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171話 進化

「待ちやがるです!」


 魔界へ飛び立とうする私たちを1人の声が静止させた。言葉遣いから誰かを確認するまでもない。そう、イビルちゃんね。


「来たのね……どうするつもり?」


「私は魔王の分身体……その務めを、まっとうするです」


 そう言ってイビルちゃんは臨戦態勢になる。このままじゃ街に被害が出る。


「とりあえずグラウンドに移動しましょう。話はそれからよ」


 昨日卒業した校門を再び通過し、私たちはグラウンドに並び立った。イビルちゃんは魔王の分身体としての務めをまっとうすると言った。つまり、私たちを足止めするということ。


「リリー、どうする?」


 ユーシャが不安そうに私に尋ねてくる。その腕は私の腕に絡められた。自分で言うのもアレだし、こんな状況で言うのもアレだけど、私たちは結構なバカップルやらせてもらっている。


「むしろ都合がいいわ。私はもう魔界の魔法を使わない理由は無くなったし、全力の私とみんなで連携する時間が生まれたとポジティブに考えましょう」


「本気のイビルさんは強いですか?」


 ヒラが心配そうに聞いてくる。それが恐怖から来るものなのか、それとも全力でやっても大丈夫なのか不安という意味なのか、どちらでしょうね。


「さぁ。でも魔王の分身体だもの。油断は禁物よ」


「行きやがります!」


 イビルちゃんは私たちのフォーメーションが整わないうちに突撃してきた。


「みんな、フォーメーション2番。焦る必要はないわよ」


「『ディアブロ・プーニョ』」


 黒いオーラを纏った拳。かなりの威力が内包されているわね。でも……


「『スーパーブースト』」


「いくぞユーシャ!」

「オッケーだよ、シルディ!」


「「『セイクリッド・ハイパワーシールド』」」


 ヒラがユーシャとシルディを同時に強化して、2人で合体技を発動した。この壁を破れた者はいまだにいない。さも当然のように、イビルちゃんの拳も受け止めてみせた。


「アルチャル!」


「はい。『インフェルノ・スターダスト・シューティング』」


 燃え盛る星屑の矢。それらが天空に構える魔法陣から一挙に押し寄せてくる。当然、注意はその矢たちに向かうでしょうけど、本命は私。この大技すら囮に使う、贅沢な作戦なのよ。


「融合魔法『イフリート・ヴォルカニック』」


 炎の魔人を呼び出し攻撃する、人間界の『インフェルノ』と魔界の『エクスプロージョン』を融合させた魔法。その一撃は、山すら爆散させる!


「いけぇ!」


「ぐ……あぁぁぁぁぁ」


 イビルちゃんは業火に包まれた。もちろん殺す気なんてないからサッと火は消してあげる。


「悪いけど私たちの勝ちね。自分で言うのも何だけど……私たちは強いわよ」


 そう言うとイビルちゃんは天を仰ぎながら笑った。


「ふん……行ってコテンパンにされるがいいでいやがりますよ。魔王様は強い。暴力的なまでに。でも……もし人間と魔族が一緒にいられるのなら……楽しそうでいやがりますね」


 そう言ってイビルちゃんは意識を失った。ちょっとやりすぎたかな? と思わなくもないけど、仕方ないわね。


「いるんでしょうアルティス学園長。この子をお願いします」


「はーい。お任せください」


 ひょっこりとアルティス学園長が当然のように出てきた。やめてほしいわね、盗み見するのは。


「それでは皆さん、お気をつけて。……人類は皆さんにかかっています。どうか素敵な天国のような世界を作り上げてくださいね」


「はい……行ってきます!」


 そして視線をアスセナに移す。この作戦にはついていけないからと、アスセナは自ら同行を辞退した。


「行ってくるわね」


「はい。またお会いしましょう、姫様」


 今度こそ、私たちは出発した。さぁ……待ってなさい魔王!

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