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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
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第57話 なぜだかお隣さんと花火大会へ行く。(3)

     ◇◇◇◇◇



「はぁ……やっと着いた……」


 石段を上り始めててから、二十分ほどかかっただろうか。


 ようやく一番上まで辿りついて、正面に見えた拝殿のひさしの下にかおりを降ろす。


「そうくん、ありがとう」

「うん」


 俺はタオルで汗を拭って、その隣に座りこんだ。


「花火、何時までだっけ?」

「八時半だから……あと三十分くらいだね」

「そっか。あっ、そうだ。買ってきたもの食べながら見ようよ」


 かおりは手に提げていたビニール袋からたこ焼きやら焼きそばやらを取り出して、容器を開ける。


「なんか拝殿にこんなに広げるの、罰当たりな気もするけど……」

「神さまも今日くらいは許してくれるでしょ」

「それもそうか」


 少し申し訳なく思いながらも、賽銭箱の隣でたこ焼きをつついた。


「あっ! また始まったよ!」

「ほんとだ」


 階段を上っている間に小休止となっていた花火が再開され、上ってきた石段の方向に大輪の花が打ち上げられる。


 打ち上げ場所からは少し離れてしまったので迫力はそこまでではないが、誰もいない静かなところで二人きりで見る花火というのは、なんとも趣があるものだ。


「ここ、穴場だね」

「そうだよ。地元の人だってこないし、ほとんど貸し切りなんだから!」


 神様を祭っている場所で勝手に貸し切り気分になるのもどうなのかとは思うが、隣りでしたり顔になってこちらを見つめるかおりになんだか恥ずかしくなって、俺は少し目を逸らした。


「そうくん、たこ焼き、最後の一個」

「もう全部食べちゃったの⁉」

「別にいいでしょ。ほら、あーん」


 残っていた二つのうち一つを自分の口に放り込んだかおりが、最後の一個を串にさして差し出してくる。


「ん。ありがと……」


 誰がいるわけでもないので、俺は素直にそれにかぶりついた。


「やっぱり花火は、屋台で買ったものを食べながら見るのが一番だね」

「そうだね。ちょっとここだと床が硬くてお尻痛くなりそうだけど」

「うーん……そうだ。ちょっと待ってて!」


 かおりは突然拝殿の中に上がり込んで、這って奥まで入っていく。


「あったあった! はい」

「座布団? 勝手に使って大丈夫?」


 すぐに戻ってきたかおりが手に持ってきたのは、少し埃をかぶった座布団。小学校のころに家庭科で作ったような、そんな見た目のものだった。


「うん。勝手にっていうか、それそうくんのだし」

「え?」


 何度か叩いて埃を落として、座布団をもう一度まじまじと見る。



『三年二組 水瀬 奏太』


 そこには確かに、俺の名前の書かれたワッペンがしっかりとくっついていた。


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