10話 甘い家
「ただいま〜」
学校を終え、無事にアスセナが待つ家に帰ってきた。今日は楽しかったな〜♪ ユーシャといい雰囲気になったり、今後もパーティ組めそうな感じだったし。
「お帰りなさいませ、姫様♡」
アスセナがとびっきりの笑顔で出迎えてくれる。こんな日常……最高じゃない?
「ご飯になされますか? お風呂になされますか? それとも……」
「ん? アスセナっていう選択肢もあるの?」
ちょっとからかっちゃえ。
「そ、それでしたら……先にシャワーを浴びさせていただきたいのです……」
モジモジしながら顔を赤らめるアスセナ。
「ちょ、しおらしくしないでよ!」
からかっただけなのに真剣みたいじゃない!
「え……でも綺麗な身体を召し上がっていただきたいので……あっ、姫様はそのままがお好みですか?」
「やめて! なんか生々しいわ!」
恥じらうアスセナの顔がなんか……エッチだ。
「か、からかって悪かったわね。ご飯を先にいただくわ!」
「えっ、か、からかわれていたんですか!? もう! 姫様ったら!」
顔を別の意味で真っ赤にして怒るアスセナ。こういうことも真に受けちゃうのねこの子。
ブツブツ言いながらもご飯の用意を進めてくれるアスセナ。まぁ……そういう真面目なところも可愛いわね。
さてアスセナが準備している間にテキトーに報告書を書いておかないとね。どうせ裏切っているんだし、嘘書いてもいいかな……でも後でつじつまが合わなくなるのは避けたいし、一応本当のことを書いておこう。実習は攻撃・防御魔法の練習を……っと。
「姫様、ご飯の用意ができましたよ♪」
「ありがとうアスセナ。いただきます」
美味しい……流石アスセナだわ。そういえばもし私が魔界を裏切ると伝えたらアスセナはどうするんだろう……。気になる……。
「ね、ねぇアスセナ?」
「何ですか?」
「もしも……私が任務が嫌になって、どこか遠くに行ったら、アスセナはどうする?」
そう聞くとアスセナはちょっぴり微笑んで
「私は姫様に仕えることが唯一の喜びです。どこへなりともお伴しますよ」
そんなことを言ってくれた。これは……アスセナもこちら側に取り込めるかもしれないわね。ただ……まだ言うのはやめておきましょう。どこからか漏れたら私だけじゃなくアスセナの命も危ないし。
「ありがとうアスセナ。貴女のおかげで助かるわ」
「い、いえ! そんな……私は姫様が大好きですから♡」
よくこんな素直に想いを伝えられるわね……私もこんなに素直だったらユーシャと恋仲に……いやいや、まだ出会って2日だし、気が早すぎるっての!
「……姫様?」
「どうしたの? アスセナ」
「何か今女の子のことを考えていらしゃいましたよね?」
「え……ま、まぁそうだけど」
よくわかったわね。そんなに顔に出ていたかしら……。
「そうですか……ふーん、そうですか」
「……なんか顔が怖いわよ、アスセナ」
唇を尖らせて拗ねているのかしら? そんなことをしても可愛いだけなんだけど。
「お、お風呂いただくわね」
「はい。どーぞ!」
なんか……怒ってる? よくわからないわ……この子。
さっきの考えの続きを……。もしユーシャに告白したら受けてもらえるかしら。顔は……自分で言うのも何だけど悪くはない。長い黒髪も手入れはきちんとしているし。胸は小さいけど……それはユーシャも同じこと。平等よ、平等。
まだ出会って2日目。焦ることはない。というのが結局今日の結論になった。まぁ……言ってしまえば素直になれなかっただけなんだけど。
でも……確実にいい方向に進んでいる。ユーシャと、もちろんシルディやヒラとだって。もしかしたら本当に勇者パーティになれるかもしれない。3年後の卒業後、魔王軍と戦うことになるのかな……その時私は、魔王の娘だって伝えられているのかな。
そんなことを考えていたら眠れなくなるから、今日はここまでにすることに。難しいことは明日の私に任せよう。
「おやすみ、アスセナ」




