3話 クラス・パーティ・決意
「うわぁ! 人いっぱい!」
ユーシャが歓声をあげる。たしかに体育館前には新入生と思われる人で溢れていた。
「はぐれるなよユーシャ、リリー……ってあれ!?」
シルディが向こうの方で慌てている。私たちを見失ったのね。これでユーシャと2人きりになれたからいっか♡
「あれー? シルディいないね」
「トイレにでも行ったんじゃない? 先に体育館に入っておきましょう?」
「うん、そうだね!」
ツーサイドアップにしたピング髪をピョコっと揺らしながら反応するユーシャ。可愛いかよ……。
体育館に入るともう半分くらいの席は埋まっていた。
「早く席、とっちゃいましょ?」
「うん!」
くっ……ひとつひとつの動作、表情が尊すぎる……!
拝もうとしていたらガンッ! と座席が強く揺れた。
「な、何!?」
「はぁー、はぁー……見つけたぞ……」
振り返るとガッチリと私の席の角を持ったシルディが……。
「あ、シルディ発見!」
「『発見』じゃな……もういいや」
ユーシャの可愛い笑顔を見てシルディが折れる。なんかわかる……怒っていてもこの笑顔を見たら許せる気がする。
≪ただいまより入学式を開催します≫
「あ、始まったね。シッーだよ」
唇の上に一本指を置いて静かにしようと伝える。いちいち動作が可愛いっ!
≪初めまして。私がこの学校の校長。アルティスです。皆様の初心がいつか叶うよう、教師一同協力していくので一緒に頑張っていきましょう≫
ずいぶん若い……というか同い年くらいに見える学園長挨拶が始まった。
初心……ハッ! ユーシャに突然恋に落ちて忘れていたけどそういえば工作任務だったわね。うっかり学園生活を楽しむところだったわ……。
そんなことを考えていたらすぐに入学式が終わり、それぞれのクラス分けが発表された。1〜4クラスまでの4クラス制。説明によると完全ランダムに振り分けられているみたい。
「あー! シルディともリリーとも一緒だぁ〜! やったね♪」
「本当だ! よろしくな、2人とも!」
「よ、よろしく……」
私たちのクラスは1組。クラス順に移動するため1番最初に移動することになった。
「おお! いい教室!」
さすが勇者パーティの卵を育成する機関なだけあって最先端の技術が使われているっぽいわね。人間の技術にあまり詳しくはないけど間違いなく魔界のモノより先に進んでいる……。これも報告した方がいいのかしら。
「ほら、席に着きなさい。遊びじゃないのよ」
メガネをかけたお姉さん……? 先生かしら。
もう席には名前が書いてあった。自分の名前を探してぞろぞろ着席する
「あ! リリー後ろだぁ♪」
「ユーシャが前で良かった〜」
ふふん♪ この可愛い後ろ姿を眺め放題だなんて、いくら払えば買えるのかしら。
「……り、リリーがアタシの横か」
シルディが右隣で呟く。
「不服だった?」
「い、いや! そんなことはない!」
……? 何なのかしらこの子は。
さてと、今日のうちに報告することはとりあえず施設のことだけかしら? これ以上動きがあるとは思えないし。入学式も終わったし、もう今日は解散でしょ?
「あ、そうそう。今この4人席で固まっているのが仮組みしたパーティになるから。よろしくね」
「「「えっー!!!」」」
生徒全員が驚きの声をあげる。流石に私も驚いた……。こんな簡単にパーティって組むものなの?
「大丈夫大丈夫。1学期の実習で使うだけの仮のパーティだからさ。まぁ例年そのままのパーティで組むところもあるけどね」
と、いうことは私の仮のパーティは……
「私と、ユーシャと、シルディと……」
ユーシャの隣に座る栗色ボブの少女に3人の目線がいく。
「え、えっと……わ、私! ヒラって言います! よろしくお願いしましゅ!」
盛大に噛んだわね……。ヒラの身長はこのパーティの中で圧倒的に小さい。頼りないけど大丈夫かしら。
「ヒラちゃんだね! これからよろしく!」
ユーシャがヒラの手を握って顔を近づける。するとみるみるヒラの顔が真っ赤に染まっていった。
「よ、よろしく……」
ただでさえ小さいヒラがさらにしぼんでいく。この光景には鼻血が止まらない……何この空間! 尊すぎる!
決めたわ……私、魔王軍辞める! この百合天国を楽しんでやるわ!
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