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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
36/152

第36話 なぜだかお隣さんに性癖を打ち明けられる。

     ◇◇◇◇◇



「そうくん、いつまで寝てるの?」

「ん……」


 もうすっかり呼ばれ慣れた声に目を開けて、目覚まし時計を確認する。


「もう十一時⁉」


  二泊三日の下田旅行も無事に終わって気が緩んでいたのか、もう昼前。


  でも――。


「あれ? 今日なにか約束してたっけ?」


 プールに行くのは明日のはずだし、今日は特に会う用事もなかったはずだ。


「なに、そうくん。用事がなきゃ来ちゃいけないの?」

「いや、そうは言ってないけど……」


 少し口調を強めたかおりに、俺は思わず委縮する。


「課題を一緒にやろうと思ってさ。あと二、三日気合い入れてやれば終わりそうだし」

「あー、そういうことね」


 それならそうと先に言っておいてくれればいいのに。


 かおりは課題のプリントが入ったファイルを取り出して、勉強用の机を準備し始めた。


「なんかずいぶん手馴れてきたなぁ」

「まあこれだけ何回も部屋に来てれば多少はね」


 俺は部屋を出て顔を洗い、歯を磨いて適当な半袖短パンをクローゼットから引っ張り出す。


「かおり、着替えるから外に――」

「私は気にしないよ!」

「……」


 このやり取りも何回やったことやら。


 俺は無言で部屋着から着替えた。


「あの、あんまりじっと見ないで欲しいんだけど」

「いやだって、このシャツ首回りがすごい空いてるからさ……」


 首もとに尋常じゃない視線が突き刺さる。


 そういえば、このシャツを着ているときはいつも、かおりから変な視線を感じていた気がする。


「かおり、首フェチなの?」

「え? あっ、うん! 首って言うか、鎖骨が好きなんだよね~」

「そ、そうなんだ……」


 なぜだかお隣さんの女の子に性癖を打ち明けられてしまった。


「ほら、そんなことより課題やろうか、課題を」

「あ、うん」


 いつものことながらなかなか勉強に入れないので、気を取り直してシャーペンを右手に持つ。


「よし、じゃあ分からないところがあったらどんどん聞いてね」

「あ、じゃあ一人でやってみて分からなかったところがあるんだけど……」


 かおりも意外に勉強熱心なようで、待ってましたとばかりに質問を飛ばしてくる。


「あぁ、これはまずイコールゼロになる解を手探りでひとつ見つけるんだよ。そしたらそれがもとで因数が一つ分かるから、もとの式をそれで割ってあげると二次式になる。そっからは普通にまた因数分解してあげれば……ほら、こんなふうに」

「ふむふむ、なるほど……。あとこれも分からなかったんだけど」

「これは二項定理を使うんだけど、公式で覚えるよりイメージで覚えちゃった方がやりやすいかな~」

「うーん……じゃあこれは?」

「えっと……まずは式を一回展開してあげて、それから実部と虚部でそれぞれまとめてあげる。そしたらそれぞれがゼロになるように連立方程式を立ててあげて――」


 質問、質問、また質問。


 かおりはいつにもなく次から次へと質問を繰り出してくる。


 気づけば、最初には机を挟んで向かいにいたはずのかおりが俺のすぐ隣まで移動してきていた。


「ねぇかおり、ちょっと近いんだけど……」


 肩と肩が触れ合う距離に、俺は情けない声を出す。


「いいじゃん! こっちの方が教えてもらいやすいし」


 いや、俺は教えづらいんですが……。


 困惑する俺に、かおりはいたずらな笑みを浮かべて言った。


「昔のこと思い出すのに、前みたいな距離感の方が良いかな、と思ってさ!」

「いや、それはさすがに……俺たちもう高校――」


 俺の言葉を遮ってかおりは続ける。


「だから決めたの。これからはもっと距離感を近くしていこうって」

「……」

「そうくん、覚悟してね!」


 早くかおりのことを思い出さないと身が持ちそうにない。


 笑顔のかおりを見て、俺は一人そう思うのだった。


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