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第三話 免許皆伝と決意前夜

 魔法の修行も今日で二年目。早いもので俺も八歳になった。

 師匠の修業は厳しかったが、それなりに楽しみながらやれた。

 最上級魔法を覚える為にモンスターだらけの洞窟に放り込まれた時は流石に死ぬかと思ったが……。まぁ、生きてられた。

 そして今日、大事な話があると師匠に呼び出されて、師匠の家まで来た。


「__ライト」


「なんだ。師匠」


 目の前に座っている師匠は今までになく神妙な面持ちだ。

 もしかしたら、禁断の魔法とかを教えてれるのかもしれない。

 破滅の魔法とか忘却の魔法とかがいいな。カッコいい。


「正直な話をしようと思うのじゃ。本当は数ヶ月前に言おうと思ってたんじゃが、ここまで引き延ばしてしまった」


「なんだ?」


 数ヶ月前、確か俺が最上級魔法を習得した頃だな。


「正直、わしがもうお前さんに教えられることはない。免許皆伝じゃ」


「……なっ」


 免許皆伝。いや、確かにここ数ヶ月は今までの修行をやり直していただけだったが、まさかたったの二年で終わりとは……。

 正直、呆気ないと感じてしまう。


「お前さんは天才の中でも特に異質じゃ。教えたことはスポンジのように全て吸収するし、わしも使えない光属性魔法使うし」


 この二年の修行中、光属性魔法について教えられたことがほとんどなかったのはそのせいか……。可笑しいとは思っていた。


「わしでも習得に十年以上かかった最上級魔法を二日で覚えるとかなんじゃ。嫌味か?」


 ここは素直に謝っておこう。


「天才ですまない」

「謝罪されながら貶された気持ちになるのは初めてじゃ」


 まぁ、俺は時期魔王だしな。そこら辺の天才とはわけが違う。

 師匠は確かにすごいと思う。【火】【水】【風】【土】の四属性を使いこなし、魔法の知識も本にしたら数百冊分だろう。

 だが、俺の方が強い。無慈悲なまでにな。


「じゃが、実はもう一つだけ修行がある」


「ん、なんだ?」


「いや、これは修行というより《試練》じゃな……」


 試練。なんだそれはカッコイイじゃないか!

