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第九話 馬車に乗っていたら竜に襲われました

 王都までの道すがら、数日かけて歩いていくつもりだったが丁度王都に行く馬車に乗せてもらえることになり、今は馬車の中でくつろいでいる。

 馬車には俺以外にも数人乗っているが全員が腰に剣を装備し、見ただけでもわかるほど強い。

 説明が難しいが体から漏れ出ている魔力の質が一般人とは違い、ゴブに少し劣るくらいには強いだろう。

 いや、奥の席に座っている白いローブの奴……あの人は桁違いだ。

 黒い魔力なんて初めてみたが、もしかして闇属性魔法の使い手か……?


「【鑑定:ステータス】」


 小声で呟き、悪いと思いながらも白ローブの人のステータスを見る。


体力・普通 魔力・普通 攻撃力・殴ã£ãŸæ‰‹ãŒç—›ã„ 防御力・ã†ã•ãŽã•ã‚“ 俊敏性・逃ã’足早゠é‹ãƒ»ãŠç–²ã‚Œæ§˜ã€‚


 え……読めない。

 ステータスの文字が浮き出てきたが、文字化けの様な状態になって読む事が出来ない。

 白ローブの人が、こちらに顔を向けて微笑んできた。

 白いローブから見えた顔は女性のもので、可愛いという言葉が似合う柔らかい顔立ちに長めの黒髪をした女性だ。

 年も俺とさほど変わらないように見えた。


 __ヒヒーン!!


 馬車が急停止する。


「うわっ!?」


「な、なんだ!」


「もしや、モンスターの襲撃!?」


 咄嗟の判断で馬車に乗っていた俺と白いローブの女性以外の人が馬車から飛び出した。

 俺はそれどころではなく、女性から目を離せなかった。

 この世界に来て二人目の俺と同等かそれ以上の実力者との遭遇、それも俺とほぼ同い年の少女だ。

 そして、体から漏れ出ている禍々しいと言う他はない黒々しい魔力。


「あなたは外に出ないの?」


「え、あぁ、今出ようと思っていた」


「そう、私も」


 優しく微笑む少女は俺が出るのを待っていたようだ。

 俺は冷静を装い、馬車を出る。


「ん、子竜か?」


「お、あんたら今出てきたのか。あぁ、どうやら子竜が道を塞いだみたいでな」


「ガハハッ! 子竜なら俺一人で十分だな!」


 馬車を出ると、馬車の前に体長三メートルほどの子供の竜【子竜】が居た。

 子竜は基本的に攻撃的ではないうえ、ある程度の実力者なら倒せる事の容易い、所謂下級モンスターだ。

 しかし、ほっておくと成長し本物の竜になってしまう為、極力見つけたら討伐するのが一般的な見解だ。

 だが、この子竜は様子がおかしい……。体から漏れ出ている魔力が子竜というにはあまりにも絶大過ぎる。


「おい、少し待っ」


「恨むなよッ!」


 男を制止させようとしたが間に合わなかった。

 男が肩に担いでいた斧を子竜に振り下ろした瞬間、男が後方の木まで吹っ飛ぶ。

 あまりに一瞬の事で見るのが精一杯だったが、子竜の尻尾が男の腹を叩いた。


「うびゃッ!?」


「なっ、親方!!」


 吹っ飛んだ男に別の男が駆け寄っていく、恐らく知り合いなのだろう。

 吹っ飛ばされた男は深手を負っているが生きてはいるようだ。

 しかし、こいつは本当に子竜なのか……。それにしてはあまりにも強すぎるぞ。


「お、おい、今のは何なんだよ!?」


「わ、わっかんねぇよ!」


 二人の男が焦り、あたふたとしている。

 おいおい、この状況で子竜から目を離すなんて自殺行為と言われも文句言えないぞ。


「【鑑定:ステータス】」


 子竜のステータスを測る。


【子竜(魔)】

・主に親子で行動をする子供の竜であり、強さは中堅冒険者なら楽に倒せる程度。

・付与スキル【魔】

・【魔】の能力により、全能力が数倍に上がっている。


 ステータスは同じ種族でない物に使うと大体の事しか分からない為、手に入った情報はこれだけだ。

 付与スキル……誰かによって付与されたスキルって事か?

