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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第3章 そして彼女は想いを伝える。
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第39話 そして彼女はようやく気づいた。(成海side)

日付が変わってしまいました。すみませんm(__)m

     ◇◇◇◇◇



「――これからもずっと、友達でいてくれるか?」



 言われて一瞬、戸惑った。


 えっと、つまり、まあ当然に。あたしは振られたんだ。


 水瀬に伝えようとして言ったわけじゃないのに、偶然聞かれてしまって、それで振られた。


 わたしの完全な自爆で、この想いを伝えてしまうことが迷惑にしかならないと思ったから小春の邪魔をしたのに、そのすべてが無駄になったようで彼女に申し訳なかった。


 こんなことなら、自分から伝えようとしていた小春の邪魔なんてするんじゃなかった。好きの言葉を伝えるべきは、小春だった。



「……うん」



 きっとわたしは今、酷い振られ方をしている。わたしの気持ちに答えるでもなく、聞いたことをなかったことにしているような、そんな返事だ。


 でも、ほっとしている自分がいるのも事実だった。


 今までずっと、恋人という一番喜べるポジションではないけれど、それでもなるだけ水瀬と一緒にいたいと、そう思っていた。だから水瀬を好きな想いを心の奥に封じ込めて、当たり障りのない『良い友達』として振舞ってきた。


 それが、今まで積み上げてきたわたしのすべてが、あんな偶発的なことで崩れてしまうんだと悲観していた。きっとこの気持ちを知られてしまったら、今までのままではいられないんだと。



 でも、違った。



 わたしの気持ちを知ってもなお、これからも友達でいたいと言わせるくらいには、わたしの今までに意味があったんだと、そう言ってもらえてる気がした。


 水瀬は、きっとそんなことを考えてはいない。それでも、私はそう感じたんだ。



「世話かけて悪かったよ」

「……まあ、今まで俺が世話になってたし」



 並んで、急な石段を上る。行って、来た道をまた歩く。


 なんだか、吹っ切れた。


 ただ小春には、悪いことをしてしまった。あとでちゃんと謝って、そして彼女を応援してあげよう。


 今まで溜まっていた想いを小春に吐きだして、水瀬に聞かれて、それとなく振られて。案外、悲しいものじゃなかった。


 もしかしたらわたしはとっくに、水瀬のことを友達だと割り切れていたのかもしれない。



「陸上、本当にもうやらないのか?」

「え?」



 突然聞かれて、気の抜けた声で返してしまう。



「家のこともあるだろうけど、やろうと思えば今からだってまたできるだろ?」

「……申し訳ないよ。こんな時期から入部するなんて」



 違う。水瀬はそういうことを言ってるんじゃない。



「違うだろ」

「……」



 そうだ。わたしは、水瀬が――初恋の人がきれいだと言ってくれた陸上が、大好きだったんだ。そのことを忘れるくらい打ち込んで、日課になるくらい生活の一部になっていた。


 陸上をやめたのだって、実を言えば水瀬が藤宮と付き合うことになったと知って、バカらしくなったからだった。


 でも、そうじゃない。そうじゃないはずだったんだ。


 きっかけは水瀬にきれいだと言ってもらえたから陸上が好きになったのかもしれないけど、でも今は、そんなこととは関係なしに、純粋に好きになっていた。わたしが向き合うべきはきっと、自分だった。



「やって……みようかな」

「日向は走っているときが一番生き生きしてるからな」



 走っているところがきれいだとは、水瀬はもう言ってはくれない。


 でも、それでいい。わたしの初恋は、もうとっくに終わってたんだから。


 ちょうど下ってきた小春たちの姿が見えて、水瀬は大きく手を振った。


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