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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第3章 そして彼女は想いを伝える。
119/152

第15話 そして彼女の言葉を思い出す。

少し更新遅れましたm(_ _)m

     ◇◇◇◇◇



「ごめんね。お待たせ、二人とも」



 俺たちが席を外してからほんの数分。気合いを入れてきたという男子生徒はすっかり気の抜けた様子で生徒会室から出ていって、それから佐藤も教室からひょこっと首だけ出してきた。


「佐藤のせいじゃないでしょ」

「ほら、昨日の続きしよ!」


 今日やることは一人分に振り分けられたしおりを表紙と合わせてホッチキスで止めていく作業。ちなみに昨日と一昨日は印刷し終わった各ページを順に並べて、それを一学年分だから……まあだいたい三百セットほど作っていた。


「……今日でなんとか終わりそうだね」

「そうだね」


 ガッシャン、ガッシャン。


 業務用のデカいホッチキスを使って、黙々と冊子を完成させていく。何も考えることもなしに、ひたすら単純作業。


 もっと大人数でやればすぐ終わるかもしれないが、業務用のホッチキスが学校に三つしかないということだったので、それも仕方がない。



 ともかく、リズミカルにガッシャン、ガッシャンと続けること一時間ほどで、ようやくすべてのしおりが完成した。


「ふぅ……終わった」

「疲れた……」

「二人とも、レモンティーでも飲む?」


 魅力的な提案にかおりと声をそろえて「飲む!」と答えると、佐藤は棚の引き出しからお湯を入れたカップに浸すだけのティーバッグを取り出す。


 そんなものがあっただなんて、今の今まで知らなかったんだけど……。

 もしかして茜のやつ、時々一人で仕事を片付けるから残っていくとか言っていたのは、ティーブレイクに興じるためだったのか? いや、さすがにそれはないか。



「はい、二人とも」

「ありがとう」

「ありがと、佐藤さん」


 心の中で実姉に疑いの目を向けている間に、これまた棚から取り出されたおしゃれなティーカップが机の上にトンと置かれた。もちろん中ではお湯にティーバッグが浸されていて、心地の良いレモンの香りがほのかに鼻孔を刺激する。


 生徒会室にずっとあったあのポッド、ずっと何に使うのか気になっていたけれど、今になってようやく分かった。


「あ、そうだ。確かお菓子もあったんだ……」


 いかにも女子受けのよさそうな、恐らく買ったらそれなりにするであろうお菓子がまたもや例の棚から取り出される。


「…………」

「生徒会室ってこんなに快適だったんだね」


 押し黙る俺をスルーしてかおりが嬉しそうに言うと、佐藤は「茜さんが一人で残って仕事をするとき用にいつも置いてたんだって」と答えてレモンティーを啜った。



 ……思いっきり予想通りだった。



「そういえば佐藤さん、最近すごいモテてるって聞いたよ?」


 クッキーの袋を開けながら、かおりがそんな話を切り出す。実際、このところの佐藤は本当にすごくて、二つ隣の俺たちのクラスでもちらほらと話題に挙がっているくらいだ。


「あぁ……えっと、それほどでもない……よ?」

「そんなことないだろ。今日だって放課後だけで二人に告白されてたし」

「それは……まあ」


 ガールズトークっぽいところに一人男が混ざってしまって若干の申し訳なさを感じながらも、恥ずかしそうに頬を掻く佐藤に俺は続けた。


「だいたいさ、どいつもこいつも修学旅行前だからって浮かれ過ぎなんだよ。どうせイベント前に彼女作りたいって魂胆だろ? そこにちょうど良く佐藤がイメチェンしてきたからって外面しか見てないのがバレバレだわ」

「水瀬くん……けっこう言うね」


 おっと。思わずぺらぺらと言わなくていいことまで喋ってしまった。


 佐藤も若干引いているようだ。やめて! 引かないで!


「でも彼女がいる水瀬くんが言ってもあんまり説得力がないかもね。好きな人と一緒に修学旅行をまわりたいって気持ちは私にも分かるしさ」

「好きな人?」


 女子らしく恋バナの臭いを嗅ぎつけ、いち早く反応したのはかおり。佐藤さんはあわあわしながら、「いや、例えばの話だよ?」と目を逸らしている。



 そんな二人のやり取りを見ながら、



『――私、ずっと前から好きな人がいるので』



 なぜだか俺は、さっき偶然にも聞いてしまった佐藤の言葉を思い出していた。


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