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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第3章 そして彼女は想いを伝える。
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第40話 そしてようやく、想いを告げる。(1)

     ◇◇◇◇◇


「そうくん! もう、なんで先に行っちゃうの!」

「ごめんごめん」


 日向と二人、頂上へと引き返していると、ちょうど上から下りてきていたかおりがプンスカと効果音を出しながら駆け寄ってきた。


「一緒におみくじ引こうと思ってたのに!」


 そういえば、稲荷山の最高峰――一ノ峰には、よく当たるおみくじがあると、事前に調べたときネットの記事に書いてあった。


「もう一回上まで戻る?」

「うーん……それはいいや」


 渋々ながら諦めた様子のかおりに、俺は苦笑する。残りあと少しの修学旅行、かおりと目一杯楽しみたいけれど、俺にはまだやらなくてはならないことが残っている。


 ちらりと佐藤に視線を流すと、やはり目が合った。



「とりあえず、下まで降りようか」



 流れで日向を一瞥するが、いつもと何も変わらない俺の知っている日向だった。目は合わなかった。


 三十分と少しを掛けて下まで歩いて、時間はまだ十一時前だった。自然な流れでトイレ休憩にしようということになり、俺と佐藤だけがトイレの前に取り残される。


「佐藤。話って今からでも大丈夫か?」

「……うん。でも、もうちょっと人の少ないところが良いかな」


 敷地の端の人気のない場所を求めて、少しだけ二人で歩く。


 まさか人生で初めて告白される日に、二人から好きだと言われることになるなんて思ってもみなかった。


 昨日も考えたけど、俺みたいな特にこれといった特徴もない普通のやつを好きになってくれる子なんているわけがないと、これまでずっと思っていた。かおりは昔、よく一緒にいたということもあるから例外だとして、それ以外にはそんな子は現れないと、思い込んでいた。


 俺は昔から何をやってもそれなりにはこなせたけど、でもそれは何に対してもある程度までで、自分にどうしても自信が持てなかった。


 でも、そんなふうに自分を卑下するのは、かおりや俺を好きになってくれた人たちに失礼なんじゃないか。


 今日は強く、そう思わされる。



「――水瀬くん」



 たぶん分かってるだろうけど、と前置きをして、ちょうどいい場所に立ち止まった佐藤が俺の名前を呼ぶ。


 きっと、昔の彼女ならこうして想いを伝えることもなかったんだろう。彼女が自分の力で変わったからこそ、今こうして俺に相対しているんだと思う。


 そしてその手助けをしたのはたぶん、俺なんだとも感じる。


 これでやっと、すべてが終わる。俺が昨日から、いや、きっと佐藤がずっと前から悩み続けていたことに、決着がつく。



「――私、水瀬くんのことがずっと前から好きだったの」






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