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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
55/152

第55話 なぜだかお隣さんと花火大会へ行く。(1)

     ◇◇◇◇◇



「いやー、やっぱり人多いねぇ」

「ほんと、すごいね」


 開催場所の河原に近づくにつれて多くなってきた人を見ながら、てくてくと屋台のある方へと歩く。


「あれ? 奏太じゃん」


 屋台が軒並みならんでいる大通りに辿りついたところで、どこからともなく声をかけられた。


 つい二時間ほど前に教室で別れた亮だ。


「やっぱり二人で来てたんだな」

「ま、まあな。おまえは……」


 亮の後ろに中野さんがいるのに気づいて、俺は「あ……」と声を漏らす。


「すずちゃん、海ぶりだね~」

「かおりちゃん! 久しぶり!」


 そして俺がなんて挨拶をしたらいいのか考えている間に、互いの浴衣が可愛いだのなんだのと女子二人で仲良く話をし始めた。


「(お前こそ二人できてんじゃねえか)」

「(いや、これは無理やり連れてこられただけでだな……)」

「(可愛い幼馴染と二人で花火大会まで来て、なんだよその言い草は)」

「……」


 中野さんとのことを話に出すと、亮は途端に口ごもる。


「ねぇ、どうせだし四人で回らない?」

「俺は別にいいけど……」

「わっ、私もぜんぜん良いよ!」


 俺がちらりと見たのに気付いた中野さんは、慌てて手をあたふたと動かした。


 それからかおりが食べたそうに見つめる屋台によって食べ物を買いながら、花火を見るのにいい場所を探して適当にぶらつく。


 その途中では小中学校の同級生に時折声をかけられたりもして、なんとも懐かしい雰囲気に浸った。


「そろそろ始まるみたいだな」


 アナウンスが流れて、亮がそう口に出した刹那。空が大きな花火で埋め尽くされる。


「すごい、きれい……」


 亮のすぐ隣では中野さんがうっとりとした表情で夜空を眺めていた。


「(かおり、ちょっとは気を利かせた方が良かったんじゃないの? 中野さん、亮と二人で花火見たくてここに来てるんでしょ?)」


 最初の何百発かを打ち上げ終わり少し間が空いたところで、俺はかおりの耳元で小声で言う。


「(それはそうだけど、そんなこといったら私だって……)」

「(ん? なに?)」

「……な、なんでもないよ!」


 なんだかかおりの機嫌を損ねてしまったのか、彼女は頬っぺたを膨らまして俺を引きずるようにして二人から離れた。


「ちょっとかおり! 急にどこに行くんだよ」

「もっと花火がよく見える場所。こんな人の多いところじゃなくて、もっと落ち着いて見れるところ」


 俺に一瞥もすることなく、かおりは歩く速度を上げる。


 人の波に逆らうように河原とは反対方向へと歩いて、歩いて、歩いて――。


「キャッ……」


 そして、かおりの下駄の鼻緒が切れた。


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