第6話 そして幼馴染の彼女と遊園地へ行く。(3)
更新遅れましたm(__)m
◇◇◇◇◇
「かおり、次はどうする?」
「うーん……もうチェックしといたものは一通り乗っちゃったしなぁ」
俺の体調が戻ってから、軽い昼食を済ませてゴーカートや空中ブランコ、コーヒーカップといったデートっぽい乗り物に乗って回り、もう四時すぎ。
いよいよ乗りたいアトラクションもなくなってきて、次はどうしようかと思考を巡らせる。
「あ、そうだ。お化け屋敷とかいいじゃん」
「え……お化け屋敷なんて、高校生にもなって行かないでしょ」
「もしかしてかおり、怖いの?」
「そんなこと言ってないじゃん!」
「じゃあ決まりだね」
「……むぅ」
反応を見るにかおりはお化け屋敷が怖いようだったので、ここはあえて意見を押し通して行くことにした。
だってなんか、憧れるシチュエーションじゃん。お化け屋敷で怖がった彼女がすり寄ってくる的なあれ。
お化け屋敷の前まで着くと、周りには切断された脚だったり籠に入れられた生首だったりと気持ち悪くなるくらいリアルで不気味なつくりものがいたるところに置かれていた。
『迷宮』と呼ばれる屋敷も禍々しい外見で、一目でかなりのクオリティだということが伺える。
聞いた話によるとここは実際にも元病院だったそうで、記念撮影に本物の霊が写り込むともっぱらの噂だった。
他のアトラクション同様、三十分程度の待ち時間を経て、ようやく『迷宮』の中へと足を踏み入れる。
そういう雰囲気のある暗い廊下をゆっくりと進んでいるところに袖をやたらと引っ張られたので横に目をやると、かおりが早くもぶるぶると震えていた。
「かおり、心配しなくても大丈夫だって。もしものときには非常口があって、途中退室もできるらしいしさ」
「べっ、別に怖がってなんてないしっ!」
強がってはいるが語尾の声が裏返っているので、説得力がまるでない。俺たちよりも先に入ったグループの悲鳴が聞こえてくる度にびくびくしているのもなんとも可愛らしい。
しばらく廊下を進むと明らかに怪しげな、右側の壁が竹藪のようになっている空間が見えてきた。
「……あそこ絶対なにかいるよね」
「まあ、分かっていればそんなに怖くないでしょ」
歩く速度を落としたかおりの手を引き少し左側へと寄って、俺は早足に進む。
『ぐぅあああ!!!』
そしてほとんど予想通りに、ちょうど竹藪の壁の横に俺たちが差し掛かったタイミングで、顔や腕の皮膚が爛れた大男が声を発しながら飛び出してきた。
「ッッギャーーーーー!!!」
かおりはおよそ女の子から出ているとは思えない音量の叫び声で大男の奇声をかき消し、全力で走り出す。さっきまでとは位置関係が逆転して、かおりが俺の前を走る格好だ。
それにしても「ギャー」って。きっと心の底からの叫びだったんだろう。
「……はぁ、はぁ……ここまでくれば大丈夫だよね?」
「……むしろこっちの方がやばそうだけど」
安心しているかおりには悪いけれど、俺は率直に思ったことを伝えた。
全力で大男から逃げている間に、長く続いていた廊下から少しだけひらけた一室に移動していたのだ。
お化け屋敷で病院の部屋と言われて一番に想像するのは、手術室。思った通り、部屋の真ん中には手術台らしきものが散乱した手術具に囲まれる形で佇んでいた。
その上にはお約束のように、手術の失敗で死んでしまった病人なのか、グロテスクに内臓を披露した怪人が仰向けに寝ている。
今いる場所から部屋の出口に向かうには、どうやったって手術台の近くを通らなくてはならない。恐らくさっきの竹藪と同じように、俺たちが近づいた瞬間に起き上がって追いかけてくるのだろう。
かおりは怪人を見るなり、「ヒェッ」とこれまた女子高生らしからぬ声をあげ、今にも泣き出しそうな目で俺を見てきた。
いや可愛いけども!
そんな目で見つめられたって俺にできることはしっかりとかおりの手を握って、励ますくらいのことしかできない。
「かおり、行くよ」
「……うん」
一度大きく息を吐いて、かおりの手を引き走り出す。
『グルァアア!』
ワンパターンだがタイミングを見て怪人が起き上がり、今度は声も出せない様子のかおり。そうなってしまうのにも納得できるほどに、怪人の特殊メイクはリアルだった。
「……もうやだ……外出たい」
一気に部屋を駆け抜けて再び廊下に出たところで、かおりがぼそっと小声で漏らした。
確かにこれ以上はもう、かおりには厳しいかもしれない。
無理にお化け屋敷になんてくるんじゃなかったかなぁ……。
過去の自分を反省しながら、途中退室の非常口を探しながら歩く。
「あ、あった」
【途中退出口 100m 先】
『――ワァアアアア!』
「いやぁあああ!!!」
少し行ったところで緑に光る看板を見つけたが、それから途中退出できたまでの約五分間、数種類の幽霊もどきに追いかけられたかおりの叫び声は、『迷宮』に絶えず鳴り響いた。
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