2話 見失った目的
「えっと……大丈夫ですか?」
ピンク色の頭をした少女に安否を確認されていることにようやく気がつく。
「だ、大丈夫よ! 心配しないで!」
「よかったぁ〜!」
その少女が微笑んだ瞬間、ブワッと光が世界を包み込んだ気がした。
キュン……♡
ま、まだこの気持ちが……! 間違いない……もう否定のしようがない! これは……恋だわ!
「じゃあ私はこれで……」
「待って!」
正門へ進もうとする少女の腕を掴んで引き留める。
「な、なんですか?」
「えっと……私、かなーり田舎の方から来てこの学校のことも正直詳しくないの。だから色々教えてくれる? 私はリリー。貴女は?」
「私はユーシャ。勇者候補の、ユーシャです。リリーさんがお困りなら助けますよ!」
ガッツポーズでやる気を見せるユーシャ。可愛すぎない……? 鼻血が出るかと思った!
「リリーでいいわよ。あとタメ口でね。ユーシャ」
「本当? じゃあ呼び捨てにするね? リリー♪」
「うっ!」
「ど、どうしたの!?」
「な、なんでもないわ……気にしないで」
流石に呼び捨て+笑顔は反則よ……心臓に悪いわ。
「えっと……赤いリボンだから同じ学年だよね? じゃあ入学式に行こうか」
「えぇ。行きましょう!」
なんとかユーシャと関係を持つことに成功したわ。よしよし、これでいい感じの雰囲気になれば……ってあれ? 何か私、目的を見失っているような……。ま、そんなこといっか!
「リリーはどうして勇者学校に通うことにしたの?」
正門から校舎への移動中、ユーシャに問われた。
「私は……」
しまった。こう聞かれた時の理由を考えておくのを忘れてたわ。そうね……即興で何か作らないと!
「私は、今の魔王軍の侵攻を止めたいからよ」
まぁ……無難だけどいい理由付けにはなるんじゃない? 即興にしては合格ラインでしょ。きっと。
「そういうユーシャは? なんで勇者になりたいの?」
「……私ね、お母さんが魔王に殺されちゃったんだ」
「……そう。ゴメンね。辛いことを思い出させちゃって」
なるほどね、つまりユーシャは魔王に、つまり私の父に復讐したいから勇者を目指すということね。
「ううん。いいの。でも私は、魔王を殺したいとは思わない」
「えっ……」
「だって、私が魔王を殺しちゃったら、魔王の家族が私を殺しにくるでしょ? そしたらどんどん戦いが広がっていっちゃう」
「じゃあ……どうして勇者に?」
「まず魔王には謝ってもらう! それは絶対!」
フンス! という感じで腕を組みながらそういうユーシャ。
「その後は……和解かな。人間と悪魔、両方が仲良く暮らせる世界を作りたいの」
この娘……いい子すぎない!? 惚れた! 完全に惚れたわ!
「わ、私、応援する!」
「えっ!?」
「ユーシャのその目標、私に応援させて! 私も目指したい! 人間と悪魔の共存できる社会を!」
その言葉に少し驚いた顔をするユーシャ。そのあとちょっと目線をそらして頬を赤く染める。
「……うん。ありがとう。リリー。一緒にこれから頑張っていこうね♪」
「えぇ。もちろん!」
ふふん♪ 心配していたけど楽しい学園生活が始まりそうじゃない♪
「あっ! おーーい! ユーシャ!」
「あっ! シルディー!」
「……知り合い?」
「うん! シルディ。私の友達なんだ!」
短い銀髪……左腕には小型の盾? 盾役か!
「おはようユーシャ。で、誰だ? この黒いの」
「黒いのって、失礼だよ、シルディ! この子はリリー。田舎の方から来たんだって」
「へぇ……」
ジロジロと私の方を見てくる。腰まで伸びた黒髪や、赤い髪飾りまで舐め回すように。
「ま、まぁあんまりユーシャの邪魔をするなよ? だってこの子は……」
≪全生徒にアナウンスです。入学式の開式10分前です。至急、体育館に集まってください。繰り返します……≫
「っとヤバイな。ユーシャ、それから……リリー! 行くぞ!」
「え、ええ」
「うん! レッツゴー!」
ここから私たちの学園生活が始まるのね。それにしても、何か大事なことを忘れているような……そうでもないような……?




