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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第3章 そして彼女は想いを伝える。
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第31話 そしてまたしても彼女は遮られる。

    ◇◇◇◇◇


「水瀬くん、ごめんね。呼び出しちゃって」

「大丈夫だよ」


 班別の自由行動を終えてホテルに戻り夕食と風呂を済ませてから、俺は佐藤に言われた通りメールを送った。


 それからすぐに一階のロビーに来てほしいという返信を受けて、こうして今に至るというわけだ。


 ただ、心配なのはこの状況をかおりに知られないかということだ。もちろん、佐藤は大切な友人だし、浮気とかそういうことなんてこれっぽっちもありえないのだけれど、それでもこんなところに二人でいるところを見られたら、誤解を招きかねない。


 だからといって呼び出されたのを断っても、それはそれで佐藤に申し訳ない。


 かおりの彼氏として正しいことなのかは分からないけれど、生徒会としてそれなりに行動を共にしてきた佐藤に話があると言われたら、聞いてあげたいとは思ってしまう。


 なにより、今日の佐藤はずっとそわそわしていたし、きっとその話とやらをずっとしたくて仕方なかったんだろう。


「それで、話って?」

「うん……」


 いったん深呼吸をしてまじめな顔になる佐藤に、少しだけドキッとしてしまう。



『だってあの子、絶対そうくんに気があるじゃん!』



 いつだったか、かおりが俺に言ってきた言葉が、なぜか頭に浮かんだ。



『――私、ずっと前から好きな人がいるので』



 佐藤が以前、告白を断る口実と言っていたフレーズも、続けて脳内に流れる。


 《《前から》》か。


 なんで急にこんなことを思い出しているのかは、分からない。


 いや、本当は分かっているのかもしれない。


 あのとき佐藤は、《《前から》》と言った。


 眼鏡をコンタクトに変えて、前髪をバッサリ切って、薄いけれど軽く化粧なんてするようになった、それよりも前からということなんだろう。


 あくまで俺の知っている範囲でだが、以前の佐藤が誰かと話しているところを、俺はほとんど見たことがなかった。ほとんど生徒会でしか顔を合わせないレベルの俺が一番話しているんじゃないかと思ってしまうくらいに、周りとの関わりが薄いと感じていた。


 なにをきっかけに佐藤と話すようになったのか、はっきりとは思い出せない。


 けれど――。


 それでも、かおりの言っていたことは、あながち的外れではなかったんじゃないかと、心の中で気づいている自分がいた。


 一瞬とも永遠とも思える数秒が流れる。


 もしもこれがただの自意識過剰なら、思い違いなら良かったのにと、思う。


 でも、この空気は――時間が極限まで引き延ばされているようで、熱くて、寒くて、胸の内が震え上がるようなこの雰囲気は、間違いない。


 自分の考えが正しいと確信できてしまう。


 俺のときもそうだったから分かってしまう。


 告白、だ。


「私ね……」

「うん」


 かおりに言われた通りになってしまって、佐藤にもかおりにも申し訳ない気持ちになる。


 自分が誰かに好かれるなんてことは、ないと思っていた。

 幼い頃を一緒に過ごしたかおり以外に、俺のことを好きになってくれる女の子なんていないと、そう思いこんでいた。


 自分に自信なんてなくて、それを隠れ蓑にして、ずっと向けられていた好意に気づかないふりをしていた。


 きっと佐藤が次に口を開いたら、もう元の関係には戻れない。それでも彼女は、想いで言葉を紡ぐんだろう。


 その決心をして、この場に来たのだから。


 選挙活動で仕事だからとやたら協力なんてしたのは、彼女にとって酷いことだったんじゃないだろうか。想いに気づけるきっかけはいくらでもあったのにそれを無視し続けたのは、怠慢だったのではないか。


 そのせいで佐藤を、より傷つけることになるんじゃないか。


 俺の不安をよそに彼女は力強く俺を見つめ、口を開いて――。



「私、水瀬くんのこ――」



「小春! ここにいたんだ! 星野ほしのが用があるから三階に来てほしいって!」



 まただった。


 再び、突如現れた日向によって言葉を遮られた。



「えっ⁉ ちょっと、今……」

「いいからいいから! ちょっと借りてくよー」



 どうすればいいのか顔を真っ赤にした佐藤を連れて、日向は足早に歩いていく。



「…………」



 佐藤の告白を聞かずに済んだことに、どこかほっとしている自分がどうしようもなく気持ち悪かった。


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