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ぼくのわたしの守りたい世界  作者: 猫田芳仁
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第6話 働け! 悪の幹部

「男爵殿」

「はい」

「男爵殿」

「はいはい。あ、お菓子取って」

「男爵殿」

「はーい。できればお茶も。冷蔵庫に飲みかけのあったでしょ」

「……男爵殿!」

「……なんだよう」


 ソファの上――もといテレビの前から動かない男爵は、不満たらたらで従者をねめつけた。アパートの一室だというのに、黒いスーツを着こんでいる彼女は大変ご立腹の様子だ。


「私たちはテレビを見るために来日したんじゃないんですよ-! 組織の世界征服の足掛かりとしてですねー!

「はいはいわかった、我らが父よ万歳。だがむやみに動けばいいってものじゃない。これは下調べだよ」

「またもっともらしいこと言って……こっちに来てから何日たっていますか? その間にテレビとパソコンと食べ物以外に触りました?」

「まあまあ月影くん。これを見たまえ」

「テレビですね」

「映像を見たまえ」

 

 いま映っているのはワイドショーらしかった。画面にの端には「実在した! 悪の秘密結社!!」という文字が出ており、銀髪の老人がインタビューに答えている。内容からして、本当に同業者らしい。


「このように、もはや秘密結社が秘密でなくなっている。周辺住民から疑われるような行動はよくない。充分な戦闘員を確保できない今、”正義の味方”に目をつけられたら厄介だろう」

「それはそうですが、上層部に報告するレポートはどうするおつもりですか?」

「それなら心配ない。今週分は用意してあるぞ。読んでみてくれたまえ」


 紙束を受け取った月影は、ぱらぱらと斜め読みした。

 思った以上に充実した内容だ。実際に事を起こしていないのであくまで「現状の報告」となっているが、正義の味方をはじめとする「敵対する可能性のある相手」について、かなり突っ込んだことまで書いてある。


「……充分だと思います。しかし、なぜ1歩も外に出ずにこのような情報を……」

「インターネット」


 月影は、がっくりと肩を落とした。


 ***


 すずめがこってり絞られている頃、春日は応接室にいた。一緒に部屋にいるのは、学院の事務長だ。

 ここは「聖ジャンヌ女学院」。

 表向きはお嬢様学校だが、その実態は素質のある少女たちを戦士として鍛え、超常の怪物と戦わせる機関である。「学校」らしい科目も教えはするが、それ以上に訓練の時間は、長い。


「ご覧になって、いかがでしたか」

「さすがに”改造人間”は強力ですね。ですが、協力はもう少し考えさせてください」

「私が”悪の秘密結社”出身だからですね」

「……はい」


 「生徒」達は基本的に、己を「平和を守る、正義の味方」と思って戦っており、それが精神的な支えでもある。未曽有の緊急事態であっても、「元」とはいえ悪の組織と公に手を組めば、生徒たちがゆらぐ危険があった。

 彼女たちは「教育」されてはいるが「洗脳」はされていない。それ故の強さと、もろさがある。


「今は大変な時期ですからね。いずれ、手を取り合うこともできるでしょう。……でも、お願いがあります」

「なんでしょうか」

「”獣”が現れた時は、私もお手伝いしていいですか? 正体がばれないように気は遣います」


 春日は隠密行動からの遠隔攻撃を得意としている。巨大な”獣”には効果が薄いが、今回のように分体相手ならば絶大な戦力となりうる。

 そして、隠れるのが得意ということは、味方に顔を見せずにフォローすることもできる。


「ありがたいですが……本当にいいのですか? あなたにはなんの見返りもないのに」

「これは、私を救ってくれた方の言葉なのですが――見返りがあるから、平和を守るのですか?」


 しばしの沈黙。

 春日と事務長はどちらからともなく手を伸ばし、固く握りあった。 

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