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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
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第29話 なぜだか夏休み早々海へ行く。(3)

     ◇◇◇◇◇



「あ、おかえりー」


 大浴場でゆっくりしてから部屋に戻ると、浴衣姿になった女子三人が先に部屋に帰っていた。


「あれ、なんか早いね」

「あんまり長湯してても疲れちゃうからさ。明日は海に行くんだし、ほどほどにしとこうかなと思って」

「なるほど」


 喉が渇いて、広縁の水道で水をコップに注いで一気に飲む。


「あれ? これなに?」


 水道の横にある小型の冷蔵庫の上に置いてあったお菓子が目につき、俺はかおりに尋ねた。


「あぁ、なんかチョコだって。皆で食べるようにっておばさんがさっきくれたの」

「じゃあ夕飯もこなれたし、皆でいただこうか。トランプでもしながら」


 俺がかばんから持参したトランプを取り出すと、皆は「いいねー」と声をそろえて食事用の机を端に寄せる。


「じゃあちょうど五人いるし、大富豪でもやろうか」


 座布団を円状に置いて、そこに腰を下ろす。


 トランプをよく切って全員に一枚ずつ配ると、じゃんけんをして順番を決めた。



     ◇◇◇◇◇



「そうくん、逃げないでよー」

「おいかおり、落ち着けって」

「ぐへへ……ひっく」


 ふらつきながら俺を追いかけまわしてくるかおりを見て、俺はため息を漏らす。


 ……どうしてこうなった。


 大富豪の五回戦を終えて、少し休憩でもしようとチョコの袋を開けて皆で分け合った。


 中身は高級感のあるワインチョコで、なんともおしゃれな味だった。


 そしてそんな味をかおりは気に入ったのか、俺がゆっくりと味わってもう一つもらおうと思ったときには、彼女の前にもう五、六個の食べ終わった袋が転がっていた。


「そぉくん……」

「おい、まさか……」


 小声で俺の名前を呼んだかおりは少しうつろな目で頬は紅潮していて、明らかに酔っ払っていた。


「ぐへへ……やっぱそうくん、良い鎖骨してるねぇ」

「かおり、ちょっと離せって」


 部屋の隅まで追い詰められた俺に、かおりが触れてくる。


「おはだけ……ひっく」

「もう! いい加減にしろって!」


 しつこく首回りを撫でまわしてくるかおりにさすがに耐えられなくなって、俺は彼女の肩を掴んで無理やり引き剥がした。


「むぅ……」

「な、なんだよ」


 かおりはいつもより火照った頬を膨らませて俺を見つめてくる。


 俺が思わず目を逸らすと、彼女は息をひとつ大きく吐いて口を開いた。


「だぁいたいねえ、そぉうくんはいつまでたってもあたしのことおもいださないし、いいかげんにしてよ……もぅ」

「だ、大丈夫か? 日本語おかしいぞ?」

「うるさぁい! ちょっとはあたしのきもちもかんがえろよぉ……」


 かおりはそのまま俺の胸に体を預けて、眠り込んでしまった。


「これどうすればいいかな?」

「知らん。よく分らんけどお前が悪いんだろ、きっと」

「そうよ。あんたが悪いのよ。ちゃんと布団に寝かせてあげなさい」


 なぜだか亮と茜に責められながら、俺は格段大きなため息を吐いた。


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