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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
3/152

第3話 なぜだか転校生が俺の部屋に立っていた。

◇◇◇◇◇


「ちょっと! 奏太! 早く起きないと遅刻するよ!」

あかね……あと十分したら起きるから……」


 騒がしい声を適当にいなして、溜息をひとつ吐く。


 茜は部活の朝練とやらで起きる時間が俺より早い。それなのに毎朝自分に合わせて俺を起こそうとしてくるもんだから何ともありがた迷惑ってもんだ。


 俺はもう一度枕に顔を埋めて、二度寝に入る。

 この二度寝の五分十分が気持ちいのなんの。まあ、あまりに心地よすぎてそのまま寝過ごすこともあるのがたまにきずだが。


むにゃむにゃ。


「――ちょっと! そうくん!」

「ん~あと五分……」

「ねぇ! 電車間に合わなくなっちゃうよ、そうくん!」

「……あとちょっと。っていうか茜、朝練は?」


 ん? そうくん? 今、そうくんって言ったか?


 違和感を覚えて恐るおそる声の方へ顔を向けると――。


「おはよう、そうくん! 早く準備して行くよ!」

「って、なんでここにかおりがいるの⁉」


 なぜだか転校生が俺の部屋に立っていた。


               ◇◇◇◇◇


「二人とも、気を付けて行ってらっしゃいね。かおりちゃん、奏太をよろしくね」

「はい! 任せてくださいお義母さん!」

「……行ってきます」


 お義母さん⁉ いまお義母さんて言ったか⁉


 いや、そんなことよりも今は考えなくてはならないことがもっとあるはずだ。


 まず、なんでかおりが俺の部屋にいたのか。いや、これは母さんが入れたからに違いない。どちらかというとなぜかおりがわざわざ俺の家まで来たのか、だ。


 昨日はよくわからないがかおりを怒らせてしまったようで、けんか別れのような形で駅ではぐれてしまった。そのあと梅雨入りの予報通り雨が降り出して、雨の中自転車で家まで帰らなくてはいけないという散々な目にあった。


 待てよ? そもそもなんでかおりは俺の家を知ってるんだ? 


 背筋がひやっとするようなそんな疑問は、しかし家を出て二秒でかき消された。


『藤宮』


 目の前の家の表札には、そう刻まれている。


 俺の記憶では、その家は先週まで長いこと空き家だったはずだ。俺が物心ついた時にはもう人は住んでいなかったと思うが、そういえばこの間の土日に引っ越し業者が荷物を運び入れていた。


 つまり――。


「もしかして、かおりって――」

「うん! お隣さんだよ!」


もう答えが分かりきっている質問に、かおりは満面の笑みで元気よく答える。


「まじか……」

「まじだよ……って、こんな話をしてる場合じゃないよ! 電車、乗り遅れちゃうって!」


 かおりに言われて時間を確認すると、もう電車の時間まで二十分もない。


「やば! じゃあ、飛ばすよ!」

「うん。ちゃんとついていくから遠慮しないでいいよ」

 

俺は帰宅部エースの本領発揮! とばかりに自転車にまたがり、ペダルを強く踏みこんだ。


               ◇◇◇◇◇


 俺の通っている芦川高校は、家から車で三十分ほどの場所にある公立の高校である。そのため通学では家から最寄り駅まで自転車で二十分、それから電車に十分弱揺られて、そこからは学校まで十分ほど歩いている。


 まあつまり、家を出た時点で電車出発の二十分前ということは、駅までかなり急いでもぎりぎり間に合うかどうかのペースだったということだ。


「ふぅ……何とか間に合った」

「いやぁ、危なかったねー」


 息を整えながらかばんからハンドタオルを取り出して汗を拭く。


「それにしても、なんでわざわざ起こしに来たの?」


 そう。それだ。


 さっきは流れでうやむやになってしまったが、「なるほど。家が隣だったから朝部屋までおこしに来てくれたのか。納得納得!」とは流石にならない。


 ラブコメ漫画とかによくある幼馴染ヒロインか! ってなるだけだ。

 あれは幼馴染だからあり得てるのであって(いや、万が一隣の家に住む可愛い幼馴染とかいうご都合展開があったとしても、きっと部屋まで起こしに来てくれるなんてことはありえないんだろうけど)、とにかく出会って一日のかおりが俺の部屋にいたことは謎でしかないのだ。


「なんでって、家もお隣さん同士だし?」

「いや、それだけで会ったばかりの男の部屋に朝起こしに行くとかありえないじゃん!」


 なんともはぐらかしたような返答に、至極まっとうな指摘をする。


「だから、会ったばかりじゃないって言ってるでしょ!」

「え? あ、うん……?」


 そういえば、昨日ファミレスから帰ってしまったときにもそれに近いようなことを言っていた。


「私、決めたから」

「えっと、何を?」


 聞き返した俺にかおりは大きく息をひとつ吐いてから、小さめの胸を大きく張って宣言する。


「そうくんに私のこと、絶対思い出させてやるってね!」


次の更新は明日になります。気に入って頂けたら、ぜひブックマーク、評価をお願い致します。

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