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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
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第27話 なぜだか夏休み早々海へ行く。(1)

     ◇◇◇◇◇



「夏休み、海行こうぜ! 海!」


 夏休み前最後の登校日。


 終業式も大掃除も終えた教室で、亮が話しかけてきた。


「海か……遠いな。山なら近くにたくさんあるのに」

「そうくん、いいじゃん海! 行こうよ!」


 なぜだかかおりが、乗り気で首を突っ込んでくる。


「おっ、藤宮も行くか? じゃあ三人で行こうぜ」

「いいねいいね!」

「……」


 俺を置いてきぼりにして、二人だけで楽しそうに話しやがって。


「分かったよ。行くよ……」

「そういうと思ったぜ」


 亮は俺を見て、にやりと笑った。



     ◇◇◇◇◇



 俺たちが住んでいる山梨県は周囲を山に囲まれた陸の孤島。


 東京にはそれなりに近いが電車は一時間に二本ほど。新幹線だって通っていないドの付く田舎だ。


 当然ながら県内に海はないし、この歳になれば家族で旅行に行くこともなく、海になんてもう五、六年は行っていない。


「――で、なんでお前は女の子を連れてきてるんだよ、亮」

「し、仕方ないだろ。行きたいって言うんだから。それを言ったらお前だって生徒会長連れてきてんじゃねぇか」

「いや、これは勝手についてくるって聞かなくて……」


 思い立ったら吉日とは言うが、さすがに夏休みが始まって二日で海へ行くことになるとは思わなかった。

 海に行こうって話になったのだってつい昨日のことなのに。


 しかも亮が可愛らしい女の子を連れてくるだなんて。

 亮のくせに。


「皆、忘れ物はない? あ、初対面の子もいるし、一応自己紹介しておくわね。私は水瀬茜。奏太の姉よ。よろしくね」

「あっ、私は中野すずです。無理言ってついてきてしまってすみません」


 勝手についてきた茜と亮の幼馴染だという中野さんが自己紹介をして、俺たちも簡単に名前を教えていく。


「それにしてもあっついなぁ」

「まあ夏の真昼間だからね」


 空高くに光り続ける太陽に、汗が全身から溢れ出てくる。


「あ、バス来たわよ」


 高速道路の中にあるバス停へようやくやってきたバスに、俺たちは乗車券を見せて乗り込んだ。


「涼しいぃ」

「ちょっと亮、他の人もいるんだから静かにしなさいよ!」


 冷房のよく効いた社内に腰を下ろして声を上げた亮を、中野さんがにらみつける。


 彼女もそうは言ったが、バスは思いのほか空いていて、俺たち以外に乗客は十人もいなかった。


 おかげで一番後ろの一列を五人で占領できた俺たちは、大いにリラックスして移動時間を過ごすことができた。


「三島まで行くんだっけ?」

「うん。そこからは電車で一時間半くらいのところで降りて、そしたら駅まで車で迎えに来てくれるらしいから」

「そっか。なにからなにまでありがとね」


 予定では、今日から旅館に二泊三日。


 昨日かおりが知り合いの旅館に確認をしてくれたのだが、夏休み中は予約がいっぱいで空いているのが今日と明日しかなかったのだという。


 俺はてっきり海とは言っても日帰りで近場に行くものだと思っていたのだが、かおりは泊まりで行く気満々だっららしく、夏休み始まって早々、下田まで泊まりで旅行に行く運びとなったのだった。


「皆、遠いところからよく来てくれたね。さあ乗ってのって」


 目的の駅についてロータリーへ出ると、ちょうど旅館からの迎えのミニバンが到着していた。


「よろしくお願いします」

「お世話になります」

「あらあら、かおりちゃんも茜ちゃんも奏太くんも大きくなって」


 女将さんだろうか。上品な笑顔のおばさんに声をかけられて、会釈をしながら車に乗り込む。

 

「かおり、あのおばさんって、俺会ったことある?」

「知ってるけど教えないよ!」


 まあ俺と茜を知っているようなおばさんの態度からして、会ったことはあるんだろうけれど。


 かおりはぷいとそっぽを向いて、頬を大きく膨らませた。


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