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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
28/152

第28話 なぜだか夏休み早々海へ行く。(2)

     ◇◇◇◇◇



「いやぁ、食ったくった」

「おいしかった~」

「お腹いっぱいだ」

「やっぱりここのご飯はおいしいなぁ」

「もう食べれない……」


 旅館で少し早めの夕食を食べ終わってお腹をさする。


 亮なんて部屋の畳に背中から倒れこむようにして寝転んでいる。


「ちょっと亮、行儀悪い。牛になるよ!」

「俺は小学生か! なんだよ牛になるって。別に他に誰がいるわけでもないんだからいいだろ」


 きっ、とにらみつける中野さんをあしらって、亮は彼女に背を向けるように体を横にした。


「それにしてもこんな贅沢なご飯出してもらって良かったのかな」

「本当だよ。しかもこれで二泊で一人一万円って、さすがに悪い気が……」

「大丈夫だよ。知り合い割引だっておばちゃんも言ってくれてたから。そのかわり、友達にでもいい口コミを広げてちょうだいって」


 かおりはそうは言ったが、いくらなんでもこのサービスで一泊五千円では安すぎる。


 食事は直接部屋に運ばれてくるスタイルで、海鮮をメインとした豪華な料理。一部屋に五人というのは少し手狭ではあるが、それでも昔ながらの畳の敷かれた和室はどこか懐かしさを感じさせる居心地の良さを醸し出している。


 普通に泊まったら、一泊二万円くらいは軽く超えそうな感じだ。


「まあ、せっかくそう言ってくれてるんだったら遠慮なんてしないで満喫しようぜ」

「まあそうだね」


 畳の上に寝そべりながらで大きく息を吐いた亮に、軽く返事をする。


「そういえば確かここの大浴場、広いし露天風呂も綺麗だったわよね。ちょっと食休みをしたらみんなで行きましょ」

「それって混浴――」

「男湯は男湯、女湯は女湯だよ神木くん」


 茜の言葉に反応した亮の言葉をかおりが遮り、中野さんは格段冷たい視線を亮に向けた。


「……あんた覗いたら殺すからね」

「誰がお前の裸なんて――グフッ……」


 中野さんに腹パンを食らう亮を見ながら、俺たちは苦笑いを浮かべた。


                ◇◇◇◇◇


「なあ、亮って中野さんと付き合ってんの?」

「はあ⁉ なに言ってんだお前。そんなわけねぇだろ」

「わざわざこんな所までついてきてるのに?」

「だからそれはあいつが勝手に……」


 大浴場で体を洗い終わり、大きな湯船に浸かりながらそんな話をする。


「勝手に、なんだよ。なんて言ってついてきたんだ?」

「いや、その……他の女子と旅行に行くなんて私もついてく! って」

「うわーお。すごいな」

「お前、うわーおって……」


 俺の反応に呆れ顔を浮かべる亮。


 その仕草はどことなくわざとらしくて少しイラっとしてしまう。


「っていうか、それで付き合ってないというのはいくら何でも無理があるだろ」

「食後の彼氏に腹パンかましてくるような彼女がいてたまるかよ。それよりお前の方こそ、藤宮とはどうなんだよ」

「どうって……なんにもないよ」


 今度は形勢逆転とばかりに、ニヤついた亮が言葉を続ける。


「家だって隣同士なんだろ? いいよなぁ、あんな美少女とお隣さんなんて」

「まあ、もっと言うと小中学校も途中まで一緒なんだけどな」

「はぁ? なんだよそれ初耳だぞ?」


 言ってないからな。


 亮は驚いたようだったが、しかしすぐに納得したような顔になった。


「そう言われてみると、転校初日からお前に絡んでたのも分かるな。そうくんとか呼んじゃってるし」

「……」


 黙った俺を置いて、亮は立ち上がって露天へと向かう。

 俺もあとを追いかけて外に出ると――。


「――絶景だな」

「うん」


 木造の屋根の向こうに広がるのは見渡す限りの海。

 少しだけ欠けた月が海面に映し出されていた。


「なんでこんなロマンチックな景色を男と見なけりゃならねぇんだ……」

「その言葉、そっくりそのままお返しするよ」


 きっと好きな子と二人で眺めたらさぞかし良い雰囲気になるんだろう。


「藤宮と見たかったか?」

「…………そんなわけあるか」


 ほんの一瞬。


 本当に一瞬だけ脳裏に浮かんだかおりの横顔を、俺は振り払うように頭を振った。


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