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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
39/152

第39話 なぜだかお隣さんと缶接キスをする。

      ◇◇◇◇◇



「――おりゃあ! よし、私の勝ち!」

「……くそー」


 ビーチボールをポンポンとひたすらトスし続けるのにも飽きてきて、先に落とした方が負けの勝負形式にしようと言い出したのは、かおりだった。


 しかも勝った方の言うことを負けた方が一つだけ聞くなんていうありがちな罰ゲームのおまけつきだ。


 まさかこんなお遊びのゲームでかおりがガチの全力アタックをかましてくるなんて思いもよらず、だからといってこっちが全力でボールを彼女にたたきつけるわけにもいかず、勝負は痛いところを突かれての惨敗だった。


「勝負は勝負だからね!」


 かおりがドヤ顔で言う。

 ふふーん、と満足げな表情がまた様になっている。


「うーん……なにをしてもらおうかなー」

「できる範囲のことにしてよ?」

「じゃあ、ジュース一本おごりで」

「了解」


 少し遊び疲れたのもあって、俺たちはすぐにプールを出て自販機に向かった。


「どれにしよっかなぁ」


 俺は缶のコーラを一つ買って、それからかおりの分の小銭を投入した。


「じゃあ、これかな」

「あー、それたまに飲むとおいしい……よね」


 自分が言ったことに、少しだけ違和感を感じる。


 かおりが選んだのはナタデココ入りの乳酸菌飲料。


 おいしいけど量も少ないので誰かが飲むときに少しもらうくらいでしか口にしない、そんな立ち位置の缶ジュースだった。


「私これけっこう好きなんだよねー」


 プシュッ、と小気味よい音を立てて、二人して缶を開ける。


 プールサイドに照りつける夏の日差しはあまりに強くて、喉にくる炭酸を一気に半分も飲んでしまった。


「そうくん、一口ちょうだい」


 ふいに、かおりが俺の右手からコーラを奪い取る。


 そしてそのまま、一切の躊躇もなく口をつけた。


「ちょっとかおり」

「くぅ、やっぱ炭酸きついなぁ。はい、そうくんも私の飲んでいいよ」


 かおりは逆手に持っている自分のジュースを半ば無理やり押し付けてくる。


「ほら、早く飲んで」

「……」


 これが噂の缶接キッスというやつか……。


 俺は缶を少しゆすってから、息をひとつ吐いて一口飲んだ。


「……ん、うまい」


 かおりの味がしたとかそんな変態的な意味ではなく、そのジュースはどこか懐かしい味がした。


「小さい頃、プールにくると、私いつもこのジュース飲んでたんだよね」

「そうなんだ」


 俺はそう相槌を打って、さっき感じた小さな違和感の正体に気付く。


 自分で買うわけでも、俺の記憶の限りでは家族や友達が好んで飲むわけでもないそのマイナーなジュースを懐かしく感じた理由。


 それはきっと――。


「そうくんも昔から、炭酸ジュースばっかり飲んでたよね!」


 ――幼き日にかおりから一口だけもらった、そのジュースの味を覚えていたんだろう。


 俺は残りのコーラを一気に飲み干して、ごみ箱に缶を放り投げた。


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