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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
45/152

第45話 なぜだかお隣さんと海の家でバイトをする。(2)

     ◇◇◇◇◇



「やっと一段落したー」

「いやぁ、ほんとにやばかったね」


 お昼時も終わりようやく客の入りが落ち着いてきたところで、かおりと久しぶりに言葉を交わす。


 もう三時間くらいは私語をする余裕もなくただただ店内を走り回っていたので、喉もからからだ。


「二人ともお疲れさん。ほら、ちゃんと水分補給もしろときなよ? ぶっ倒れられたら私も困るかんね!」


 日奈さんは店内で注文待ちのお客さんへと作り立ての料理を運んだついでに、お冷を二つ入れて渡してくれた。


「あ、ありがとうございます」

「あと、ちょっと遅れちゃったけど昼飯、一時間くらい休憩していいから二人で食べてきな」


 続いて厨房からパックに詰められた焼きそばを二つ取り出してきて差し出してくる。


「いただきます」

「じゃあちょっとの間、よろしくお願いします」

「あいよー。適当に空いてる席使っていいからね」


 俺たちはもらった焼きそばとお冷を持って、席に着いた。


「それにしても本当にすごい混み具合だったな」

「ほんとにね。聞いてたよりよっぽど大忙しだったよ」


 もう時刻は三時前。

 十一時を過ぎたくらいから徐々に客足が伸びてきて、あっちに行ったりこっちに行ったりと動き回っている間にもうおやつ時だ。


「ほら、これも食べな」

「ありがとうございます」


 あとから追加で持ってきてくれたイカ焼きとたこ焼きも二人で突っつきながら、焼きそばを食べ進めていく。


「かおり、お冷のおかわりいる?」

「あ、うん。お願い」


 元からかなりの暑さだったが食べたら汗がなおのこと噴き出てくる。


 俺が冷水器で二人分のコップに水を注ぎ入れ、テーブルに向き返ったその時だった。


「――あれ? 水瀬?」 


 ちょうど店内に入ってきた、褐色のスポーツ少女に声を掛けられた。


「なんで日向がここに……って、デートか」

「違ぇよ! こいつは弟だわ!」


 偶然家族と熱海に来ていたらしい日向は、後ろに背の高い爽やかイケメンを引き連れていた。


「どうも、こいつの弟のかけるです」

「水瀬です。よろしくね」

「あっ、たまに姉から話を聞いてます」


 互いに無難な自己紹介をにこなして、なんとも言えない愛想笑いを浮かべる。


 そういえば夏休みに入ってから泊まりで海まで行ったり、かおりと二人でプールへ行ったり、藤宮家のキャンプについて行ったりといろいろなことがあったけれど、その少し前にはかおりに距離を置かれて日向に少し相談したんだっけ。


 まだ一か月も経っていないのに、ずいぶん昔のことのように感じる。


「それにしても本当、偶然だね。水瀬たちも熱海に来てるとは」

「まあ、俺たちはバイトしに来てるんだけどな」

「え? 似合わな」

「うるせぇほっとけ!」


 確かにスタイルの良い美少女のかおりの横に並んでしまうと、俺では海に映えないというのも分かるが、せめて本人の前では言わないでほしかった。


「そうくん、せっかく作ってくれたのに冷めちゃうよ」

「あぁ、悪いわるい。そうだ、日向たちも相席するか? 休憩終わるまでなら話し相手になるけど」

「ほんと? じゃあお言葉に甘えて……」


 なぜだかかおりから少しだけ冷ややかな視線を感じたが、俺は彼女の横に座って日向姉弟と対面する。


「えっと……藤宮、私のこと覚えてる?」

「覚えてるよ。先月にもファミレスで見かけたし」


 日向に返答したかおりの声は、心做しか少しトーンが低く感じた。


『おい、お前なにかしたのかよ』

『いや、まったく心当たりないんだけど』


「そうくん、なにしてるの?」


 テーブルの下でメッセージでやり取りをしていた俺にかおりが聞いてくる。


「なっ、なんでもないよ」

「ふーん」


 俺はなんだか気まずくなって、薄目でじっと見つめてくるかおりから目を逸らした。


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