 つまり、こいつの強さはこのスキル【魔】の影響な訳か……どんなスキルかは知らないが強化系のスキルである事は確かだろう。


「貴様らは下がっていろ」


「なっ、誰だよてめぇ」


「貴様らではあの子竜に勝てないだろう」


「お、俺らが子竜にも勝てないだと!? ふ、ふざけるな!」


 悔しい気持ちは分かるが、体は敗北を認めているようで小刻みに震えている。

 恐らく、この人達はある程度の実力者なんだろう。自分と相手の力量さを体で感じ取るのは、並大抵の戦闘経験では手に入らないからな。


「王都は強いモンスターが多いと聞くが……」


「え、この子、そんなに強いの?」


 白いローブの女性が聞いてきた。

 意外だな。この人はかなりの実力者だと思っていたんだが、敵の力量が分からないのか?

 いやそれとも、この子竜を自分より弱い者だと確信しているのか……。

 俺も、この子竜に負ける事はないと確信できるが、油断を出来る相手ではない。


「あぁ、貴様も下がっていろ……我が討伐する」


 いい機会だな……俺の実力がどれほどのものなのかを確かめよう。

 つい最近、夜空王ウルフというウルフの最上位のモンスターと戦ったが、その時は決着がつかず友情が芽生えてしまい毛を少し貰った。

 黒竜という希少な黒色の竜とも戦い勝った事はあるが、滲み出る魔力量的にこの子竜の方が強いだろう。

 この子竜を見ただけの力で判断するなら、夜空王ウルフ未満黒竜以上という感じだ。


「【身体強化】【魔力強化】【千里眼】」


 俺は無属性魔法を三つ発動する。

 まずは【身体強化】で基礎的な運動能力を上げ、【魔力強化】で魔力の純度を上げ魔法一つ一つの威力を向上させ、【千里眼】で相手の動きを一ミリも見逃さない状態にした。


「【風の羽衣】【疾風俊足】」


 次に風属性魔法を二つ発動する。

 【風の羽衣】で体の周りの風を自由に操れるようにし、【疾風俊足】で足を速くする。

 この二つは同時に使う事で、常軌を逸したスピードを出す事が出来る。


「行くぞ……っ!」


 準備の整った俺は一歩で間合いを詰め、子竜の懐に忍び込んだ。

 ここからは全てが俺のオリジナル魔法だ。


「【漆黒の業火】」


 中級魔法クラスの熱量を持つ黒い炎を手の平から発生させ、子竜に擦り付ける。

 これは中級魔法【業火】を黒くし威力を少し上げただけの技だから、オリジナルとは言いにくいかも知れないが、黒くしたのは俺なので俺のオリジナル魔法だ。


「フッ!」


 子竜は俺の擦り付けた炎をいとも容易く、まるで肩に乗った虫を退かすかのように振り払った。

 いやいや、そんな簡単に消されるかよ普通……。

 俺は一歩で後退し、最初の場所に戻る。


「今の黒い炎、普通に消されちゃったね」


「う、うるさい。これは小手試しでしかない……。次からが本命だ」


 普通の子竜なら【漆黒の業火】は十分過ぎるほどの魔法なんだ。

 流石、王都の近くのモンスターは格が違うという事か……こんな序盤で使ってしまうのは少し勿体ない気もするが、先を急いでいるんだ。


「アン……初仕事だぞ」


 俺は腰に差した聖剣(アン)を鞘から抜いた。

 全てのステータスが上がっているのが分かる……ん、なんだか視界も広くなっている?

 もしかして、【千里眼】の能力が上がったのか?


「かしこまりました」


 しかし、最初は気づかなかったがアンって軽いんだな……。

 まるで羽を持っているような錯覚に陥ってしまいそうだ。


「初仕事が子竜なのは申し訳ない」


「いえ、ステータスを確認させていただきました。相手にとって不足は無しです」


 俺は、聖剣を構え、子竜に突撃する。

 は、速い!? 自分で自分の速度に驚いてしまうほどの速度、【千里眼】が強化されているおかげで速過ぎる速度でも目が追いついてくれる。

 周りがスローモーション……いや、静止しているように見える。

 俺は、そのまま子竜の首元まで移動し、聖剣を振り下ろした____。

ぎ、ギリギリ今日中に出せました!


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