127話 期末ランキング戦
あと3日で夏休みを迎えると、学生たちが浮き足立っているのを肌で感じる、水曜日。
私たちは仮想空間視聴室に移動して、ランキング戦の始まりを待っていた。
「き、緊張してきました……」
ヒラは見た感じでわかる通り緊張している。でも誰でも緊張していると思うのよね。
「私たちは最後のブロックだから大丈夫よ。落ち着く時間はあるわ」
ただ最後というのもそれはそれで緊張するもの。12ブロックあるから、11試合も見ないといけない。
「それではこれよりランキング戦を始めます。午前は8ブロック行います。しっかり見ておくと、後の戦闘で有利ですよ」
先生が説明に来てくれた。そしてモニターのスイッチを入れる。
モニターに映ったのは街中の映像。前回と景色があまりにも違う。前回はただただ真っ白な空間が広がっていたのに。
「今回はフィールドは"市街地"です。遮蔽物、高低差など、いろいろな要素が組み合わさっているので注意してくださいね」
つくづく人間はすごいと感心するわね。仮想戦闘空間技術だけでもすごいのに、さらにその中のフィールドも変えることができるなんて……。
画面を見つめていると、生徒たちが続々とフィールド上に現れた。その中には緑髪ポニーテールを風に揺らす、ビエントもいた。
試合が始まってからは一方的な蹂躙だった。ビエントが風を起こし、その風の気流の変化から隠れている生徒を発見。見つけ次第風魔法で吹き飛ばして倒す。
大人数で向かってこられた場合でも全方位に風を起こして広範囲攻撃。どれも隙のないものだった。
「やるわね」
「はい。ビエントはやはり強敵です」
アルチャルは食い入るように画面を見つめていた。ビエントとアルチャルはクラスメイト。何かしら思うことはあるのでしょうね。
第一試合はそのままビエントが圧勝で勝ち抜け。他を寄せ付けぬ圧倒的な強さを誇っていた。
その後の第二試合〜第五試合までは結構良い戦いを見せていた。
「んー! みんな成長してるね〜!」
ユーシャが伸びをしながら率直な感想を述べた。
たしかに、前回のランキング戦と比べても全体的なレベルは上がっている気がする。ビエントのせいで眩んだけど、学年全体として強くなれているのよね。
「ならアタシたちも力を見せねぇとな。おっと、次の試合が始まるぜ」
次の試合は……かわいそうに、メルティ・ニアンがいるじゃない。しかも0ポイントの子が1人パーティでいるし。残酷だけど、これも仕方のないことなのよね。
メルティ・ニアンの圧勝。そう思って画面を見ていた。
……だけど、信じられないことが起こった。0ポイントの子が、メルティ・ニアン2人に対して優勢を誇っている。
「一体何が起こっているの!?」
黒髪短髪の少女は剣を二本持つ二刀流スタイル。メルティも、ニアンも彼女に追い詰められていた。
その5分後。絶対に決勝ラウンドまで上がってくるであろうと思っていた2人が、まさかの1回戦で敗北してしまった。
黒髪短髪の少女はニアンの体を雑に放り投げ、倒れたメルティの体に重ねた。
「……どうやらこのランキング戦、思ったよりも波乱が起きそうね」
「そうですね。リリー様のおっしゃる通りです」
「これは気を抜けない……ずっと全力じゃないと!」
「やることは変わらねぇんだ。やってやるさ!」
「が、頑張りましょう。負けたくない……そう思いました!」
みんなのやる気は上々。さて、士気は高まってきたわ。午後からの私たちの戦い、絶対にこの1回戦を勝ち抜いてやるわよ!




