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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第2章 そして彼女は動き始める。
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第20話 そして彼は昔話を始めた。

     ◇◇◇◇◇



「ふぅ……いよいよ明日か」

「そうだな。ぶっちゃけ、すずがここまで気合い入れてやるとは思ってなかったよ」

「そりゃあ、愛の力ってやつだろ?」

「…………」


 生徒会選挙を翌日に控えた教室で、俺は亮と二人そんなことを話す。


 かおりたちは演説原稿の最終確認とやらで、職員室に呼ばれている。


「まあなんだ、俺としては、あいつに生徒会長になってもらいたくはないけどな」

「そういえば聞いてなかったけど、結局のところ、なんで亮は中野さんをサッカー部に入れたくなかったんだよ」

「それ、今聞くか?」

「そのうち話すって言ってただろ?」


 選挙の準備をし始めて一か月。


 毎日原稿の見直しだったり演説の練習だったり、めんどくさい手続きだったりを繰り返しているうちに、気が付けばあっという間に過ぎてしまった。


 これといったトラブルもなかったし、大きなことを成し遂げたわけでもないけれど、すべては明日、生徒会選挙当日のためだ。


 立候補した三人がそれぞれの思惑や意志をもって、取り組んできた。


 だから俺は、これを聞くのは今しかないと思った。


 本番が終わってからではなく、今でなくてはいけないと。


「まあそうだけど、誰かに言ったりするなよ?」

「当たり前だろ」


 亮は俺の返答に頷いて、静かに話し始めた。


「――すずってさ、俺のこと大好きだろ?」

「あぁ……え? あ、お前、気付いてたの?」


 何のためらいもなく言い切った亮に、俺は少し声を揺らす。


「当たり前だろ。俺が何年あいつといると思ってんだよ。とりあえず話を進めるぞ?」


 俺が頷いたのを確認して、亮は続ける。


「で、あいつって俺のことになるとすぐ周り見えなくなんだよ。まあ、なんだ……せっかく入った私立からこんな公立高校に転校してきちまうくらいには」

「それも知ってたのか……」

「ああ。でもな、あいつには俺と比べ物にならないくらいの才能がある。本当ならあのまま私立で勉強に打ち込んで、いい大学へ行って、立派な医者になるはずだったんだ。小さいころからずっとそうするって言ってた通りに。それなのに、俺を追いかけてこんなとこまで転校してきて、挙句には部活もやるとか言いやがって、そんなふうに俺に合わせてばっかいたら、あいつの人生が狂っちまうだろ?」


 亮は一気にそこまで言って、ふっと嘲笑した。


「……うまく言えないけどさ、中野さんにとって、亮の隣にいるっていうことが一番に思い描く未来なんじゃないか? 高校受験のとき、お前が黙ってうちの高校受けてたこと、中野さん気にしてたぞ?」

「そんなことまで話してたのか……。俺もそうしたくてそうしたわけじゃないんだけどな」

「どういうことだよ?」


 亮は大きく息を吐き、俺に「少し長くなるけどいいか」と尋ねて、昔話を始めた。


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