思ってたよりすごい
うう、ひりひりする。
お風呂をお借りして、馨は手足の毛を剃刀で落としていた。
そこまで濃い方じゃないけどやっぱ剃っててひりひりする。
普段気にした事がなく、全剃りする機会も無かった馨は、シャワーで流しながらお肌を傷つけつつ四苦八苦していた。
「痛い。泡だててからにすればよかった」
そんな失敗をしつつ、ハル姉から衣装を無理やり着させられ、ウィッグをかぶせられて鏡の前に立った。
着ている服はヒロインのライバルの子の、黒のワンピースである。
女装なんて無理!っと思っていたが、同時にちょっと楽しいかも、っと気持ちが傾いていた。
「おーおーこのサイズでも馨着こなせるねぇ。てか足白いな!」
にまにまなハル姉に馨は複雑だった。
「さ、流石に恥ずかしいかな。足がスースーするし、女の子って足元落ち着かないね。」
なんだかんだでキャラと同じ格好ができる楽しさと、今までコスプレもした事がなく、ましてや女装なんて!っという羞恥心で、心がごっちゃになっていた。
「ま、慣れだと思うけどね。ちなみにそ!はコスプレじゃなく着ただけさんね。」
そう言いながら、がそごそと本棚から何かを探し始める。
先月号買ってあったっけー?
「着ればコスプレじゃないの?」
僕は今回が初めてだし、衣装を着ればそれがコスプレだと思っていた。
「まぁ、一般的にはコスプレかもしれないけど、どちらかと言えば仮装だよねー。ほら、コスプレって言うのはこんな人達だよ?」
ハル姉は1冊の雑誌を見せてくれて。
それは毎月出てるコスプレイヤーの紹介雑誌。
売れっ子からイベント会場でランダムに声がかけられて掲載されるタイプだ。
「うわ!すごいね!きゃらそっくり!」
僕はそれを見て心底感動した。
トップページを飾るのは人気男性レイヤー。服装の細かい再現度にくわえ、表情や姿勢がまさにアニメのキャラクター、その人だった。
「これがコスプレってやつだよ。再現度含めて凄いでしょ?皆クオリティが高いの」
ま、私はそこまではやんないけどねー
「ほんと、見てて飽きないね。凄い!この武器って買ったのかな?作ったのかな?」
「気になるなら貸したげる。こーゆーのも面白いでしょ?」
「ありがと、帰ったらじっくり見てみるよ」
「そうして。さ、ちゃちゃっと歌いますな」
「えーっと、僕は結局何を?」
「んー取り敢えず満足したし自由にしててもいいよ。」
えぇー
ホント僕、何しにきたのさ。
------------------
結局僕は特に手伝うこともなく家に帰った。やったら事といえば無駄毛処理とコスプレイヤー雑誌の鑑賞だ。
ただ心の中では凄まじ衝撃を受けた。まさに雷ぁ落ちた感じだ。
細部まで再現された服、アニメのシーンを切り取ったかのような背景。
そして、モデルさんの真剣な目。
何もかも新鮮で、衝撃で、興奮した。
やってみたいな。。
でも、1人かぁ。
高校の友達は誘えないし、そもそも距離をとっている。かと言って友達と呼べる存在はいない。
まぁやるとは決めてないし、借りた雑誌もう一度見て色々調べてみよ。
っと、ぼっちな事を現実逃避し、家に帰った。




