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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
37/152

第37話 なぜだかお隣さんの距離が近い。

     ◇◇◇◇◇



「奏太! かおりちゃん! お昼ご飯できたわよー」


 二時間ほど勉強を続けたところで、一階から母さんの声が聞こえてきた。


「はーい!」

「今行くー」


 区切りの良いところでシャーペンを置いて、かおりとリビングに向かう。


「あれ? 茜は?」

「今日はなんか部活があるって言って朝から出かけて行ったわよ」

「そっか」


 俺がいつもの自分の席に座ると、かおりもその隣の椅子に腰を下ろした。


「かおりちゃん、簡単なもので悪いけど遠慮しないでたくさん食べてね」

「はい。いただきます」


 かおりに続いて俺も手を合わせて、机上のざるに盛り付けられたそうめんを汁にくぐらせる。


 ズズッ、と勢いよくすする音が部屋に響いた。


「やっぱり夏はさっぱりそうめんだね」

「作るのが楽なのもいいわよねぇ」


 俺と母さんのやり取りを見て、かおりが笑う。


「そういえば奏太、部屋のエアコンつけてる? かおりちゃんが来てるんだから、勿体ないだなんて言ってないでちゃんとつけなさいよ?」

「あぁ、分かったよ。午後からはもっと暑くなるしつけるよ」


 エアコンはあんまり使いすぎると体が重くなるし、怠さを感じるので俺はあまり使わない。


 一度使ってしまうとその涼しさについ甘えたくなって、ちょっと暑いだけですぐにまたエアコンを使いたくなってしまうものだから、「文明は人をダメにするんだろうなぁ」だとかそんな哲学的なことを柄にもなく考えてしまった。


 ちょっと暑さでやられているみたいだ。ちゃんとエアコンつけよう。


「ふぅ、ごちそうさまでした!」


 三人でざる一つ分を平らげて、かおりがお腹をさすりながら息を吐く。


「お粗末さまでした。二人とも、午後も勉強頑張ってね」

「はい! そうくん、行こっ!」


 少し食休みでもしてから上に行こうと思っていたのに、かおりに腕をがっしりとホールドされて、二階に連行された。


「ちょっとかおり、いくら距離感を近くって言っても、親の前であれは恥ずかしいって」

「大丈夫だよ。昔はいつもあんな感じだったし」


 あらあら、とおばさん臭い仕草で俺たちを見つめていた母さんの顔を思い出して、なんとも憎たらしい気持ちになる。


「もう、そうくんは気にしすぎなんだってば。それよりほら、課題やっちゃお?」

「……そうだね」


 俺は窓を閉め切って冷房の電源を入れ、勉強机の前に座った。


「そうくん、これ分からないんだけど」

「あぁ、これは――」


 今度は最初から俺のすぐ隣に座ったかおりがすり寄ってくる。


 午前中と同じように、分からないところを質問されてはそれに答えて、特に質問がなければ黙々と問題を解いて。それをひたすら続ける。


「ねぇ」

「ん?」

「明日は何時から行く?」


 一時間ほどして少し集中力が落ちてきたところで、かおりが尋ねてきた。


「うーん……お昼食べて昼過ぎからとか?」

「そうだね。じゃそうしよっか」

「――あら二人とも、デートの約束?」

「……」


 まるで最初からそこにいたとでも言わんばかりのごく自然な流れで、母さんが話に割って入ってきた。


「母さん、部屋に入るときはノックくらいしろっていつも言ってるだろ」

「ごめんごめん。それよりほら、お菓子とジュース持ってきたからちょっと休憩にしたらどう?」

「わぁ、ありがとうございます」


 器にのせられた少しお高めに見えるクッキーを見て、かおりが目を輝かせる。


 いつも俺が夜中にテスト勉強していても夜食のひとつも作ってやくれないのに、かおりがいるとこうも待遇が違うとは。


 考えてみると、かおりは夕方や夜に勉強をしに来ることは頻繁にあったが、こうして休日に一日ずっとうちにいるということは今までになかったかもしれない。


「かおりって意外と食いしん坊だよな」

「ちょっとそうくん! 女の子にそういうこと言う⁉」


 不満げに頬を膨らませたかおりだったが、案の定、俺よりもたくさんのクッキーをおいしそうに頬張った。


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