13話 週末はお出かけ①
昨日は帰ってから泥のように眠った私。理由はもちろん、今日の予定を万全の状態で迎えるため。アスセナには無理させちゃったけど、お弁当を作ってくれた。ありがとう、アスセナ。
「……みんな遅いわね」
もう約束の10時になった。それなのに誰1人正門前に集まってこない。シルディはなんとなく遅刻のイメージがあるからいいとして……ユーシャは寝坊? ヒラは時間ぴったりに来そうなのに……って思ってたらちょうど来たわね。
「ご、ごめんなさ〜〜い!!」
ヒラが大慌てでダッシュしてくる。フラフラしているから見ていると危なっかしいったらありゃしないわ。
「そ、そんなに焦らなくていいのよ。二番目だし」
「ほへ? って本当だ……ユーシャさんとシルディさんがまだ来てないんですね」
確認もせず走ってきたのね……。真面目というか堅物というか……。
ちょっと待っていたらユーシャが歩いてきた。
「おっはよー! いやぁ……くる途中でお婆ちゃんが困ってたから助けてきたら遅れちゃった〜」
なんだか嘘くさいけどユーシャのことだから本当なのでしょうね。もし困っているお婆ちゃんを見つけたらすぐに手を貸しに行きそうだもの。
「それはいいけど……シルディは? もう15分も経つわよ?」
「し、心配です……」
「んー、シルディの家行く? きっと寝てるんじゃないかなぁ〜」
そんなバカな……と言おうと思ったけどシルディならあり得なくもないと思っちゃった。なんか寝てて「おー、すまんすまん」って言うところが想像できるし。
「シルディの家はここから近いの?」
「うん! 走れば5分だよ!」
「あ、歩きがいいなぁ……」
ヒラの意見を汲み取って歩いていくことに。まぁそんなに急ぎってわけでもないし、いいわよね。
十数分歩いたところでユーシャの足が止まる。見るからに普通の一軒家。そういえば今さらだけどよく住宅街のど真ん中に勇者学校を建てたわよね……。もっと端の方に建てたりしない? 普通。
「シルディー! あーそーぼー!」
「ちょ、ユーシャ! なんかそれ子どもっぽいから!」
「……ほへ?」
何か問題でも? みたいな感じでポカーンとしているユーシャ。もうこの子は天然なんだからもう!
ユーシャが声をかけてから数十秒してシルディの家からドタドタという音が聞こえてきた。まさか……私の読みが当たったかな?
「おー、悪い悪い。寝坊したわ」
……ほら。なんか予想できたよねこれ。
「もー、ちゃんと目覚ましかけなきゃダメだよシルディ!」
「あはは……休みだと思うとつい……」
「で、でも良かった。何か事故か事件に巻き込まれてなくて……」
「ヒラはちょっと心配性すぎるでしょ……」
まだ出会って4日なのに……もうこんなに仲良くなってる。学校ってすごい!
「じゃあ行こっか!」
「そういえば行き先はずっと内緒って言われてたけど……結局どこなの?」
「ふふーん、内緒!」
えぇ……まだ教えてくれないの? 楽しみ半分、ユーシャの連れて行くところだから不安も半分あるんだけど。
「大丈夫だよ! すっごく楽しいところだから!」
楽しいところ……魔界で楽しいところといわれているのは「地獄めぐり」よね。悪趣味で何が楽しいのかさっぱりわからないけど。……私って元から人間よりの感性を持ってるのかも。今更ながらに新発見?
ユーシャに黙ってついて行くと繁華街のようなところに出てきた。
「目的地はここ![ブレイブデパート]でーす♪」
「ブレイブ……」
「デパート?」
私とヒラの声が重なる。シルディは近所住みだから「あぁ、ここか……」みたいな雰囲気を出している。
「ここで可愛い服とか、勇者に必要なもの……例えば剣とかが買えるんだよ!」
何そのごったがえした買物施設は! でも良かった……思ったより楽しそう!




