男と女は悲喜こもごも
朝からひっきりなしに電話が鳴り続けている
しかし、賑やかな割に、当事務所は見入りが少
ない
こちらパートナー苦情処理承り所
社訓は「誠実」迅速丁寧、明朗会計
所長は、わたくし、改ますみ(あらためますみ
)会長は、改ますの(あらためますの)そして
事務員は娘の、改ますか(あらためますか)そ
して家には夫の改マスオ(あらためますお)が
いる
「コンコン」
はい、どうぞ…
お電話でご予約頂いた方ですね
お掛けください
どうなさいましたか?
「はい、浮気をして……」
ご主人が?
「いえ、私が」
「でも、別れたくないと…」
貴女が?
「いえ、主人が」
はい……
それは あなたが凄く
愛されているという事ですかね
「う・・・・ん……」
「別れるのが 寂しいって
言ってます」
「別れたら 新しいパートナーを
作るのはむずかしいって」
「だから……浮気も許すって」
うんうん……ひどく現実味のある
ケースですね……うんうん
で…あなたはどうなんですか
ご主人の事 どう思ってるんですか?
「う・・・・・ん……
あまり…………」
そうですか
「お前は自由だよって…
でも 僕は別れないよって…」
うーーーーん
それはそれは…
どっちかってと あなたは
別れたいのに
たとえ
浮気をしたとしても
向こうは別れないと……
それは かなり面倒ですね
ある意味ぜんぜん自由じゃないですね
むしろ 囚われの身ですね
そうか…男性が必ずしも
他の女性に目がいくわけでもなく
また 直ぐ 付き合える訳でも
ないですしね
現実的なお話ではありますね
………で あなたはどうなんですか
お別れするように
お願いしてみては
どうですか?
「でも…別れて一人で生きて行く
自信もないんです
経済的にきついし」
ほうほう それが割と
決して少なくはない
実態かもしれませんね……
それでお悩みは?
「今んところはないんですが
一人じゃ不安で
聞いていただいてありがとうございます」
いいえ どういたしまして
何もなければいいですね
これから先も
どうぞお気をつけて