 師匠は「ついて来なさい」と言って、立ち上がる。

 どこに向かうのかと思えば、俺が魔法を独学で学んでいた頃に使っていた川辺だ。ここに来るのも一年ぶりくらいだ。

 魔法を学んでいる間は独学で何かをやるのはやめていた。


「ライト、お前さんスキルというものを知っているか?」


「スキル? なんだそれは」


「スキルは魔法とは違う異能の力じゃ。たとえば【未来予知】やお前さんの【勇者】がそれじゃな」


 勇者ってスキルに入るのか。というツッコミを喉奥に押し込めて、話を聞く。

 つまり、スキルは超能力のようなものって考えでいいんだろうな。


「そして、わしもスキルを持っている。そのスキルは【未来予知】じゃ」


「……それは、恐ろしい能力だな」


「とは言っても、三日以内に起こることを一つ知ることができるというだけのものじゃがな」


 それだとしても、未来を予知するというのは危険を回避したりするのに役立つだろう。

 敵と戦う際に敵の情報を手に入れられるというのは凄まじい。もし、俺が使えたら無敵になれるかもしれない。


「それで、いきなりこんなことを言うのはなんじゃが。この村に魔物の軍勢が押し寄せてくる。千体ほどな」


「……は?」


 千……。一瞬冗談を言っているのかと思ったが、師匠の目は本気だ。

 きっと、近いうちに千体の近くの魔物が村に来るのだろう。

 数か月前、最上級魔法を使えるようになるために百体近くのモンスターと戦ったが、それでも死にかけた。

 千体。それもモンスターではなく知識のある魔物。


「狙いはお前さんだ。恐らくじゃが、魔王に貴様が勇者であるとバレたのだろうな」


 俺自身は認めていないが、俺が勇者であることは事実だ。

 だが、その情報は村の者も知らない。知っているのは家族と一部の人間だけだ。

 外部に口外していないのは、師匠の言った状況が起こらないためだ。

 しかし、なんでかは分からないが俺が勇者であることが魔王に知られてしまった訳だ。


「……ふっ、丁度いい。我は村を出て行くとしよう」


「な、何を言っているんじゃ!?」


 このままでは村に被害が出てしまう。それは確定だろう。

 俺は時期魔王だ。そんな魔王の生まれ故郷が無いだなんて許されないだろう……。

 それに、俺は恩を仇で返すような事はしない主義だ。


「免許皆伝なんだろう? それならば我は次の高みを目指す……。この村に居ても、これ以上の高みは目指せんだろう」


「お前さんはどれだけ優しいんじゃ! まだ指の数ほどしか生きていないお前さんに、なぜこんな試練が課せられるんじゃ!!」


 顔に怒りを表し、叫ぶように言う師匠。

 優しいのは師匠の方だろう。俺は優しさでこの村を出るんじゃない。

 これは一種の義務なんだ。魔王になるための義務。

 時として、親や故郷から離れられない魔王など、魔王とは言えないだろう。


「そんなに怒るな。寿命が縮むぞ?」


「ライトよ。わしと共に戦おう」


「は……? 何を言っているんだ」


「今のお前さんには、帰る場所が無くてはいけない。わしとお前さんなら、魔物千体にも勝てるかもしれんじゃろう」


 師匠の実力がどの程度なのかは分からないが、確かに俺一人で戦うよりは勝算があるだろう。

 それに、俺がもし村を離れたとしても魔物達は村まで来るだろう。その時、俺がいなければ魔物達は村を襲い俺の居場所を聞き出すかもしれない。

 俺としたことが、焦って冷静に判断できていなかった。


「だが、勝算はほぼゼロなんじゃないのか?」


「いや、相手はわしが【未来予知】で先に情報を手に入れているなんて考えもしないだろう」


「……確かに、攻撃でも我らが先手を取れるな」


「そう、じゃから罠を用意しておく」


 そうか、罠か……。少々卑怯な気もするが、今はそんな事を言っていられないな。


「分かった。その代わり、村から離れた場所に行こう」


「あぁ、分かった」


 俺と師匠は魔物を迎え撃つ準備を開始した。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 作業開始から、一日が経った。

 三日以内という短い期間だから突貫作業になったが、思ったより上手くできた。

 決戦の場所は、よく師匠と修行をしていた草原だ。半径三百メートルほどの草原、木は一本も生えていない。

 修行で慣れている分、こちらに有利だろう。

 村からも山二つほど離れている為、被害も出ない。


「うむ、恐らく明日の夜じゃろうな。お前さんとわしが魔物と戦っているのが見えたぞ」


「明日か……」


 未来予知で明日の夜、ここで戦う事が決定した。

 少々不安はあるが、勝算がゼロじゃないのが心の支えになっている。


「そう言えばお前さん」


「ん……?」


 草原の中心に寝そべり、休憩を取る。


「魔王になると昔から言っておるが、本気か?」


「……あぁ」


 前世、この質問は飽きるほどされた。

 『魔王になるとかマジかよ~』とか『その年で厨二とか引くわ』とか飽きるほど言われてきた。

 いや、傷ついてなどいない。本当に。少ししか……。


「そうか。お前さん、魔王になって何がしたいんじゃ?」


 魔王になる理由か。昔は、彼女の為にと思って目指していたが。いや、根本的な部分では今も昔も変わらないな。

 確かに、彼女の為というのが第一の理由ではあったが、それは彼女の夢に賛同したからだ。

 賛同したという事は、俺は心のどこかで彼女と同じ夢を見ていたという事……。

 ならば、彼女の夢そのものが俺の夢である。なら、彼女と同じことを言えばいい。


「皆を不幸にさせない世界を作る。笑うか?」


「……ふっ、あぁ、笑ってしまうな」


 まぁ、仕方ない。魔王になりたという奴の願いが世界平和だなんて、笑い話でしかないだろう。

 少し悲しいが、この夢を真面目に聞いてくれるのは彼女くらいだろう。


「そんな綺麗な夢。見るのが楽しみで笑ってしまうわ」


「え……っ」


「お前さんらしい、いい夢じゃな。その夢が叶うのを見るのが、今から楽しみで笑ってしまうわ」


「馬鹿に、しないのか……?」


「ん、なぜじゃ? お前さんには、それを出来るだけの力があるじゃろう。わしは絵空事ではない夢を笑わんよ」


 彼女以外で初めて俺の夢を否定しない人間を見た。前世では誰も認めず、笑った夢を……

 嬉しい。笑みがこぼれる。俺の夢が否定されない。

 それは、彼女の夢が否定されなかったという事だ。


「我が魔王になったら、師匠には豪邸を買ってやる」


「ははは、職権乱用じゃな!」


「ふふ、確かにそうだな」


 決戦前夜。俺と師匠は語り合った。

 次の日に決戦があると分かってはいたが、楽しかった。

 これまで話せなかった事を、聞いてくれる相手がいる。それが嬉しい。

 こんなに話の分かる相手なら、もっと話しておくべきだった。

 いや、これからも話す機会はいくらでもあるか……。


 決戦前夜。俺と師匠の声が平原に広がる。

 涼しい風が気持ちよく、月明かりが心地いい。

 気持ちが向上してるから言えるセリフだが、明日は……


 __絶対に敗北しない。



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