114話 閉会式
「それでは閉会式を始めます。グラウンドの中央にパーティ毎に整列してください」
先生のアナウンスに従って整列する。ビエントの方は落ち着いたようでしれっと整列していた。
「それでは学園長よりお言葉をいただきます」
その言葉に応じたアルティス学園長が壇上に上がる。
黒髪を風に揺らしながら、マイクチェックを行ってから口を開いた。
「まず皆さんが、全力で戦い抜いたことを私は嬉しく思います。競技としての優劣はついてしまいましたが、皆さんの頑張りはかけがえのない財産となるでしょう」
そこで言葉を止め、数秒フリーズしたアルティス学園長。どうしたんだろうと周りがざわざわとし始めた。するとアルティス学園長が私の方を向いた。嫌な予感がしてたまらない……。
「リリーさん、壇上へ」
「へ、へ?」
なぜか名指しで呼ばれた私。でも呼ばれて無視するわけにもいかないから恐る恐る壇上へ上がる。
「皆さん玉入れは覚えていますよね? 私はあの種目でのリリーさんの活躍に心打たれました。ここに学園長特別賞を贈ります」
「え、えぇ!?」
そんな賞あるんですか本当に……。周りの先生たちも混乱気味だし、一体何を思っての行動なのかわからない……。
「何のつもりですが、学園長」
アルティス学園長にしか聞こえない声で呟く。
「ご心配なく。ただ面白かったので表彰させていただくだけですよ」
アルティス学園長もまた、私にしか聞こえないよう呟いた。
この人は本当に何を考えているのかわからない。私の秘密を知っているからこそ警戒は必要なんだけど、それすらさせてもらえないような、得体の知れなさがある。
アルティス学園長から表彰状を受け取って壇上から下りる。いろんな生徒の目についたわよね……。困ったものだわ。
「さてそれでは体育祭最優秀賞を発表します。……ビエントさん!」
まぁ当然というべきか、5種目中3種目で1位だったビエントに最優秀賞が贈られた。
「最優秀賞にはパーティポイント5ptが副賞としてついてきます」
結構大きいわね……。となると2位には? 3位には? と気になってしまうのは仕方のないところ。
というかそう考えたら水風船チャンバラってパーティポイントの稼ぎ時だったということよね。
「続いて優秀賞を発表します。リリーパーティ、メルティパーティ、エルシアパーティ。以上3つのパーティにはパーティポイント3ptが副賞として与えられます」
おぉ! ということは……今20ptになったということよね。
このパーティポイントが後々どう影響してくるのかはわからないけど、稼げるうちに稼いでおいた方がいい気がする。
「それではこれにて体育祭を閉会します。明日明後日の休みでゆっくり体を休めて、月曜日にお会いしましょう」
先生のそんな締めで体育祭は閉会した。結果で言えばベストではなかった。でも……悪かったわけではないと思う。みんなそれぞれ以外な活躍を見せてくれたし、何よりみんなとの連携が前よりもっとスムーズになった気がする。
「私たち、知らないところで成長しているのよね」
その実感はやっぱり本番でこそ現れる。
「お疲れ様、リリー。帰ろっか」
「そうね。みんなもお疲れ様。よく頑張ってくれたわ」
リーダーとして鼻が高い。いずれ始まる第2回ランキング戦でも、優勝を狙うことができると自信を持って言える。
「そういえばもうすぐ梅雨だな」
「……ツユ? 何それ」
私のこの一言で、みんな固まってしまった。
「リリーの田舎って梅雨がなかったのか?」
「この世界には梅雨はどこでもあると思いますが……」
「リリー、ど忘れしてるんじゃない?」
「び、びっくりしましたよ……」
え、何それ。本当に知らないんだけど。いやでもそのツユとやらを知っていないことにすると魔族であることがバレる? なら……
「も、もちろんジョークよ。あはは……」
危なかった……最後の最後でボロを出すところだったわね。……で、結局ツユって何なのよ!




