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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第3章 そして彼女は想いを伝える。
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第37話 そして、彼女は想いを叫ぶ。(4)(小春side)

     ◇◇◇◇◇


 この修学旅行中、なんとなく水瀬くんと関わる機会を成海に邪魔されているように感じていた。


 でもそれは本当になんとなくで、どこにも確信なんてなくて、そんなわけがないと、そうであってほしいと思っていた。


 私は、水瀬くんが好きだ。彼に藤宮さんという彼女がいても、例えこの恋が絶対に叶わなくたって、この想いは変わらない。本物だ。


 だから昔の私とは決別して、この修学旅行で告白するんだって決めた。


 誰に宣言したわけじゃないけど、自分の胸に誓いを立てた。


「成海。私……今から水瀬くんに――」

「――させないよ」

「え?」


 最初、成海の言葉の意味が理解できなかった。


 自分の口からこんなに間抜けな声が出るんだと驚くくらいに気の抜けた声が漏れた。


「その想いは、伝わらないよ。どんなに小春が努力して変わったとしても、その恋は叶わない」

「そんなの、言われなくても分かってるよ」


 私がどれだけ変わろうとしたのかも知らないくせに、どうしてそんな酷いことを言うのか。


 私のこの一か月を否定された気がして、こころなしか冷たい口調で返す。


「はっきり言ってあいつにとったら迷惑でしかなくて、あの二人の関係を悪くするかもしれない」

「知ってる」



 そうだ。私は知っている。



 全部分かった上で、それでもこの想いを伝えたいと、伝えなくちゃいけないんだと思ってここにいる。


「でも私は、藤宮さんが転校してくるより前から、ずっと好きだったんだもん。結果がどうとかじゃなくて、この想いを伝えなきゃ、けじめをつけなきゃ、私は前に進めない」



 私は、前に進みたい。



 これまでみたいに何もせずに、自分には何もできないんだと思い込んで、ただ黙ってじっとしているのは、もう耐えられないんだ。


 私の想いを――言葉を聞いて、そして成海は思いつめたような表情で口を開いた。



「――わたしだって小春よりずっとずっと前から、水瀬のこと好きだったよ!」



 きっとそうなんだろうと、途中から気づいていた。


 さっき、私の邪魔をするんだと宣言されて、やっぱりそうだったんだと確信に変わった。


 好きだから、恋敵の邪魔をする。至極真っ当とは言えないかもしれないけれど、私が告白しようとしているのだって藤宮さんからしたら同じようなことだ。気持ちは分かる。



「でも、これは……この想いは、あいつのためにならないんだよ! だから決めたの。わたしは、あいつの友達でいようって。あいつの幸せを壊すことになるかもしれない小春の告白は阻止しようって!」



 しかし続きを――成海の心からの叫びを聞いて、自分の考えが間違っていたということに気づいた。


 成海は私と同じようで、明らかに違った。


 根底には同じ人への想いがあるんだろうけど、でもその形がまったく違う。成海のように思うことは、私にはできない。


 彼女は私のようなエゴではなく、好きな人のためを思って行動している。そのために私の邪魔をしている。


 きっと私よりも優しくて、人間ができているんだと思った。


 でも、私だってこれだけは譲るわけにはいかない。


 もういっそ成海がいたって構わない。このまま、水瀬くんが来たら想いを伝えてしまおう。


 そう、ひそかに心を決めて――。



「ひ、なた……?」

「え……」



 突然現れた水瀬くんと、それに背を向けて走り出した成海を、ただ茫然と視界に捉えていた。




※またイベント用の短編を投稿しました。文芸寄りの1400文字ほどの作品ですが、よろしければ読んでやってくださいm(_ _)m

『いつか、好きだった風景。』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894542932

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