4話 新生活!
仮組みされたパーティが発表されて、勇者学校の初日は幕を閉じた。
さてと……確か私のお付きが来てくれるんだっけ。
「姫様ー!」
あっ!? この声は!
「姫様ーー!!!」
ガバッと思いっきり抱きついてきた。ダッシュからのハグだから圧が……!
「あ、アスセナ! 付き人って貴女なの!?」
そう……このゆるふわ系少女はアスセナ。私の幼少期の友達役だった娘。友達役というのは魔王……つまり父が社交性を身につけさせるために用意した同い年の女の子。まさかここに来て付き人として再会するなんて……。
「久しぶりじゃない! 身長は……あんまり伸びてないし見た目も……そんなに変わってないわね」
「ひ、ひどいですよ姫様! 私だって少しは成長しましたもん!」
無い胸を張るアスセナ。変わったところも成長したところも無いように見えるんだけど。
ただ変わってないのが安心するわね。モコモコした白い髪の毛と羊のようにクルンとした角。見ていると小動物みたいに癒されるのよねぇ〜。
「では早速、姫様の新たな住まいにご案内します!」
「えぇ。よろしく」
普通にアスセナと正門前で話していたけどなんか視線を感じる……
「姫様?」
「姫って何?」
「シッ。そういうプレイじゃない?」
「キャー! 破廉恥! それもあんな小さい子に!」
な、なんかあらぬ誤解を生んでる!? そんな想像する方が破廉恥じゃろがい! ……あ。つい魔王言葉が。ちゃんとナウい女の子になるために言葉遣いに気をつけているのに。声に出してたら危なかった……。
「い、行くわよアスセナ! 小走りでね」
「は、はい? 急がなくても大丈夫ですよ?」
「こっちが恥ずかしくて耐えられないの!」
モコモコした髪は腰まで伸びているから背中を押して小走りになるとどうしても髪に触れることになる。フワフワしてて気持ちいい……ってそんな場合じゃなかった! 早く校門前から離れたい!
「あ、姫様! ここを左です」
「そ、そう?」
アスセナに案内され、着いた場所は……
「ここが姫様の新しいお住まいとなります!」
「こ、これは……!」
木造建築! アパート! 蜘蛛の巣! ……って、
「ボロ屋敷じゃない!」
「仕方ないじゃないですか! 魔族の私たちが部屋を借りるなんて訳あり物件しか借りられませんよ!」
む……確かにそうね。
「でも住めば都ですよ♪ さぁさぁ行きましょー!」
「よくそんな元気に入っていけるわね」
「お部屋はお掃除しておきましたから!」
ガチャっと期待せずに入ってみると、まぁ……お世辞にも綺麗とは言えないけど住めなくもない。かな?
「どうです? 私、姫様の力になりたくて5年も家事の修行してたんですよ!」
「そうなの……? ありがと、嬉しい」
それは素直に嬉しいわ。そんなに私のことを思ってくれるなんて、いい友人を得たわ。なでなでしてあげましょ。
「え、えへへ……照れますなぁ〜」
「そうそう、これから人前では姫様と呼ぶの、やめてもらってもいい? 呼び慣れているかもしれないけど怪しまれるから。ね?」
「は、はい。では人前では何とお呼びすれば?」
「そのままリリーでいいわよ」
そう答えるとアスセナはブンブン首を振って
「そ、そんな恐れ多いことできません! せ、せめてリリー様と」
「様付けしたら余計に怪しまれるでしょうが! ……ちゃん付けでいいわよ」
「は、はい。頑張りましゅ。リリーちゃ……様」
「……できてないわよ」
「はうっ!」
これは課題のようね。
「ま、まぁ要練習ね。お腹が空いたのだけれど……」
「あ、すぐ用意しますね!」
すごい……いつの間にか成長しているのね。テキパキと家事をする姿はまるで一流のメイドそのもの! 小さいのに……頑張ったのね、アスセナ。また後でよしよししてあげましょう。
さて……本日の報告文どうしようかしら。もうユーシャの虜になった私は魔王軍から寝返る気まんまんだし、テキトーでいいわよね。
アスセナが料理をしている間にテキトーな文章を書き上げて終わらせた。