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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
38/152

第38話 なぜだかお隣さんとプールへ行く。

     ◇◇◇◇◇



「そうくん、おまたせー」

「ん、あぁ」


 昼食を食べたかおりが家に迎えに来て、それから自転車をこぐこと十五分。

 市民プールに着いたらそれぞれ更衣室に入り、俺が着替え終わってからさらに五分ほど遅れて、女子更衣室から黄色い花柄のビキニ姿になったかおりが出てくる。


 こんな田舎の市民プールでかおりくらい可愛いとやっぱり目を引くようで、学生を中心にかおりはかなり注目されていた。


「いやぁ、それにしてもここの市民プールに来るの久しぶりだね」

「相変わらず人も少ないよね」


 都会のなんとかランドだとか言われたり、ナンパが横行しているようなプールとは違って人もまばら。


 やんちゃな兄ちゃんに声をかけられたりなんてこともない、安心安全の市民プールだ。


「じゃあほら、ビーチボール借りてきて遊ぼ!」

「う、うん」


 昨日、距離感を近くすると堂々たる宣言をしたかおりが、俺の腕に絡みつくように体を寄せてきた。


 ……む、胸が! 当たってるんですけど!


「どうしたの、そうくん」


 かおりがいたずらに笑いながら顔を覗き込んでくる。


「……なんでもないよ」


 俺はできるだけ心を落ち着かせて、彼女から目を逸らしビーチボールを借りに歩いた。


「ねぇ、ぜんぜん膨らまないよ……」


 係員からぺしゃんこなボールを受け取ったかおりが、息を吹き込んで悲しそうに言う。


「そうくん、よろしく」

「え、あ……うん」


 かおりが直前に口をつけた空気栓としばらく見つめ合う。


「早くー」

「分かったよ……」


 無心。無心だ。間接キスとかそういうのでは絶対ないぞ。うん。


 心を空っぽにして変なことは考えず、ただボールに空気を入れる。それだけのことだ。


「……っふぅ。本当だ。ぜんぜん空気入らない」


 栓に向かって向かってありったけの空気を吹き込んだが、ボールからは間抜けな音を立てて空気が抜けていく。


 それもそのはずだ。


「――あっ、お兄さん。ごめんなさいね。そのボール穴空いてるやつだったよ。こっちなら大丈夫だと思うから」

「……」


 係員のおばちゃんが異変に気づいたらしく、謝ってきた。


「ありがとうございます」

「いいえー、悪かったわねぇ」


 かおりはおばちゃんから新しいボールを受け取り、息を注ぎこむ。


「ふぅ、疲れた。そうくん、あとはよろしく!」

「……結局そうなるのか」


 俺はもう一度心を空っぽにしようとして、でも今度は上手くいかなくて、顔を赤くしながらビーチボールに口をつけた。


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