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ここにある捨てられた命。

作者: そらまる

高層ビル。踏切。川。

日常生活において、死ねる場所なんて幾つもある。

例えば高層ビル。屋上から飛び降りればおそらく即死だろう。それは学校の屋上でも同じだ。

例えば踏切。線路に飛び出して電車に轢いてもらえればおそらく即死だろう。それは道路に飛び出して車に轢いてもらうのと同じだ。でも車に轢いてもらうだけじゃ即死という保証はない。


僕の居場所なんてこの世界にどこにもなかった。

世界は僕をどこまでも独りにしようとする。


そんな世界から消えたい。


僕は死にたいんじゃない。ただこの世界から消えたいだけなんだ。


僕は世間的に言うと「学校」と言う場所に通っているらしい。

もちろんそこでも僕は周りから拒絶される。

靴は泥まみれだし自分の席は教室から出されているし机には「死ね」「消えろ」の文字が赤字で書かれている。僕はそれを消そうとはしない。

先生はと言うと僕のことを人間だと思っていない。

放課後になれば毎日体育倉庫に呼び出され体育の補習授業だと言い僕を殴ったり蹴ったりを繰り返す。

僕はそれに抵抗をしない。

いつか、僕が暴力を受けている時に勝手に死んでいないかなと期待していたからだ。


家に帰ると母が笑ってお帰りと僕を迎えてくれる。

すると母は僕の首を強く握って洗面台へと引きづる。

そこには水が溜められていて僕はそこに顔を押し付けられる。

息ができない。でもそれを苦しいとは思わない。

僕は何も抵抗しない。


それが終わると今度は夕食だ。

僕は服を脱がされ四つん這いになり、母が作ってくれた野菜炒めをフライパンのまま僕の背中の上に置く。

母が作ってくれた味噌汁は、僕の頭に向かってゆっくり落とす。床にこぼれた汁を僕は舐める。

味なんて感じない。


食べ終えると自分の部屋に戻る。

カッターで自分の手首を切る。ベルトで自分の首を絞める。ベランダに出て手すりの上に立つ。


世界が僕をどこまでも独りにしようとする。

僕は、僕を知っている人全員から存在を拒否されているような気がした。

僕が死ねば、この世の大勢の人が幸せになるんだ。

そう考えると、なんだか申し訳ない気持ちになる。






朝、いつものように学校へ向かう。

いつものように靴は泥まみれ。机は教室から出されている。机には「死ね」「消えろ」の文字が赤字で書かれている。放課後は体育倉庫で殴られ蹴られる。


いつもなら家へ帰るが、今日は帰らないことにしていた。


僕は独りで学校の屋上に立っていた。そこからは街全体が見渡せる。

あの家では夫婦が仲良く生活している。

あの家では高校生のカップルが性行為をしている。

あの家では家族みんなで食卓を囲んでいる。



僕は






僕はただ普通に生きたかっただけなんだ。





学校に行けば友達と話して、放課後にはサッカーとか野球をして遊んだりしたかっただけなのに。

母が作る手料理を机の上で食べたかっただけなのに。




なぜ僕だけ世界から見放されるんだろう。

なぜ僕だけ普通じゃないんだろう。

なぜ僕だけ、幸せに生きれないんだろう。






僕はそんなことを考えながら屋上の柵を乗り越える。





普通の人間が迎える未来はほとんどが幸せな未来だ。

でも僕には未来が存在しない。









未来を、自分で壊すから。










「世界のみなさん、ごめんなさい。」



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