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第五話 悪魔に遭遇して三途の川へ

「__何ッ!!?」


 ベルゼは驚き、目を見開いている。しかし、それも仕方ないだろう。

 見た目、幼い少年に圧倒されているのだから……。

 殴る。殴る。殴る__。

 槍を投げる隙など与えずに、防御の隙など与えずに、反撃の隙など与えずに殴り続ける。

 無属性魔法【強化】で身体を強化し、只管(ひたすら)に殴り続ける。


「何をしているお前ら! 早くこの勇者に攻撃をしなさい!!」


 ベルゼがゴブリン達に命令をするが、ゴブリン達は俺に攻撃をしようとはしてこない。

 ここでもし俺を攻撃して倒したとしても、次はベルゼに殺されてしまうと、こいつらは分かっている。

 そして先程、自分たちをゴミ呼ばわりしてきた奴の味方をする者はいないだろう。

 流石悪魔としか言いようがない硬さ、殴っている俺の拳から血が流れ出てくる。

 だが、俺の目的はベルゼにダメージを与える事じゃない。


「終わりだ__【死神の一方的取引デスハンド・トランザクション】」


 【死神の一方的取引デスハンド・トランザクション】は自分以下の魔力量の相手にしか発動する事が出来ない。

 だから、俺はベルゼを殴り続け防御で魔力を消費させ魔力量を消費させた。

 今のベルゼと俺の魔力量は同じくらいだが、若干俺の方が多い状態だ。

 つまり、【死神の一方的取引デスハンド・トランザクション】の発動条件が整った。


 __【死神の一方的取引デスハンド・トランザクション


「なっ、体が動かない!?」


「安心しろ。一瞬の苦しみしか与えない」


「き、貴様っ! 何をした!!」


 流石悪魔というだけあってか、こいつの魔力は凄まじい。

 これなら大きな爆発が起こせそうだ。いや、氷漬けにして砕いてしまってもいい。

 まぁ、この勝負は俺の勝ちだ……。そんな訳ない。

 師匠を殺された時点で俺の負けでもある。死ぬか生きるかの戦いで死が出ない訳ないと分かってはいたが……。涙を堪える。

 彼女の時ほどではないが、胸が痛く喉が熱い。


「なっ、貴様!! 何をしている……! 熱い、熱い熱いあつッ____」


「__ごめんなさい……」


 べルゼの体内にある魔力をすべて火に変換すると、ベルゼは体内から弾け飛ぶ。

 肉片が飛び散る悍ましい光景。俺は師匠の仇に対して謝ってしまう。

 この世界に来て涙を流したのは、生まれた時以来かも知れない。

 頭がくらくらしてきた。可笑しい、魔力はまだ尽きてないはずなのにな__



 ★ ☆ ★ ☆ ★



 気が付けば川の前にいた。

 これが三途の川か、と思ったが一向に案内人が来ないし、川辺で石を積む子供たちもいない。

 あ、そう言えば俺って八歳だから石を積む側なのか……。


「やぁ、君」


「ん?」


 後ろから声を掛けられて振り向く、そこには見たことのない顔付きの整った男が居た。

 男は、白いローブに木の杖を装備し、エメラルドを思わせるようなエメラルドグリーンの瞳に、瞳と同じくエメラルドグリーンの髪をしていた。

 こんなイケメン今まで見たことがない。なんかむかつくな。


「お前さんみたいな若者がなんでこんなところに居るんだい?」


「さぁな、俺も死んではいないと思うんだが……」


「死んでないのにここに来たのかい。親不孝だね」


「確かにな」


 若者と言ってくるお前も二十代前半くらいだろうと思うが、この男から感じる雰囲気は二十代のそれではなく、まるで師匠といる時の様な感覚だ。

 それにしても、本当になんで三途の川なんかにいるんだろうか。

 魔力も切れてなかった、傷も掠り傷程度だった、死ぬ理由はないだろう。

 まさか、槍に毒でも仕込まれていたのか?


