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第六話 目が覚めて部下が出来ました。

 ……知っている天井だ。目を覚ますと、村にある治療室に居た。


「お、起きたか!?」


「ライト! 大丈夫!?」


 お父さんとお母さんが物凄く心配した顔で俺に聞いてくる。

 この反応からして、俺はかなり長い間寝ていた事が分かった。


「大丈夫だ。少々頭が重いが、すぐに治るだろう」


「良かった……」


 母が安堵のため息をつく、いつもお気楽な母のこんな顔は初めて見た。

 それだけ心配させてしまったという事だろう。父も目の下にクマができている。


「心配をかけてすまない」


「全くだ……」


 しばしの沈黙。


「生きていてくれてありがとう」


「!……あぁ」


「一人の時間が欲しいか?」


「いや、大丈夫だ。我が寝ている間の話をしてくれ」


 これ以上、時間を無駄にしたくない。それに、一人の時間なら寝ている間に“死ぬほど”あった。

 実際に死にかけたわけだしな。

 お父さんの話は思っていたよりも長かったから要約させてもらう。

 まず、俺が寝ていたのは三日ほど、なぜか俺は明け方に村の前で倒れていたらしい。

 俺が見つかった後日、王都から魔導師が訪ねて来て師匠の遺体を見つけて持って帰った。

 魔導師は師匠が手配していたようで、もしもの時のためだったそうだ。

 魔導師達は俺の事も連れて行こうとしたみたいだが、お母さん達や村の人達が守ってくれたようだ。

 まぁ、元最高峰の魔導師である師匠を倒した魔物を倒したんだから、俺の事が気になるのも仕方ない。

 勇者の存在を知っているのは国でもごく一部の人間だけだからな、勇者ならありえない話ではないが一般人の子供が魔物を倒したとなれば気にならないわけがない。


「分かった。やはり、師匠は死んでしまったのだな」


「ライトの所為じゃないわ。だから……」


「大丈夫だ。もう、解決している」


 気にしていないと言えば嘘になるが、これからどうするかは考えている。

 師匠に言ってしまったからな。俺は『絶対魔王になる』ってな。

 自分の三日前とは明らかに違う魔力保有量を感じ取る。

 これだけの魔力を保有していれば、上級魔法を10発は余裕で発動できるだろう。


「少し、歩いてもいいか?」


 お父さんとお母さんは心配していたが、今は外の風に当たりたい気分なんだ。

 外に出て村の中を歩いて回る。三日で何かが変わるわけも無いが、変わらない風景に安心する。

 立ち眩みも無いし、歩くのは大丈夫だな。


「……誰だ?」


 しばらく歩いていると後ろから気配を感じた。


「ギギッ! す、すみません! お久しぶりですライト様!!」


「ゴブリンか?」


 振り返るとそこにいたのは三日前に戦った魔物の一匹であるゴブリンだった。

 あ、そういえばゴブリンに忠誠を誓わせたんだったな。すっかり忘れていた。

 逃げていると思っていたんだが、案外こいつらの忠誠心は高いのかもしれないな。


「我々は貴方様のお目覚めを待っておりました」


「我々……貴様ら、今どこに住んでいるんだ。もしや、村人に紛れているのか?」


「いえ、近くの森の中に集落を作り暮らしております。ライト様に迷惑を掛けるような事はしておりません」


 本当に感心するほど忠誠心が高いのだな。


「別に、逃げても構わなかったんだぞ?」


「いえ、我々は貴方様のお力に感服しました。貴方様が倒れた後、全員で話し合った結果です……。もしや、それこそが迷惑だったのでしょうか?」


「いや、貴様らの気持ちは分かった。我が貴様らに忠誠を誓わせたのだから、責任は取ろう」


「責任など滅相もない! 貴方様はただ我々にご命令を出せば、我々はそれを完遂するのみでございます」


 う、うわぁ、重たいな。思っていたより忠誠心って重たいんだな。

 それにしても、力を見せただけでここまでの忠誠心を見せるとは魔物社会は力の強い者が正義なのか?

 あぁ、胃が痛い。魔王を目指している以上、いつかはこうなるんだろうが流石に重役は荷が重いな。

 まぁ、こいつらに協力してもらえば色々と便利な事が多いだろうし、これは俺が自分からしょい込んだ重荷だ……頑張ろう。


「ん、もしや、倒れた我を村まで連れてきたのは貴様らなのか?」


「はい……しかし、村人に見つかっては怯えられると思い村の前に放置する形になってしまいました。申し訳ございません!!」


「いや、感謝しよう。大儀だった」


 こいつらが村の前まで運んでくれなかったら、俺は魔導士に攫われていた危険性があった訳だ。

 まさか、ゴブリンや悪鬼(オーガ)に助けられる日が来るとは夢にも思っていなかった。


「ありがたきお言葉……」


 本当にうれしそうな顔をするゴブリン。

 なんだか、可愛く見えてきてしまった。


「今日は行けないが後日、貴様らの集落に行かせてもらう……。あ、あと、我の事はアスラと呼ぶようにしろ……」


「了解しました。皆にもそう伝えておきます」


「頼んだぞ」


「はっ!」


 俺はその場から立ち去る。

 部下が出来たのは前世を含めても初めての経験だ。

 緊張で胃がキリキリしてくるし、考えることが一気に増えた気がする。

 まぁ、とりあえず……今日からまた魔王を目指そう____

次回、青年期編

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