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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第3章 そして彼女は想いを伝える。
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第33話 そして千本鳥居の中を歩く。

     ◇◇◇◇◇


 伏見稲荷への公共の交通機関でのアクセスは最寄りの伏見稲荷駅まで電車で行き、そこから稲荷大社まで商店街を徒歩で十分弱。


 観光地らしい賑わった通りを歩くのも一興ではあるが、今回はタクシーで向かったということもあり、どうせなので稲荷大社のすぐ近くまで乗せてきてもらった。


 ちなみに、タクシー二台への振り分けでは俺、かおり、亮の三人が一緒だった。


「なんか、広いな……ってか鳥居はどこにあんだ?」

「もっと先だよ。心配しなくてもちょっと行けば飽きるくらいたくさんあるから」

「私、ここが一番楽しみだったんだよねー」


 佐藤と日向、それと中野さんがお守りを買いたいというので、三人が戻ってくるのを待ちつつ適当に話をする。


 タクシーを降りてから大きな鳥居は二つくぐったが、あの有名な千本鳥居はもう少しだけ歩いた先にあるのだ。


「そういえば、千本鳥居って言うけど、実際には千本もないんだってね」

「そうなのか? 前にテレビで数千本はあるって聞いたけど」

「なんか、千本鳥居って山にある鳥居全部を指してるわけじゃないらしくてさ。そう呼ばれてる部分の鳥居は七百本とか八百本くらいなんだって。山全体だと数千本以上あるって話だけど」

「そうくん、物知り!」


 こういう『知らなくてもいいけど知っていたらプラスで楽しめる』みたいな豆知識は結構好きだ。


 かおりに褒められてどやっている間にちょうどお守りを買い終えた三人と合流して、先へと進む。


 一応言っておくけど、修学旅行が楽しみ過ぎてわざわざ調べたから知ってたとかでは決してない。


 所々にある緩やかな石の階段をしばらく上っていくと、やがて伏見稲荷大社と聞いてイメージする通りの、真赤な鳥居の群れが目に入った。


「すごい! すごいよ、そうくん!」

「ちょっと亮! 写真撮って! 写真!」


 かおりや中野さんは駆け足になって、他のメンバーに先行する。


 俺たちも歩くペースを上げて二人に追いつくと、ずらっと一列に並ぶ鳥居の写真や、その前でピースをする女子たちの写真、それと全員での集合写真を一通り撮影した。


「これがずっと続いてるんだよね」

「うん。中学のときは時間がなくて途中で引き返しちゃったから、ずっと一番上まで行ってみたくてさ」


 調べたところによると、頂上までは片道一時間弱くらいかかるらしい。


 時折スマホで写真を撮りながら、観光客の流れにのって少しずつ階段を上っていく。


 しばらく行くと千本鳥居と呼ばれている区間を抜け、持ち上げる前に自分が想像していたよりも軽く感じたら願い事が叶うとされる『おもかる石』が置かれている奉拝所に着いた。


 順番に石を持ち上げて、重いだの軽いだの、何を願っただのと騒いでからまたさらに先へ歩みを進める。


 ひたすらに、ただひたすらに鳥居が並んでいる。そんな光景。


 それはおよそ現実離れしていて、だんだんと急になっていった傾斜でもこころなしか足取りは軽く感じた。



「あれ? 分かれ道?」



 二、三度ほどお社を通過したところで、右と左に分岐した地点に出てかおりが言った。


 見晴らしが良くて平地の街並みが一望できるので、ここへ来るまでにだいぶ上ってきたんだと実感させられる。


「あぁ、えっと確か、右回りの方がら――」

「――どうせだし、二手に分かれない? それで誰が最初に頂上に着くか、競争しようよ」


 かおりに説明しようとした俺を珍しく遮って、佐藤がそんな提案をする。


「いいけど……俺は右回りが良いかな」

「そうくんがそうするなら私もー」

「じゃあ私は左回りで行くね。言っておくけど、真剣勝負だからね、水瀬くん。藤宮さんがゆっくり歩いててもちゃんと本気で先に来なきゃダメだよ?」

「え……まあいいけど」


 らしくないことを言う佐藤に戸惑いながらも、流れで了承して二手に分かれることに。


 日向はいつも通り佐藤と同じ左回りで、中野さんは亮と一緒に二人で右回りで行くというので、四対二という微妙な分かれ方をすることになってしまった。


 もしかしたら亮たちは、右回りの方が楽だってことを知っていたのかもしれない。



「じゃあちゃんと手抜かないで来てね! よーい、スタート」



 佐藤はこれまたらしくなく、宣言してフライング気味に駆け出した。



「え……あ、うん」



 妙なテンションの彼女に昨日の出来事を思い出して、それを慌てて首を振ることで掻き消して、俺たちも右回りのルートに足を掛けた。


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