「魔力の過剰所持じゃろうな」


「……なんだいきなり」


「お前さんの死んだ理由だ。いや、仮死状態と言った方がいいんだろうな。最上級魔法は相手の魔力と自分の魔力を透明な糸で繋いで操るというものだ。それはつまり、相手の魔力を一時的に自分の魔力にするという事……。相手の魔力が少なければ問題はないだろうが、悪魔の魔力を子供であるお前さんが受け止めきれるわけなかった、というわけじゃ」


 その通りだ、としか言いようのない回答を言われてしまった。

 確かに、子供である俺に悪魔の魔力は量が多かった、減らしてはいたがそれでも俺より多かったのか……。

 半分以下にしたつもりだったんだが……頭に血が昇って見誤ってしまったな。


「にしても師匠……。若い頃はイケメンだったんだな」


「お、やっと気づいたか」


 最上級魔法の事を知っているのは俺と師匠だけだからな。

 にしても、なんで若返ってるんだ。イケメンなのムカつくし。


「イケメン? かっこいいという事じゃな! そりゃそうじゃ、昔は道を歩けばおなごに黄色い声援を飛ばされてたんじゃぞ」


「ムカつくな」


「お主もそこそこだと思うぞ?」


 お世辞はいい、前の世界でも恋人はおろか友人すら一人しか出来なかったんだ。

 この世界に来てからも、友人など出来たこともないしな。


「……死んだんだな」


「老いには勝てぬという事じゃ。悲しいか?」


「正直」


 悲しくない訳がないだろう。師匠とは付き合いこそ短いが親の次に慕っている存在なんだ。

 それが、あっさり死にやがって……。お礼の一言すらいえないじゃないか。

 なんで、俺の周りの奴は俺から離れた場所で死ぬんだよ。ふざけるなよ。


「実はな、わしは自分が死ぬのが分かってたんじゃ」


「……どういう事だ?」


「最初に未来予知で見たのはわしの死じゃ」


「何故……逃げなかった」


「お前さんは優しすぎる。見とったぞ、魔物をほとんど殺さんかったじゃろ。その優しさは尊いものじゃが、同時にお前さんを破滅させる。わしの死をもって優しさに分別を付けさせたかったんじゃよ」


 っ、つまり師匠は、俺の為に死んだというのか。

 俺は怒りのあまり、体を震えさせた。何が、何がわしの死をもってだ!

 それなら、一からでもいい。言葉で教えて欲しかった。

 死んでなど、欲しくなかった。


「元々、わしの死期は近かった。ならば、お前さんの為に死のうと……孫の様に思っとるお前さんの為に死のうと思ったんじゃ。じゃから、わしが死んだのはお前さんのせいじゃない」


「うっ……うぅ……」


「じゃから、泣くな愛弟子よ」


 涙が止まらない。師匠が頭を撫でてくれる。

 大切な人の死が、俺の涙腺を可笑しくする。泣き止もうと必死に堪えるが、涙が止まらない。

 ごめんなさい、と心の中で何度も言う。師匠は俺のせいじゃないと言っているが、俺がもっと強かったらこうはならなかった。


「安心せい……。お前さんには、これから沢山の大切なものができる。わしよりも大切な者もあらわれるじゃろう。じゃから、泣くな……お前さんの行く末は明るい、眩いばかりにな」


 師匠に抱きしめられる。優しい包容だ。そのせいで余計に涙が止まらない。


「お前さんは魔王になるんじゃろ。あの世で楽しく見させてもらうぞ……」


「あぁ、なってやる……。絶対に、絶対にだ……」


 涙が溢れ、鼻水が詰まり上手く喋れない。


「お前さんに最後の贈り物じゃ……。王国魔導士マージ・ハマル全盛期の魔力じゃ」


 師匠がそう言うと俺の体は白い靄に囲まれる。俺の魔力所持量が感覚だけで分かるほど増えていく。

 今までの倍、2倍、3倍以上だ。これが、師匠の魔力……。

 王国で、最高の魔導士である師匠の全盛期の力……。


「夢を諦めず、追い続けるんじゃぞ……。お前さんなら叶えられるからの」


「あぁ、もちろんだ……。だから、しっかり見ておくんだぞ。師匠__」


 視界が暗転する。

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