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145話 夏休み③

「……同じ部屋でいやがりますね」


 私の部屋に入ってきたイビルちゃんは開口一番にそう言った。


「それはそうでしょう。同じアパートなんだし」


 そう私が言うとふむ……と難しそうな顔をするイビルちゃん。言葉遣いといい、不思議な子ね……悪い子ではないと思うんだけど。

 イビルちゃんから貰ったタッパーの中には肉じゃがが入っていた。夜ご飯はこれとお昼に炊いておいたご飯で良いわよね? これ以上下手に私が関わると親睦を深めるための食事会が台無しになりそうだし。

 肉じゃがを温め、ご飯を茶碗によそったら完成! ……私、ご飯炊いただけだ……。


「ごめんなさいね、私料理苦手だから、頂いた肉じゃがとご飯だけで……」


「気にしやがることはないでいやがります」


「そ、そう」


 言葉のニュアンスを読み取るのに数秒かかるわね……どっちの意味か、わからなくなるわ。、


「じゃあいただきます」


「いただきやがります」


 一口で分かった。この子、料理得意なのね。シチューもそうだけど、味付けが絶妙なのよ。これはアスセナといい勝負かもしれないわ……。


「リリーさん、学校はどうでいやがりますか?」


「学校は……楽しいわよ。あれ? 学生って言ったかしら。あと名前も……」


「把握しているです」


「そ、そう……」


 え、何それ。怖いんだけど。

 でも悪い子じゃないわよねフィルターがあるからまだなんとか大丈夫。イビルちゃんはいい子だわ。


「楽しい楽しくないというより、結果は得られていやがるのです?」


「結果は……最近は微妙ね。改善点が見つかるばかりよ」


「そうでいやがりますか。やはり私がここに来たのは間違いなかったようでいやがりますね」


 イビルちゃんがここに来た理由? ……話せば話すほどわからないわね、この子。謎が出てきたらそれを解決するための謎がまた一個出てくる感じ。


 ご飯を食べ終わって片付けを始める。親睦を深めるつもりだったけど、果たして深まったのかは謎ね。手応えはないわ。


「せっかくなのでここで泊まっていいでいやがりますか?」


「え!? ま、まぁいいけど」


 びっくりした……いきなりというか、こんな出会ってすぐにお泊まり会だなんて。ユーシャたちともまだしたことないのに。特別実習除く。


「それなら色々持ってくるです。少々お待ちを」


「は、はぁい……」


 でもよかったかな。1人で寝るのは心細いって昨日わかったから、今日は少なくとも心細くはないわね。

 数分後、布団と着替えを持ったイビルちゃんが私の部屋へとやってきた。小さい体で頑張って運ぶ姿は可愛いけど……相変わらず目に生気が宿っていないのが怖い。


「お隣、失礼しやがります」


「え、えぇ」


 それはいいけどお風呂とかどうするんだろう。まさか一緒に入るだなんて言わないわよね?


「さて、お風呂に入りやがりましょう」


 言ったぁ!? なんでこんなにズケズケとパーソナルスペースに入ってこれるの?


「さ、流石に一緒にお風呂はちょっと……」


「裸の付き合いという言葉がありやがります。ここでお風呂に入るのは合理的と言えると考えやがります」


 うっ……まぁそれはそうかもしれない。


「わ、わかったわ。入りましょう」


 根気に負けて一緒に入ることに。緊張して何が何だか分からなかったけど、一つ分かったのはイビルちゃんの方が胸が大きいこと。くっ……!

 歯を磨いて、私も布団を敷いたらやることはもうない。


「では寝やがります?」


「そうね。おやすみ」


 何が何だかという感じで親睦会は終わった。ぐいぐい来る不思議な子……いったいどこから来たのかしら。

 寝ようとしたところで隣からゴソゴソと聞こえてきた。トイレかしら?

 そう思っていたらガバッと私に乗りかかってきた。


「え、なに!?」


 焦ってこれくらいのことしか言えなかった。


「もっとリリーさんのこと、知りたいでいやがります……」


 私の手首を布団に押しつけて動けなくしてくるイビルちゃん。これ……夜這いってやつだ!

完結に向け、急加速させました。あと少しのお付き合いですが、よろしくお願いします。

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