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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
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第8話 なぜだか転校生に看病される。

◇◇◇◇◇


「奏太! 早く起きないと――ってあんた大丈夫⁉ 顔真っ赤よ?」


 中間テストも終わって土日休みを挟み、週が明けての月曜日。


 いつもと同じように茜に声をかけられ、重い瞼を開ける。心なしか体がだるく感じるが、それも休み明けの朝特有の気怠さだろう。


「ん? まだはやいよ……もうちょっと寝る……」


 しかし、そう声に出してみて、俺はようやく異変に気づいた。


 のどが痛い。声がうまく出ない。


「声がらがらじゃない! お母さんに言っておくから、今日は学校休まなきゃダメだよ」

「……ん」


 それから茜はばたばたと部屋を出て行った気がするが、俺は二度寝の口実に甘えて、遠慮なく目を閉じた。


               ◇◇◇◇◇


「そうくん、入るよ」


 扉をノックされた音で眠りから覚め、俺は片言で返事をする。


「お見舞いに来たよ。風邪ひいたって聞いたから。はい、これ今日の配布物」

「わざわざありがと。でもうつるといけないから早く帰った方がいいよ」


 今日一日薬を飲んで寝ていた甲斐もあってか、朝に比べるとだいぶ楽にはなったがまだだみ声は治っていない。


 万が一かおりに風邪がうつって彼女の声がこんな声になってしまっては一大事だと思い、俺はそっけなくそう言った。


「うん。お義母さんが帰ってきたら私も帰るよ。今日は茜ちゃん、なんか帰るの遅くなるって言ってたから」

「でも本当にうつったら大変だし……」

「いいからいいから。そうだ、奏くん汗かいたでしょ。気持ち悪いだろうし体拭いてあげるよ」


 かおりは遠慮する俺に構わず、「ちょっと待ってて―」と言って部屋を出ていく。


 ん? さっきかおり、茜ちゃんって言ってなかったか? 二人ってそんなに仲良かったっけ?


 そんなことを考えようとするもまだ少し熱があるせいか面倒くさくなって、俺は思考をやめて窓の外に目を向けた。


 雨。ひたすらに雨だ。


 ここ最近になって梅雨が本格化してきたのか、もう何日も降りっぱなし。


 別に雨が特別嫌いというわけでもないが、こうも降り続かれるとどことなく気持ちが沈んでしまう。


「おまたせー。これ、新しいスポドリね。ほら、上脱いで脱いで!」


 話しかけられて意識を部屋の中に戻すと、そこには晴れ晴れとした顔で笑うかおりがいた。

 片手にはお湯とタオルが入っているらしい風呂場の桶を抱えていて、もう一方の手にはスポーツドリンクが収まっている。


「ありがと。世話かけて悪いね」

「ううん。私の方こそ、ちょっと勝手に漁らせてもらっちゃったけど、大丈夫だった?」

「ぜんぜん平気だよ」


 俺は差し出られたペットボトルを受け取って、部屋着の上を脱ごうとするが――。


「かおり」

「ん? なに?」

「あんまり見られるとなんか恥ずかしいんだけど……」

「大丈夫だいじょうぶ。私は気にしないから」


 いや、俺が気にするんだよ!


 とはいえ、うだうだしていても仕方がないので俺は素直に汗の染みた部屋着を脱いで床に落とす。


「ほら、じゃあ背中拭いてあげるからむこう向いて」

「う……うん」


 言われるがままにかおりに背を向けるが、このとてつもなく照れくさい状況で顔を合わせなくて済むのはなんとも幸い。


「そうくんって意外に筋肉質なんだね」

「ま……まあ高校に上がるまでは運動部だったからね。一応高校に入ってからもそれなりには体動かしてるし」


 ふきふき。ふきふき。ふきふき。


 沈黙の中、背中をかおりにひたすら拭かれる。


 本当に、これなんてラブコメだよ。普通に考えてありえないじゃん。こんな状況。


 いやまあ、沈黙の中ひたすら体を拭かれるなんてラブコメなんてもんはそりゃあないだろうけども!


 それにしたって風邪をひいたらわざわざ家まで看病しに来てくれるお隣さんの美少女とか、神様様様だよ。マジで。


「よし、後ろはこんなもんでいいかな。じゃあ今度は前を拭くから、こっち向いて」

「いやいや! 前は自分で拭けるから自分でやるよ!」


 俺は慌ててかおりからタオルを奪い取り、彼女に背中を向けたまま胸や腹周りを拭いていく。


「そうくん、耳赤いよ? また熱上がったんじゃない?」

「……」


 俺を見てニヤニヤとなんとも言えない笑みを浮かべるかおり。


 結局、夕飯前に母さんが帰ってきてかおりが帰るまで、俺の体温は上がりっぱなしだった。


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