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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第3章 そして彼女は想いを伝える。
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第13話 そして口にせずとも想いは伝わる。

     ◇◇◇◇◇



「――で結局、彼女とはなんでまたうまくいってないんだ?」



 本田が恋愛相談を持ち込んできた翌日。昨日の流れのままに、俺たち三人は生徒会室で本田と向かい合っていた。


「それが分かってたらここに来てねぇよ……」


 生徒会室に本田が来てすぐ、彼女と付き合い始めてから二人でどこへ出かけただの、何をしただのと惚気話のようなものを延々と聞かされたが、肝心のうまくいっていない原因については本人にもまったく心当たりがないようだった。


「そもそも、何がうまくいってないんだよ。話を聞く限りじゃ、十分仲良くやってるみたいじゃんか。本田の杞憂なんじゃないか?」

「杞憂……?」

「そう。ただの思い過ごしなんじゃないかってことだよ」

「……そういう意味か」


 いや、大丈夫かよ。来年は俺たちももう受験生だぞ? なんて突っ込んだりもせず、俺は話を続ける。


「具体的にケンカをしたとか、そういうことじゃないんだろ?」

「まぁ……そういうことはないけど」

「じゃあなんでうまくいってないと思うんだよ」


 本田は俺の言葉に少し黙って、それから意を決したかのように答えた。


「……なんか最近、そっけないんだよ」

「と、言うと?」

「いつも向こうから遊びに誘ってくれるのに最近はぜんぜんだし、この間なんてこっちから遊びに誘っても断られたし……」


 自分で説明しながら、本田はどんどんしょんぼりしていってしまう。


 とはいえここまでの話を聞いただけでは、言うほどそっけなくないようにも感じた。ここは女子目線の意見を頂戴するのが吉だろう。


「かおりと佐藤はどう思う?」

「うーん……マンネリ化してきちゃったとか?」

「いや、四か月で?」


 さすがになさそうなので佐藤に視線を送る。


「えっと、本田くん、いつもはむこうから誘ってきてくれるって言ってたけど、普段は自分からデートに誘ったりしないの?」

「……ほとんどしないな。俺は美紅と一緒にいれればどこでもいいから、いつも美紅が行きたいって言うところに行くし」

「それ、ちゃんと彼女さんにも伝えてる? 彼女さん、いつも自分ばっかしデートに誘ってて、あんまり私と遊びたくないのかな……とか思ってない?」

「それは、思ってない……と思う」


 本田は心当たりでもあるのか、何かを思い出したようにはっとした。


 これはおおよそ佐藤の考えが当たっていたのかもしれない。さすが佐藤だ。


「女の子ってコミュニケーションしてくれないと嫌だって思う子もいるらしいからね。自分から手を繋ぐとか、ちょっとしたことで変わるかもだよ?」

「そっ、そのくらいは俺だって……たまにはするよ」


 語尾に近づくにしたがって消え入るような声で、本田は下を向く。


 佐藤の言ったことがもろに思い当たるんだろう。


「と、とりあえずさ、一回彼女とちゃんと話してみたらどう? 口に出さないと伝わらないことって、意外と多いと思うよ。自分が伝わっていると思っていても、実際には伝わっていないなんてこともあるだろうしさ」


 ともかく、と無難な意見を言って、俺は話をまとめた。


 本田は「そう……だよな」と覚悟を決めたような顔で俺たちに礼を言って、生徒会室から出ていった。




「――そうくんも結構いいこというんだね」



 帰り道。


 最寄駅から家まで歩きながら、かおりがそんなことを言ってくる。


 かおりと付き合うようになってから、家から駅までも徒歩で移動するようになった。選挙期間は別々の登校だったから自転車だったけれど、もうここ最近はそれが習慣になっている。


 そんな些細な日常のワンシーンが、当たり前にかおりと隣を歩くこの時間が、俺はずいぶんと気に入っていた。口に出したことはないが、心地よくていつまでも続いてほしいと思っている。



「私、こうやってそうくんと二人で歩くの、結構好きだな」



 かおりの言葉に、思わず目を見開いた。


 かおりも、俺と同じことを思っていたのか。そう考えると胸が熱くなる。



「俺も、好きだよ」

「うん。知ってる」

「…………」



 口に出さなくても、意外と伝わっていることはあるのかもしれない。


 もしかしたら本田と彼女も、心配することなんて何もないのかも……。


 俺はそこで考えるのをやめて、かおりの左手に自分の右手を重ねた。




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