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144話 夏休み②

 明日以降のことは忘れて、とりあえず寝ることにした。お風呂に入って歯を磨いて、布団を敷いたら準備完了。あとは寝るだけ……なんだけど、アスセナがいなくて静かな部屋だと……なんか怖くなってくる。

 時折となりから聞こえるくるコンコンッという音が心霊現象にも感じられ、恐怖心を煽ってくる。こんな時にアスセナがいれば良かったんだけど……1人だと心細い。


「イビルちゃんよね……隣からの音は」


 いったいこんな夜に何をしているのだろうと気にはなる。でも、たぶん引っ越しの荷解きが大変なんだろうな〜って自分を納得させる。そうじゃないと安眠できそうにないもの。

 なんとか気合いで目を瞑り、そのまま眠りに落ちていった………………。




 相変わらずミーンミーンとセミが鳴く朝。私は目を覚まして台所に立っていた。

 冷蔵庫から取り出した卵を持って、どうしたものかと考える。パンはアスセナが調理のいらないものを置いていってくれたからいいけど、おかずは自分でやらないといけない。私でもできそうなのはスクランブルエッグ? ぐちゃぐちゃになっても許されそうだし。


 メニューが決まったらとりあえず卵を熱したフライパンにイン! そのまま箸で思いっきり混ぜる。


「……あら?」


 もっと簡単にできるものだと思ったけど、なぜか出来上がったのはぷすぷすと音を立てる穴あきのスクランブルエッグ。できたはできたけど……不味そう。


「いや、見た目はあれでも味は良いかもしれない! いただきます!」


 パクッとぽそぽそのスクランブルエッグを口に運ぶ。このパサパサとした感じ。口の中の水分を奪われていく感覚。うん、不味い!


「……はぁ、虚しい」


 こんなのを明日も継続しないといけないだなんて……アスセナ、早く帰ってきて……。

 そんな願いが通じるわけもなく、時は残酷に進みお昼ご飯を考えないといけない時間帯になった。

 そんな時ピンポーンとインターホンが鳴る。


「はーい」


 ガチャっとドアを開けると生気のない目をした少女、イビルちゃんが立っていた。……タッパーを両手に持って。


「えっーと、どうしたのかしら?」


「こちら、おすそ分けでいやがります。どうぞお食べやがりください」


「えっ本当!? ありがとー!」


 イビルちゃんの手を取って感謝の意を伝える。お昼ご飯に困っていた私にとっては女神みたいだわ……言葉遣いと表情が独特だけど。


「こ、これくらいどうってことはねぇです。そ、それじゃあ失礼するです」


 イビルちゃんはタッパーを渡して足早に隣の部屋へと入っていった。

 私はそれを笑顔で見送り、部屋に戻ってタッパーを開ける。


「あ、シチューだわ!」


 となるとお昼はシチューオンライスになるかしら? 食べたことないけど、美味しいのかしら。

 早速お米を洗って炊飯器に入れる。お米が流しに持っていかれそうになって焦ったけどなんとかなったわ。

 炊き上がったらシチューを温めてご飯にかければシチューオンライスの完成よ!


「うん、良い匂いじゃない!」


 温めるくらいなら私でもできるわね。さて一口……うん、美味しい! イビルちゃん料理得意なのね。

 お昼はこれで乗り越えられた……けど夜はどうしよう。そう思った数時間後、またピンポーンとインターホンが鳴った。


「はーい……あれ?」


 立っていたのはまたタッパーを持ったイビルちゃん。またおすそ分け?


「これ、夜ご飯にお食べやがりください」


「あ、ありがとう。助かるわ」


 まさか毎食届けてくれるの? ま、まぁそんなわけないわよね。


「そうだ、せっかくだから私の部屋でご飯、食べていかない?」


「いいのでいやがりますか?」


「えぇ。おすそ分けしてくれたんだもの、お隣さんとしてもっと親睦を深めましょう?」


「それなら……お邪魔しやがります」


 そうして、イビルちゃんは私たちの部屋へと入ってきた。

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