1-1 黒の少女
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少しづつ投稿していきますが次話が投稿されている場合、この話も加筆および修正等している可能性がある為、読み飛ばしなどにご注意ください。
ここは少年の住む国とは異なる国。中学を卒業する祝いとして少年は世界遺産に登録されている古城を見に行くため、その山の麓の町に来ている。その町では城へと向かう道に沿って観光客を相手にする出店が並び、毎日、祭りのように賑わっている。
喧騒の中、少年、五木 潤は人混みに揉まれながらも町の中を探索する。
「さすが観光地なだけあってすごい人だなぁ」
道に沿って立ち並ぶ出店、多くの人が住んでいるであろう家の数々。自分の国とは異なる文化の建物を観ながら人の流れに沿って歩いていると何度も出店の店主に引き留められる。これも観光の醍醐味だと思いながら、それらの誘惑を振り切って歩いていく。
潤は目的の場所である。バス停となっている建物の前に辿り着く。
「ここがアリシア城行のバスが出ている建物か。それにしても大きいな」
潤は山を登るためのバスが出ているところとは言えこれは大きすぎないか?と疑問を抱くも、バスに乗る為に中へと入る。
建物の中は広く、中央に噴水、その周りにはベンチが置かれており、バスを待つ人々で賑わっていた。
「えっと、受付は」
あたりを見回すと入り口からまっすぐ奥へと進んだところで行列ができている。潤はあそこが受付なのだろうと思い行列に並ぶ。
行列は時間と共に進み、そう長く待つことなく潤の番が回ってくる。
潤が受付に来ると、受付の女性は笑顔で潤を迎える。
「アリシアバスへようこそ」
受付の女性が笑顔で潤を歓迎した後、
「申し訳ございませんが本日は満員となっておりまして、次のご乗車は明日になるのですが……」
と申し訳なさそうな顔に変わってしまう。
「明日の予約をお願いできますか」
と潤が受付の女性に問いかけると、受付の女性はすぐさま笑顔に変わり、
「ありがとうございます。では、こちらの書類に記入お願いします」
女性は潤の目の前に書類を出してくる。
潤は書類の内容に目を通す。そこには名前と年齢、希望する乗車時間などが書かれており、潤は一つ一つ書き綴って行く。潤が書類を書き終えると、受付の女性は書類に目を通し、ありがとうございます。確認しましたと言ってにこりと笑みを浮かべる。
「では、明日の正午、もう一度こちらへお越しください。お待ちしております」
女性はぺこりと頭を下げる。潤はそれを確認すると受付から離れる。すると後ろから次の方どうぞ。という受付の女性の声が聞こえる。その声を後にしながら潤は建物の外へと歩いていく。
「さて、どこから見て回ろうか。」
建物から出ると出店から漂う食べ物の匂いが鼻をくすぐる。先ほどまでその誘惑を振り切ってここまで来たが故に耐えがたい食欲に襲われる。
「やっぱりまずは食べ歩きかな。町の観光もできるし」
建物の外はどこを見ても何かしらの食べ物を扱った出店が建っている。串物から揚げ物、汁物まで揃っている。
潤はどれにするか迷うな。と出店を見て回る。人混みの中でキョロキョロとよそ見をしていると後ろから歩いてきた人の肩がぶつかり、前へとよろけてしまい、前を歩いていた女性にぶつかってしまう。
青い髪の女性はぶつかってきた潤の方を振り返る。
潤は振り返った女性の冷たい眼に背筋が凍るような寒気を感じ、思わず後ずさりをしてしまい、その後、金縛りにあったように動くことができなかった。
通行人は何事もなく通り過ぎ、出店の店員の声は遠い世界のことのように感じる。まるで長い時間がたったような錯覚を感じた。
「なにか用かしら?」
女性は固まる潤を訝しげに見ながら声をかける。潤はその声を聞いてふっと我に返る。
「え、あ、いや。ごめんなさい、人込みでよろけてしまって」
「そう。なら気をつけなさい。」
そう答えた女性は蒼玉を思わせるような蒼く澄んだ瞳に、幻想的な存在を思わせるような整った顔立ちをしており、潤は思わず見惚れてしまった。
「ふふっ。ぼーっとしていると危ないわよ」
女性は潤の顔を覗き、額をこつんと指で小突く。その眼は先ほどの感じた冷たい眼が嘘だったかのように優しい眼をしていた。
「えっ、いやっ…すみません」
潤は女性の顔が目の前にあることに気が付くと顔を真っ赤にして慌てふためく。
「それじゃあね」
女性はくるりと振り返り、どこかへ歩いて行った。
「綺麗な人だったなぁ。でも……あの眼はなんだったのだろう」
まるで……。
潤はその先のことは考えてはいけないと思い、町の観光を再開した。
現在、執筆途中です。
1話はまだ未完結ですので更新をお待ちください。