20話 ファミレストーク
ハンバーグを一口食べ、シルディが口を開く
「……どうだったよ？」
「強かったよね！ 私なんて囲まれて何もできなかったもん！」
「私なんて一歩も動けなかったし……」
「私は……まんまと罠にはまったわ」
みんな自分を責める発言をする。でも後ろから見ていた限り、誰かが悪いのではなく全員悪かった……と思う。
「なーんか凄かったよねぇ〜。こう……ババっと動いてシャキシャキーン！ と勝つみたいな？」
……よくわからない言葉なのに理解できた不思議。何でだろ。
「アタシらに必要なものって何なんだろうな」
最後にアシスタントパーティの人に言われたこと。私たちに必要なものを探すこと。それって……何？
「連携……は深めるものよね。これから深めればいいとして……」
「仲良しさじゃない？ もっと仲良くなる！」
「私がちゃんと動けていたら……」
なんか意見がバラバラね。というかみんな好き放題自分の意見を言うだけでまとまりがないわ……。
「もう……一回落ち着きましょ。まず整理するとシルディは盾役なのに突っ込んだ、ヒラは動けなくなった、ユーシャは相手のフォーメーションに突っ込んだ、私は相手を見れていなかった。こうよね？」
「お、おう……」
「う、うん……」
「んー……ん？」
シルディも、ヒラも、ユーシャもみんな固まって私の方を見る。
「え……な、なに？」
何かマズイことでも言ったかしら……でもみんな自分で言ってたことだし……。
「ねぇねぇシルディ、ヒラちゃん。もしかしたらさ、今のじゃない？」
「あぁ……アタシもそんな気がした！」
「そ、そうだよね？ 実は私も……」
何か3人の中では納得した様子。えっ、なになに！？ 不安なんだけど……。
「え……ちょっと何よ？ 気になるじゃない」
問いただそうとしたらユーシャがゴホンとわざとらしく咳をする。
「えっーとね、たぶん私たちに足りなかったもの、必要なものって……司令塔とかリーダーだと思うの」
「え？ まぁ……確かに」
今まで誰か明確なリーダーを設定していたわけじゃない。ユーシャが中心になりがちだけど、司令塔タイプかというとちょっと……。
「でね、そのリーダーって……リリーが向いてると思うの！」
「ふぅん。……へ？」
えええっ！？
「わ、私！？ 何で？」
「よくよく思い返してみるとアタシが突っ込んだ後にユーシャに指示出してたし、陣形の組み方だってリリー主導だっただろ？ 向いてるって」
「そうそう♪ 後ろの方にいると指示も出しやすいでしょ？」
「それに私と違って視野も広いし……ずっとみんなのこと、目で追えてたよね？」
「まぁ……一応は追えてたけど」
確かに、自分でも気がつかなかったけどシルディが突っ込んだ時もユーシャが囲まれた時も、どちらもパーティ内で一番に状況を把握していたかも。今思えばだけど。
「私たちって仲はいいけどバラバラだからさ、司令塔になってまとめあげてよ、リリー！」
ユーシャにそう頼まれる。シルディもヒラも、言葉にはしないけど頼みたいという様子だ……。
「でも……私なんかで司令塔が務まるかどうか……」
「大丈夫だって！ リリーはみんなのこと見れてるし、指示も出せるでしょ？ 私、リリーの言うことなら信じて従うから！」
「ユーシャ……！」
そう言われると、悪い気はしないわね……。よし！
「うん、わかった。私、司令塔役になる」
「やったー！ これからリリーについて行くからね♪」
「よろしくな、リーダー」
「よ、よろしくお願いします……」
「ただし！ 私がリーダーになったんだからちゃんとしてもらうわよ？ 特にシルディ！ 座学で寝ない！」
「うっ……！ それとこれとは別だろ！？」
みんなでワイワイはしゃぐ。実習からまだ2時間くらいしか経っていないけど、きっとあの時の私たちより強くなった。そんな気がする。
