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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
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第26話 なぜだかお隣さんに上裸を見られる。

     ◇◇◇◇◇



「――そういうわけで、一応元通りにはなったんだけどさ。日向からの着信がきっかけで帰り道は会話なしだったよ」


 帰宅してすぐに日向に折り返しの電話を掛けたが部活中だったのかつながらず、それから次に俺のスマホがなったのは夕飯を食べ終わってからだった。


 そういうわけだなんていうほどの理由も分かっていなかったが、まあとりあえず俺は電話越しに今日あった出来事を日向に伝えた。


「いやぁ、まさか昨日ファミレスに二人でいたところを見られていたとは」

「まったくだよ……」


 帰り道のかおりの鋭い視線を思い出して、息を大きく吐き出す。


「まあなんにせよ、元通りになったならよかったじゃん」

「あぁ……」


 これで明日になって、また避けられるようになっていたりしたら、と考えて気分が落ち込む。


「とりあえず、また何かあったらいつでも連絡してよ。アドバイスくらいはできるから」

「ありがとな。じゃあ、また」


 ばいばーい、と言った日向に返事をして、俺を電話を切った。


「そうくん、こそこそ電話するなんて、やっぱり日向さんと仲良いね」

「ッッッ⁉」


 唐突に開かれた部屋の扉から、冷たい声が飛んでくる。


 恐るおそる目を向けると、眉をピクピクと動かしながらかおりが立っていた。


「仲良いっていうか、ちょっと相談事をね……」

「相談事? それってどんな?」


 かおりは語尾を少しだけ強めて俺に詰め寄ってくる。


「うーん……なんというか、人間関係?」

「ふーん……」


 嘘はついてない。本当のことだ。


 最近かおりに避けられていることを相談していただなんて、本人を前にして言えるわけがない。


 上手くかわされたからか、不満げなかおり。


「そっ、そんなことよりもどうしたんだよ、急に部屋に来て」

「急じゃないよ。メッセージ送ったのにそうくんが電話に夢中で返信してくれなかったの」

「あ……ごめん」


 かおりに言われてスマホを確認してみると、確かに十分以上前にかおりからメッセージが届いていた。


「夏休みの課題、一緒にやろうかと思って」


 スマホの画面に映ったものとほぼ同じ内容を彼女は口に出す。


「まあ先にやっといて損はないもんね」

「うん」

「あ、でも俺まだシャワー浴びてないや」

「じゃあ先にやり始めてるから早く入ってきて」


 部屋で女の子と二人きりという状況で、汗臭いままなのはさすがに嫌だ。

 俺は二人で勉強をするとき用の折り畳みの机を広げて、風呂場へと向かった。


「なんかかおり、日向の話になるとすぐに機嫌が悪くなるなぁ……」


 シャワーを浴びながら、誰に言うでもなくひとり呟く。


「もしかして俺に嫉妬してる……なんてことあるわけないか」


 頭に浮かんだ考えを声に出して、すぐに自分で否定した。


 さすがに自意識過剰だ。


 俺はシャンプーで髪を洗ったその勢いのまま、顔を手で強くこすった。


 かおりはあまりにも距離感が近いので、ついつい勘違いをしてしまいそうになる。


 でも今こうして友達としてであっても、こんなに彼女の近くにいられるということは俺のような平凡な男子高校生にとっては特別であると忘れてはいけない。


 これ以上を求めるべきじゃない。求めてはいけない。


 一緒に学校へ行って、一緒に弁当を食べて、こうやって一緒に勉強をしたりして。

 俺にはそれだけでも十二分に幸せなのだ。


 そんなことを考えて、なぜだか心のどこかになにかが引っ掛かっているような感覚に襲われて――。

 

「あ……」


 全身を洗い終えて体をバスタオルで拭きながら、俺は思わず声を出した。


「着替え、忘れた……」


 普段はバスタオルを腰に巻いて部屋で服を着るので、脱衣所に着替えは持ち込まない。


 そんな習慣がこんなところで出てしまった。


 今日は暑くて汗もよくかいたので、一度脱いだ下着や服をもう一度着る気にはどうしてもなれない。


 仕方がないので俺はいつも通りバスタオルを腰に巻き、階段を上る。


「ちょっといいか。着替えを持っていくのを忘れちゃったから取ってもらえるか?」

「そうくんが裸でも私は気にし――」

「俺が気にするの!」


 自室の扉を挟んでもう何度も繰り返しているようなやり取りをして、でもかおりは着替えを取ってくれる気配はなくて、俺は早足で部屋に入ってクローゼットを開けた。


「そうくん、やっぱり良い体してるよね。鎖骨も良い感じだし……」


 かおりからやたらと視線を感じて、着替えだけ持っていったん部屋から出る。


「やっぱり風呂上がりってなんかいいよね!」


 廊下で素早く部屋着を着て部屋に戻ると、かおりはそんなことを言って俺を舐めるように見た。


「エロ親父みたいなこと言ってないで課題やるよ。っていうかかおり、ぜんぜん手つけてないじゃん! 先にやってるって言ってたのに」


 かおりは都合が悪くなって俺から目を逸らす。


 結局、それから机で寝落ちするまで課題を解き続けて、終業式の朝は身体中が少し痛かった。


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