22話 リリーリーダー①
「リリーリーダー、おっはよー!」
「リリーリーダー」という言いにくいワードが気に入ったのか、ニッコニコでその名で呼んでくる。ユーシャ。
「何それ。気に入ったの?」
「うん! なんか口が楽しい!」
「それは良かった。でも次言ったら絶交ね」
「うっ!」
まぁ……するわけないけど。ちょっとからかいたくもなる可愛さだものね。仕方ないわ。
いつも通りなんでもない会話をしながら学校へ。今日は外でのパーティ実習。確かこの勇者学校は敷地の半分以上が運動場……という名の下級魔物の園。生徒を育てるために危険度の低い魔物をうじゃうじゃ飼っているんだとか。
「今日からの私たちは一味違うもんね! なんたってリリーがリーダーなんだもん!」
「すごい全幅の信頼を寄せてくれるのね」
「もっちろん! リリーは頼れるリーダーだよ♪」
……これを本気の笑顔で言ってくるからズルいわ。なんだかわからないけどユーシャの頭をなでなでしておきましょう。
「え、えっ!? どしたの!?」
「なんでもなーい」
ふぅ。癒しの登校タイムは終わりね。ここからは学校、頑張らないと!
しばらくユーシャと2人でいたらいつも通りシルディとヒラが遅れて登校してきた。
「おはようシルディ! ヒラちゃん!」
「おう。おはよ」
「お、おはよう!」
「おはよう2人とも。シルディ、私がリーダーになったからには座学もちゃんと受けてもらうからね?」
「えぇ……まじかよ」
マジよ! 大マジよ! ちゃんと座学の方でパーティとしての動き方を頭に入れてから実習に臨んでもらわないと昨日みたいに盾役なのに真っ先に特攻するじゃない!
まぁ流石にそこまで強く言ったらシルディに悪いから、やんわりと伝えないと……。
「ちゃんと座学で頭に入れておかないと動けなくなるわよ?」
「頭に入れるタイプじゃないんだが……」
「ぶつぶつ言わない! ノート広げて!」
「ノートなんて持ってない……」
「何でよ!?」
私とシルディのやりとりを見て、ユーシャとヒラがクスクス笑っている。
「……何?」
「いや、悪い意味じゃないんだよ? ただ……」
「嬉しいの! ちゃんとリリーがリーダーしてくれて♪」
「み、みんなが私にって言ったことじゃない!」
でも……そう言ってくれるってことはリーダーとして悪い行動じゃない……ってことかな? そうだといいんだけど。
「と、とにかく! シルディは座学中に寝るの禁止! ノートも今日は私のルーズリーフを貸してあげるからとって!」
「うへぇ……見るだけで頭痛くなるぜ」
本当に筋金入りの勉強嫌いね……。これは早急に何とかしないといけないわ。
「はーい、座学の時間ですよ〜」
ついに座学の時間に。さぁシルディ……って!
「スゥ……」
(寝るなぁ!)
小声でシルディを叩き起こす。本格的に始まってすらいないのに一瞬で寝るなんて……。
そこから私の地獄は始まった。15秒に1回うたた寝をするシルディをあの手この手で起こし続ける。気が狂いそう……。
休み時間になるとすぐに机に伏して寝るシルディ。何なの? もう……。
今日のところは諦めてお昼ご飯の時間に真相を突き止めることに。
「何でそんなに眠くなるの? ちゃんと夜寝てる?」
「寝てないぜ。ゲームしてっからな」
「シルディはゲーマーなんだよ。なんだっけ……勇者ストーリーズだっけ?」
「おう! 全クリ後40周目だ!」
「……寝なさい」
「へ?」
「夜! 寝な! さい!!!」
「ひいっ!?」
ヒラが悲鳴をあげるほど怒気を強めて言う。ゲームしてて授業で寝る? そんなこと許せるかぁ!
「り、リリー! 顔怖いよ……」
「い! いいだろ別に! 夜くらい好きに過ごしても!」
「良くないわよ! それでみんなに迷惑かかる結果になるかもしれないじゃない!」
「何を!?」
「何よ!?」
お互い一歩も譲らない。譲れるわけないわ、こんなこと。だって私……リーダーなんだから。




