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第七話 ステータスを見て聖剣を授かりました。

ギルド編スタート

 時が経つのは早いものだ……。

 魔物達との決戦から七年が経ち、俺も十五歳というこの世界でいう成人になった訳だ。

 七年間、毎日毎日魔王らしさを追求していた。オリジナルの魔王らしい魔法を考えたり、モンスターと戦ったり、服を作ったり、色々な事があった。

 特に服を作るのには時間が掛かった。魔王っぽい衣装の素材を集める為にモンスターの巣窟や黒竜との対決、宝石採取に手芸の稽古を一年以上していた。

 そのおかげで一週間ほど前、やっと完成した!


 黒宝鳥(こくほうちょう)というモンスターの羽で作ったマント、黒竜の皮を使った手袋に、骨を使った首飾り、夜空王(やぞらおう)ウルフの毛皮を少し貰って作ったパーカーっぽい服にゴブリン達がくれた皮ズボンを装着し、わざわざモンスターの巣窟まで行って手に入れた特殊な鉱石で指輪などを作った。


 指輪にもそれぞれ効果があるんだが、それは追々話していこう。

 髪以外のすべてを黒系統の色でコーデした完璧な魔王ファッションに身を包んだ俺は、恐らく誰から見ても魔王に見えるだろう。

 本当は髪も白から黒に染めようと思ったが、お父さんやお母さんに悪いので止めた。

 前世だと、こんな格好で歩いていたら職務質問という厄介な結界に一日二回ペースで捕まっていたが、この世界では職務質問がない。

 良い世界だ。


「【鑑定:ステータス】」


 俺は鏡で自分の魔王らしい恰好に惚れ惚れしながら、無属性魔法【鑑定】を発動した。

 つい先ほど思ったのだが、今の俺はどれほどの強さを保持しているのか。

 自分の強さを数値として表すことで補わなければいけない部分や得意な部分が見えてくるはずだからな。



~~【ライト・コレクト】~~


体力:長生きするよ


魔力:すごいよ。マジで、すごい。


攻撃力:まぁまぁ強い


防御力:そこそこ硬い


俊敏性:村一番


運:がんばって……。


~~~~~~~~~~~~~~



 __は?

 俺は目の前に浮かび上がる意味不明としか言えない文字列に絶句してしまう。

 俺の知っているステータスの表示と違う、俺が本で見たのはもっとこう数字が浮かび上がって正確な情報をくれるものだったはずだ。

 なのになんだこれは……



~~【ライト・コレクト】~~


体力:長生きするよ

「手相占いかっ!?」


魔力:すごいよ。マジで、すごい。

「どういうことだよ!?」


攻撃力:まぁまぁ強い

「おう……」


防御力:そこそこ硬い

「確かに……」


俊敏性:村一番

「そうだけど……」


運:がんばって……。

「何をッ!?」


~~~~~~~~~~~~~~



 魔王らしさを忘れて突っ込んでしまった。

 なんだ、なんなんだこの曖昧としか言えないステータスの表示は……。

 ん、下にも何か書いてる?



~~~~~【スキル】~~~~~


スキル:色彩変換(しきさいへんかん)

『魔法の色を変えれます』


スキル:勇者

『勇者に与えられるスキル。闇属性以外の魔法をすべて使う事が出来る』


スキル:願望

『願いが強ければ強いほど効果増幅。全ステータス強化』


