあんまり頭に入ってこない。あとで復習しないといけないわね。
「だぁ〜! 緊張とかガラじゃねぇんだけどよぉ!」
お昼ご飯の時間になってシルディが叫んだ。まぁ……たしかにガラではないわね。
「仕方ないわよ。緊張するのは当たり前。むしろ適度な緊張感が1番大事だったりするのよ?」
「適度……適度……」
「ヒラは震えすぎね」
小刻みに振動して箸がプルプルしてるし。大丈夫かしら……。
「私は普段通りだよ!」
……ユーシャはそう言うけど笑顔にいつものような力がこもってない。まぁ普通に緊張してるわよね、これ。
私はできるだけ平常心でいるところをみんなに示さないと。昨日は家でアスセナにいっぱい甘えることができたし、あれで得た元気で何とか乗り切っちゃうわよ!
……と、ご飯を食べている時だった。突然教室がザワザワとし始めた? なんだろ……と振り返ってみると……
「あのアーチャー……!」
私たちと決勝で対戦する金髪ロングの少女が明らかに私たちめがけて教室を横切ってきた。
「な、何かしら……?」
無言で目の前に立たれると怖いんだけど……。
少女は私やヒラ、シルディをチラッと見て目線を外す。その後……ユーシャに熱視線を送った。
「……ほへ?」
自分に視線が送られていると気づいたユーシャが声を漏らす。
「……初めまして。アルチャルといいます。伝説の勇者の娘さんですか?」
「あ、うん。そうだけど……」
「私は小さい頃に伝説の勇者に救われた過去を持ちます。その娘さんが貴女……」
アルチャルは見定めるかのようにユーシャをまじまじと見る。その異様な光景にクラスメイトたちも固まるしかない。
「今までの試合を見てきましたが、セイクリッドを封じられてからは目立った活躍をされていませんよね。……もう少し伝説の勇者の娘さんであることを自覚した方がいいと思います」
「えっ……」
「あの! 用はそれだけなの? どうせ決勝で当たるんだから。帰ってもらえる!?」
ユーシャに対しての許しがたい侮辱。今、私がシルディを手で押さえているけど殴っていてもおかしくなかった言葉。
「……誰の娘であろうとユーシャはユーシャよ。貴女に何かを言われる筋合いはないわ」
「そうですか。貴女が司令塔なのですね。おこがましい……」
それは私がユーシャを差し置いてリーダーをやっていることに対して言っているのかしら?
「テメェ……いい加減に!」
「シルディ、我慢よ。どうせ決勝で当たるんだから」
「……どうやら歓迎されていないようですね。では失礼します」
そう言うとアルチャルは誰の視線を気にすることなく歩いて教室から出て行く。……何だったの?
「ユーシャ、気にすることないわよ。ユーシャは頑張ってくれているわ」
「う、うん……」
いつもの笑顔がない……。ヒラなんて今にも泣きそうな表情で、シルディは怒りで我を忘れている。いい流れだったのに……最悪にかき回してきたわね。それが狙いだったのなら……もう許さないわよ! アルチャル!




