32話 勇気を出して
「ただいま〜」
アスセナの待つ我が家へ帰還。今週はいろいろなことがあって疲れたわね。
「お帰りなさいませ、姫様♡」
満面の笑みでお出迎えしてくれるアスセナ。私の癒しの空間ね。
「ねぇアスセナ、明日学校のパーティのみんながウチに来るんだけど大丈夫?」
早速明日についてアスセナに聞く。
「はい♪ もちろんいいですよ! 何人来られるのですか?」
「3人よ。私の仮組みしたパーティのメンバーなの」
「了解しました! お昼ご飯をお作りしますね♪」
「ありがとう、アスセナ」
一応報告書をパパッと書いておく。あ、書き終わったら隠さないとね。裏切っているとはいえ魔界からのスパイだとバレたらみんなにどう思われるか……。でも友達に隠し事をしたままなのは嫌ね。あの3人もそうだけど、特に……
「じゃあお夕食を作りますね、姫様!」
毎日良くしてもらっている親友のアスセナには……そろそろ打ちあけよう。私がもう、魔界のために頑張るつもりはない。ユーシャと同じ目標、魔界と人間界の和解を目指すんだって言わないと。……幻滅されるかな。ちょっと怖い。でも……ちゃんと言わなきゃダメだ!
「姫様、召し上がれ♪」
笑顔で料理を並べてくれるアスセナ。深呼吸を一回。さぁ……
「ねぇアスセナ、聞いてほしいことがあるの」
「はい。なんですか?」
緊張する……怖い。アスセナに嫌われるのは絶対に嫌だ。でも……このまま私だけ抱え込むのはもっと嫌だ。
「……私ね、魔王様を裏切ろうと思うの。人間たちと一緒に過ごしてきて、人間の良さも知ったわ。人間と、魔族が仲良くできる世界を目指したい。できれば……アスセナも私の隣にいて欲しい。ダメ……かな?」
言えた……。アスセナは真剣な表情になっている。アスセナだって魔界に立場があるはず。そう易々と裏切ることができないのは当然よね。
「……わかりました。姫様が悩んでいらっしゃること、お察しします。私は……姫様の横にいさせてください。ずっと姫様のお側にいたいです。私は姫様が大好きですから」
ニコッと微笑んで、アスセナはそう言ってくれた。
「アスセナ……!」
嬉しい……! アスセナが理解してくれたこと、アスセナがこれからも横にいてくれること、すべてが嬉しいわ!
「これからもよろしくね、アスセナ」
「はい! もちろんです、姫様♪」
裏切ることを伝えたけど……別段何か特別なことをするわけではない。これまで通り学校に通って、テキトーに報告書を書くだけ。ただ確実に変わったことは、この家の中で気が楽になったということよ。この悩んでいた1週間。結構辛かった……一人で抱え込むってやっぱり良くないわね。
リーダーとして、これからパーティメンバーの悩みを聞くことも覚えないと!
ご飯を食べてお風呂に入り、アスセナと一緒に寝床へ。
「ごめんねアスセナ。突然あんなこと言って。びっくりしたでしょう?」
「はい、驚きました。でも……私は変わりません。私は姫様のお側にいられたらそれだけで幸せですから」
「アスセナ……ありがとう」
「でも、1つだけ許せないことがあります!」
「えっ?」
横を向くとアスセナがぷくーっとほっぺを膨らませている。
「ずっとお一人でお抱えになられていたことです! もし次何かに悩んだら私に言ってくださいね」
布団の中で私の手をとって、アスセナは微笑む。何この子……天使なの?
「ありがとうアスセナ。ごめんね、黙っていて。今度からはちゃんと一番にアスセナに伝えるわ。だってアスセナは私の親友だもの」
「はい♪ ……もっと先の関係でも……いえ。何でもありません」
「……?」
何かボソボソ言ってたけどいっか。大事なことはしっかりと言う子だし。
「じゃあ明日よろしくね、アスセナ」
「はい。お友達と会えることを楽しみにしていますね、姫様♪」
こうして私たちの夜は深まっていく……。




