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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
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第31話 なぜだか夏休み早々海へ行く。(5)

     ◇◇◇◇◇



「ふぅー、疲れたぁ」


 ぐぅぅぅう。


 主人の言葉に呼応するかのようにかおりのお腹が鳴る。


「…………ご飯でも行こうか」

「ちょっとそうくん⁉ 今の間はなに⁉」

「なんでもないよ~」


 お腹に手を当てながら顔を赤らめ、慌てふためくかおりはなんとも可愛らしい。


 そんなただでさえ可愛い女の子がフリフリのキュートな水着を身につけているのだ。俺には眩しすぎる。


 実を言うと、スタイルの良いかおりのビキニ姿を俺はさっきからずっと直視できずにいた。


「じゃあ海の家に行こうか」


 海から上がってテントに財布を取りに行き、来るときに下ってきた坂道を歩いて上る。


 砂浜が小さいゆえに、海の家は坂道の上にあるのだ。


「おばちゃん、お昼食べに来たよー」

「やあいらっしゃい」


 茜を先頭にして小さな店の中に入り、席に座る。


 迎えてくれたのは初老のおばちゃんで、ずっとにこにことしているので見ているこっちが気持ちよくなるような人だった。


「ここで浮き輪とかも空気入れてもらえるの?」

「うん。レンタルしたりお昼食べたりすれば無料でやってくれるって」

「だから一人だけ浮き輪使ってたんだな」


 午前中は泳いだり浮き輪で流されたりというよりは、ほとんど波打ち際でビニールのボールを使って遊んだり、岩場でカニや小魚を探したりした。


 それなのに茜はずっと、しれっと一人だけ浮き輪をつけた状態だった。

 足がつくどころか腰くらいまでしか海水がないのに。


「ま……まあ、パラソルをレンタルしに来た時についでに空気入れてもらったのよ」

「それで一回忘れ物したとか言ってテントに戻ってきてたのか」


 勉強はできる方ではないが、スポーツに関してはなにをやらせてもそつなくこなす。

 皆の憧れる運動神経抜群の生徒会長にも、弱点はあるのだ。


「茜、昔からかなづちだもんな。仕方ないよ」

「ちょっと奏太! それは人には言うなっていつも言ってるでしょ!」


 いつもはクールぶっている茜が、顔を赤くして怒り出す。


「まあまあ。誰にだって苦手なことはありますよ!」

「そうだよ茜ちゃん」


 年下の女の子二人に慰められる茜。


「それよりほら、早く注文しちゃお」



 お腹が空きすぎて我慢しきれなくなったのか、かおりが俺たちを急かした。


「どれにしようかな……って、メニューそんなにないか。じゃあ俺は磯ラーメンで」

「俺も」

「私は海鮮うどんかな。あとサザエの串焼きもおいしそう」


 結局、男はラーメン、女子はうどんときれいに分かれて、注文をする。


「あいよ。ちょっと待っててね」


 厨房におばちゃんが消えてから、ほんの数分だろうか。


 皿に載ったサザエの串焼きを持って、戻ってきた。


「あい、先にサザエの串焼き三本ね。麺はもうちょっと待っててねぇ」


 おばちゃんは机の上にやさしく皿を置くと、またゆっくりと厨房へと歩いていく。


「いただきまーす……ッッ⁉ これすごいおいしいよ! そうくんも食べてみて!」


 我先にと手を合わせて櫛を手に取ったかおりが、一口食べたかと思ったら今度は俺の口の前にそれを差し出してくる。


「……自分で食えるって」


 この流れ、ずいぶんと久しぶりにされた気がする。


 こういうことは何度やられてもなれない。


「いいからいいから!」

「……分かったよ」


 勢いに押されるまま、サザエをひとつ、ぱくりと頂く。


 口を動かしながら冷やかすように口笛を吹いた亮をにらみつけるのも忘れない。


 かおりは目を輝かせながら「どう? どう?」と感想を求めてくる。


「うん。おいしいよ。もっと頼んでもいいくらい」

「でしょ⁉ ほら、皆も食べなよ!」


 そう言ってみんなにサザエの串焼きを勧めたかおりが、少し遅れてきたうどんを一番に食べ終わったのは言うまでもない。


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