~~~~~~~~~~~~~~~



 スキルか……これは普通だな。

 なんだか、知らないスキルが一つあるが要は夢を追えば追うほど強くなるってスキルだろう。

 問題はステータスだ……なんだこの適当さ、こんなもの鑑定しなくても分かるだろう。

 俺は肩を落としてため息を吐いた。


「ライトー。成人の儀に行くわよー」


「あぁ、今向かう」


 お母さんから呼ばれた。

 俺は立ち上がり気を取り直して、お母さんの元まで向かう。

 《成人の儀》は、文字通りではあるが成人になると受ける儀式の事だ。

 簡単に言えば成人式。神様に私は成人しましたよと伝え、これから切磋琢磨(せっさたくま)働くので見てくださいと言いに行くだけだ。

 魔王が神様に見ていてくださいと言いに行くのは可笑しいかもしれないが、俺はこれでも儀式などは大事にしている。

 だって、かっこいいじゃん……儀式って。


「本当にその格好でいくの?」


「なんだ……神に挨拶に行くのであるなら、それ相応の格好をするのは当然であろう?」


「ライトがそれでいいならいいけど」


 この恰好、どこからどう見ても正装だろう……魔王として。

 因みに、今日同伴するのはお母さんだけでお父さんは仕事だ。

 村の教会まではうちから近いのですぐに着いた。

 教会の前に神父さんが立って、俺達を待っていてくれた。


「お待ちしておりました。ライト様……」


「あぁ、待たせてすまない。早速始めよう」


 ここからは神父さんと俺以外が協会に入る事は出来ない決まりらしい。

 理由はよく分からないが、神様に会う時は出来るだけ少人数でなければいけない規則なのだと。

 しかし、教会の前を通る事くらいはあるが協会に入るのはこれが初めてだな。

 意外に薄暗いく、カビ臭いんだが、掃除をちゃんとしろよ。


「それでは祈りを捧げましょう。跪いて、深呼吸をして、神を信じましょう。そして私に続いて言うのです。我らが主よ」


「我らが主よ」


 俺は跪いて手を合わせ、瞼を閉じる。


「私は労働の全てを捧げましょう」


「私は労働の全てを捧げましょう」


「誓いの言葉をここに」


「誓いの言葉をここに」


 意外とあっさりしたものなんだな。

 まぁ神への誓いなど、このようなものなんだろう。


「あばばばば、あばば、あばばば」


「は?」


「ライト様、しっかりと私の言葉に続いてください」


「あ、あぁ……」


 俺は目を開けて神父の顔を見るが、真剣そのものだし、ふざけている感じはしない。

 つまり、この世界ではあのアホみたいなものが誓いの言葉なんだろうな。


「あばば、あばばば、あばばばば」


「違います。《あばばばば、あばば、あばばば》です」


「あばばばば、あばば、あばばばば」


「最後のばが多いのですよ。この言葉には皆の幸せを願い、自分の幸せを願い、困難に立ち向かう時に力を貸してくださいという意味があるんですから、間違えないように」


 どんだけ素敵な意味が詰まってるんだよ!

 全文あばばばだけなのに、この言葉のどこにそんな意味が詰まってるんだ!

 いや、神に対する言葉なんだから俺には理解できない次元の言葉なんだろう。


「あばばばば、あばば、あばばば」


「はい、完璧です。これにて成人の儀は終了ですが、少しここで待っていてください」


「ん、あぁ」


 神父が協会にある奥の部屋に入っていった。

 にしても、渡す物? 協会に忘れものをした記憶はないし、もしかして成人祝いみたいなものか……。

 前世では成人式に参加できなかったし、成人の祝いを貰うのは初めてだ。


「お待たせしました。それではお受け取りください」


「ん、あぁ」


 神父は薄汚れた布に包まれた細長い物を持ってきて、俺に渡した。

 受け取ると中々の重みがある事に気づき、これが金属である事が分かった。

 気になり、行儀が悪いかもしれないが布をずらして中身を見る。


「剣か……?」


「ライト様が成人を迎えた時に渡すようにと神より預かった《聖剣》です」


「あぁ、なるほど聖剣ってえぇ!?」


 俺は布を乱暴に剥いで、剣の全貌を見る。

 剣は鞘に収まっており無駄な装飾などがなく、見た目は普通の剣だが白い魔力が滲み出ている。

 まるで蒸かしたお芋の様だ。


「【鑑定】」


 俺は本物の聖剣かを確かめる為に、鑑定を使った。



〔聖剣〕

・神に作られた聖剣。

・全ステータス超大幅アップ(運以外)

・バフ・デバフ無効。

・光魔法強化。

・慈悲を持って切った相手の傷をすべて癒やす。

・威力《山を二つに割れる》

 -使用方法-

・鞘から聖剣を抜きましょう



 ほ、本物だ。何だこのとんでもない能力は……全ステータス(運以外)ってそれはもう全ステータスじゃないじゃないか!

 威力も山二つを割れるだと……とんでもなさ過ぎるだろう。

 なんだったんだよ、これまでの俺の努力は……。


「鞘から聖剣を抜けるのは真の勇者のみです。試しに抜いてみてください」


「……あぁ」


 俺は鞘から聖剣を抜いた。


「なっ!?」


 鞘から聖剣を抜いた瞬間、大量の白い魔力が鞘の中から刀身と共に出てくる。

 白い魔力は俺に纏わりついて、俺は自分の能力が上がっている事が感覚だけで理解できた。

 ん、なんか声が聞こえる?


「__やっと」


 誰だ。これは女性とも男性とも言い難い中性的なものでどこから聞こえてくるのかも分からない。


「__やっと、抜いたのですね。お待ちしておりました」


 抜いた? お待ちしておりました? ってまさか!

 俺は手に持っている聖剣を見る。


「__そうです。今、あなたに語りかけているのは私でっ」


「仕舞おう」


 俺は一旦聖剣を鞘に戻した。

 だって、どう考えたって聖剣が喋りかけてくるなんて怖い。

 剣は無機物で喋らない物と認識して暮らしてきたんだから、受け入れられないのかもしれない。

 取りあえず、家に帰ってからもう一度抜こう。


「しっかりと抜けた様ですね」


「ん、あぁそうだな」


 神父には何も聞こえなかったのか、反応はほとんどない。

 なるほど、俺にしか聞こえない声か……こわっ。


「用も済んだ……。我は家に帰るぞ」


「はい、これからの貴方の人生に幸多からんことを。あばばばば」


「あ、あぁ、感謝しよう。あばば」


 俺は聖剣を布で包んで持って帰る。

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